かむあぶ 2

「阿伏兎、鈴虫って食べられるかな」

地球の宿に泊まった折、後は寝るだけと電気を消してからの事だった。
隣で寝ていたはずの神威からの言葉に、寝惚け眼を開けながら阿伏兎は返答した。

「……イナゴなら佃煮にできますがねぇ」
「安眠妨害で凄く煩いんだけど」

確かに煩いほどに鳴いてはいるが、これも一つの風情だろと目を閉じながら言いたくなった。

「耳栓でもしてろ」

くだらない事で起こすな、と布団を被りながら阿伏兎は呟いた。
数分後、今度は布団ごと揺らされて起こされた。

「……今度はなんだ、団長」
「阿伏兎、その耳栓がない場合ってどうすればいい?」
「自分の手でも当ててろ」

それぐらい普通に思いつけ、と返答しながら布団の中に潜り込んだ。

「阿伏兎、阿伏兎」
「…………なんだ、団長」
「自分の手を当てたら逆に煩くなった」
「……布団でも被れ」

語尾がきつくなりながら言い、布団に潜り込み丸まった。


「阿伏兎、地球の布団って何でなかなか温まらないんだろうね?」


数秒としない内にかけられた言葉に、プチッと何かが切れた。



五月蠅い
「こっちの布団に入れてやるからさっさと寝ろ! このバカ団長!!」


end
(2012/10/10)
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