かむあぶ 2

「この星に降る雨は、随分と珍しいね、阿伏兎。かき氷みたいだ」


ギュムギュムと詰まった音をさせながら雪の上を歩く神威は、物珍しそうに周りを眺めた。
食べ物に例えるのはさすがの感性と言うか、何と言うかと思いながらも、阿伏兎は口を開いた。

「団長。あんた、雪を見た事がなかったのか?」
「雪? 雪って言うんだ、この雨」
「雨じゃなくて雪だ。天気の一種、一般常識として頭の片隅にでも入れとけ」
「ふーん。天気なんて、晴れか曇りか雨ぐらいだと思ってたのに」
「まぁ、雪なんてのは見れる星も時期も限られてるからな」
「で、これってシロップかければかき氷になるの?」
「なる訳ないだろ、このすっとこどっこい」
「何で? こんなに白くてフワフワで美味しそうなのに」
「白くて美味しそうに見えようが、空気中のゴミに水分が付いたやつだ、腹痛起こすぞ」
「へぇ、そうなんだ」

こんなに綺麗なのに、と手の平に雪を受け止めながら神威は残念がった。


「しかし、あんたもこのクソ寒い中、よく冷たい物を食う気になれるな」
「阿伏兎、夏と同じぐらいに冬でもアイスは売れるんだよ?」
「だからと言って、凍えながら食いたかねぇよ普通は」
「じゃあ、船に戻ったら食べる?」
「かき氷よりも、熱燗でも飲んで温まりたいですよ、こっちは」
「おでんとかも良いよね」
「はいはい、さっさと仕事終わらせて帰れたらな」

興味はすっかり天気から食べ物に変わっている神威に対し、阿伏兎は苦笑した。



初雪
天気より食べ物な思考。


end
(2013/12/19)
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