かむあぶ 2

「団長。あんた、珍しくもパソコンをつけていると思えば……何をやってるんだ、このすっとこどっこい」

明らかに仕事をしている画面ではない液晶。
神威の後ろに立った阿伏兎は、呆れた口調で訊いた。

「勾狼団長に教えて貰った地球で流行ってるゲーム。阿伏兎もやる?」

仕事をしていない事を悪びれもせず、笑いながら神威は振り返ってきた。
少しは悪びれろと思いながらも、地球で流行っているらしきゲームへと阿伏兎は視線を向けた。


「団長。これは何をするゲームで?」
「クッキーを焼くゲーム」


かなり中身のない極端な答えが返ってきた。
たしかに、画面にはクッキーの絵があるが、さすがに極端すぎないかと眉間にシワを寄せた。

「……それだけか?」
「それだけだよ?」
「クッキーを焼いて、その後どうするんだ?」
「いっぱいクッキーを焼いて貯めて、クッキーを焼くおばあさんと交換して、おばあさんにクッキーを焼かせながら、またクッキーを焼いて貯める」
「……で? その貯めたクッキーは、またばあさんと交換するのか?」
「後は、農場とか工場とか、鉱山とか宇宙船とか、錬金術研究所とかと交換して、またクッキーを焼く」
「まてまて! 何でクッキーを焼くだけのゲームに鉱山やら宇宙船やら錬金術が出る!?」
「阿伏兎ー、細かいこと気にしてたらゲームなんてできないよ? 最終的には反物質凝固器で宇宙にある反物質をクッキーにするんだから」
「どんな世界観だ!!」
「勾狼団長なんか死んだ目になりながらはまってたよ。今は秒間十億枚のクッキーを焼いてるんだって」
「…………」

意味が分からんの一言に尽きた。
何故ただクッキーを焼き続けるゲームにそこまではまるのか。
色々とツッコミたい気持ちを抑えてから、阿伏兎は口を開いた。


「団長、そのゲームは面白いか?」
「面白くはないと思うよ?」


じゃあ何でやってるんだとは、それ以上訊けなかった。



クッキーを焼こう
なぜ焼き続けるかは、誰にもわからない。


end
(2013/10/05)
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