かむあぶ 2

「凄い人気だね、阿伏兎」

チョコレート以外は見当たらないプレゼントの山。
今年も、ものの見事にチョコレートばかりだ、と箱の一つを手に取りながら神威は笑った。


「これ全部、愛の告白込みの貢ぎ物だろ?」
「ギブアンドテイクな少し早めの義理チョコ達だろ」


クリスマスに誕生日が近い奴の気持ちがよく分かりやがる、と阿伏兎は首を振った。
バレンタインと誕生日が近いゆえの業か、と諦め調子で盛大にため息が出た。

「俺はそうは思わないけどね」

高級チョコが積まれた山を散策しながら、軽い口調で神威は言った。

「義理ならチロルチョコ一つとかでも十分だろ? なのにこれだけ高いのを送るなんて変だよ」
「仮にも副団長宛てのチョコだ、そこそこ値が張るものじゃなければ悪いとでも思ったんだろ」

こっちとしては、安上がりの方がホワイトデーの返しも楽になるんだがと阿伏兎は愚痴った。
相手の好みに合っているチョコ達を確認しながら、神威は小さく苦笑した。

「無自覚って怖いね」

相手に聞こえない程度の声で言葉を紡ぎ、チョコを物色し続ける神威。
食べる物を決めている訳でもない神威の行動に、阿伏兎は眉を寄せた。

「で? 団長様は人に贈られたチョコを物色して、何をするお積りで?」
「別に、どんなチョコがあるのか見てるだけだよ」
「四日後にはアンタの所にも山ほどのチョコが来るだろ」
「俺のは阿伏兎のと違って、一目で義理とわかるチョコとかばっかりだよ?」
「常日頃、地球産のがいいと言ってるからだろ」
「駄菓子系もいいけど、高級チョコ系がどんなのかもたまには知りたくなるだろ?」
「誰が何を送ってきたのかのリストを作るまで、悪戯に食ったりするなよ、このすっとこどっこい」

ホワイトデーの事を考え、くぎを刺す阿伏兎。
その言葉に物色の手を止め、神威はチョコの山から離れた。

「そのリスト、出来上がったら俺にも見せてね、阿伏兎」
「はぁ? アンタがこれらの送り主を見てどうするんで?」
「ただの興味本位で知りたいだけだよ」

笑いながら言う神威に対し、気まぐれな事で、と阿伏兎は苦笑した。



ホワイトデー用リスト
全員ブラックリスト行きは決定事項。


end
(2014/02/10)
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