かむあぶ 2

「聖夜に虐殺とか、ロマンとかを完全に無視してるよね」
「海賊稼業にそんな甘っちょろい理屈は通用しないだろ、団長」


戦場が恋人だと泣きながら叫ぶ部下達。
いつも以上に殺気立つ部下達の前で先陣を切りながら、呑気に二人は会話をしていた。

「クリスマス料理、食べたかったなー」
「あんたはどうせ夜になればアホ……阿呆提督主催のパーティに行くんだろ?」
「そう言えば何か招待状来てたね。阿伏兎も行く?」
「生憎と、提督主催のパーティは団長格しか行けない決まりだ」
「副団長は招待しないとかケチだね。じゃあ俺も行かない事にしようかな」
「はぁ?」
「だって、阿伏兎が行かないパーティに出席しても意味ないし」
「タダ飯が食える場に、あんたが行かない?」

思わず神威の方を見る阿伏兎は、熱でもあるのかと訊き返しそうになった。

「普通の日ならアホ提督と対面式でのご飯でも我慢できるけど、今日はクリスマスだよ、阿伏兎?」
「何の関係があるんで?」
「特別な日は、恋人同士で一緒にいるのが一番の幸せだろ?」
「どこの雑誌の謳い文句の受け売りだ、団長」
「あれ、バレた?」

冷めきった視線を向ける阿伏兎に、ケラケラと笑いながら神威は流した。

「でも、アホ提督や勾狼団長とか、他の師団の団長に会うより、阿伏兎といたいのは本当だよ?」
「ほー、よくまぁそれだけ口説き文句がスラスラと出るもんで」
「仕事が終わったら、一緒にご飯食べに行こうよ。阿伏兎」
「デートの誘いのように言う中多分に悪いが、是が非でも提督主催のパーティには出て貰うからな、団長」
「クリスマスは恋人同士でご飯食べた後、朝までヤるのが一般常識だろ?」
「そんな爛れた一般常識があってたまるか」
「かたい事言うなよ」

パーティ出席をうやむやにする気満々の神威は、軽い口調で阿伏兎と会話をしてる中、ふと後ろを振り返った。

「団長? どうかしたか?」
「さっき後ろの方でチリチリした視線を感じたんだけど、何かあったのかな?」
「さぁな。――しかしまぁ、今日は一段と部下達は張り切るな?」

クリスマスだからか、と神威と同じように後ろを振り返った阿伏兎は呟いた。
もっとも、仕事が早く終わるのは、部下達の自由時間の為にも良い事ではあるかと思った。

「この分だと早く終わりそうだね、阿伏兎」
「そうだな、団長」
「で、話を戻すけど、阿伏兎。この後何処に食べに行く?」
「まだ言うか、このすっとこどっこい」


仕事をしつつ、また暇つぶしの会話を始める上司達。
その後続で、部下達は八つ当たりのように、敵に番傘を大盤振る舞いしていた。



リア充爆破しろ
部下一同の心の叫び。


end
(2013/12/14)
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