かむあぶ 2

「歳の数だけ恵方巻きを食べるなんて、誰が考えたんだろうね」

年若い俺が一番損するじゃないか、と恵方巻きに齧り付きながら言う神威。
すでに歳の数以上食べている相手に呆れながら、阿伏兎は訂正を入れた。

「色々と間違ってるぞ、団長。歳の数だけ食べるのは豆の方だ」
「あの鬼役を殺すための豆を? 血まみれになった豆を食べるの?」
「いや、普通は機関銃のごとく投げないからね。壁にめり込むぐらいなんてやらないからね普通」
「バレンタインのポッキーゲームといい、節分の豆まきといい、地球の行事は随分と物騒だね、阿伏兎」
「人の話聞いてんのか、コンチクショー」

そんな毎年殺人事件が起きそうな行事があってたまるかとツッコミながら、阿伏兎はよく喋る神威を眺めた。

「そもそも、恵方巻きを食ってる間は喋らんのが基本だぞ?」
「あり? そうだったの? じゃあ、次の恵方巻きはそうするよ」

ケラケラと笑いながら次の恵方巻きへと手を伸ばす神威。
そもそも決まり事を守る姿勢すらないかと諦めた調子で阿伏兎はため息を吐いた。



歳の数以上
「アンタが喋らずに食べ切るには、何本必要だかわかりゃしないな、団長様」


end
(2014/02/03)
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