かむあぶ 2

「誕生日っていい日だよね」

料理を頬張る神威から、のんきな声が響いた。
向かい側にいた阿伏兎は、微妙な顔で相手を見た。

「団長、今日はあんたの誕生日でしたかねぇ」
「阿伏兎のに決まってるだろ?」
「そうですかい」

いちおうの確認を取ってから、目の前の皿に盛られていた料理へと箸を伸ばした。
箸が届く前に目の前の料理は逃げた。
視線を上げると、ニコニコと笑いながら神威は料理を頬張っていた。

「やっぱりたまには豪華な料理って言うのもいいものだよね」
「……団長。今日はあんたの誕生日でしたかねぇ?」
「阿伏兎の誕生日だろ?」
「今さっき食べた料理は何処から取ったんだ」
「阿伏兎の皿から」
「…………」

平然と言う神威に、頭を抱えたくなった。
気を取り直して別の料理に箸を伸ばすと、また料理は逃げて行った。

「団長。料理が欲しいなら向こうへ行って持ってこい」
「面倒だろ? それにほら、バイキング形式だし」
「わざわざ人の皿から盗るな! このすっとこどっこい!」


バイキングの意味がそもそも違うだろと阿伏兎は叫んだ。



誕生日会
ケーキすら略奪形式。


end
(2013/02/10)
12/40ページ