銀阿

まどろみから浮上し、隣にいる阿伏兎を見て頬がゆるんだ。
健やかに寝ている相手の首元へと近づき、そっと痕を残した。


「だんな……つけるなと言ったはずだが?」
「ありゃ……起きてた?」

あっちゃーと誤魔化すように笑うと、ため息をついてゆっくりと阿伏兎は起き上がった。

「……ッ…」
「あ、やっぱり辛い?」
「いや、問題ない」

腰を庇いながら返答する阿伏兎。
自分もまだまだ若いのかと、抑え切れなかった性欲の暴走を反省した。


「はぁ……油断も隙もないもんだな、銀時の旦那?」
「いやぁ~……何かこう、ムラムラッときちゃって」

痕をつけた事をため息混じりに問われ正直に答えれば、軽く睨まれ、次に呆れたように笑われた。

「ほう、ムラムラとねぇ……前々から思ってたが、少し性欲の方向性を間違ってないか?」
「じゃあ、どうして俺に付き合うの?」
「……さぁ、何でだかねぇ」

はぐらかす様に流し、阿伏兎はそこら辺に脱ぎ散らかした服を手繰り寄せ、着込み始めた。
素っ気無い様子に、後ろから抱きしめた。


「旦那ァ、着替えにくいんだが?」
「帰したくないって言ったら、どうする?」
「……そんな事してみろ、我が上司様が山と書類を溜め込んで、そこらじゅうに平謝りに行く現状が出来上がる」

過労で殺したいのかと冗談ごとの様に言われ、理由付けが神威だと言う事に少なからず胸が波立った。

「ッ……旦那、いい加減にしてくれ」
「ん? いい加減にって何が?」

とぼけながら吸い付いた箇所を舐め上げれば、相手が身を震わせた。

「着替える邪魔…ッァ…」
「いやー……ほら、恋人の前で帰る理由が他の男の話じゃなぁ?」
「団長の話だったからか? 随分と嫉妬深い……ンッ…」

途中まで着込まれた服を再度脱がしながら、その白い肌に指を這わせた。



「男ってのはいつでも嫉妬深いもんだからね?」
「それはそれは、とんだ地雷を踏んだものだ……」



もう1泊しますか?
『……後で団長に出張延長を連絡するか』


end
(2010/06/18)
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