かむあぶ 2

「団長、いい加減部下達のチョコを返せ」
「別にいいだろ? 部下の物は俺の物、俺の物は俺の物ってことで」
「いい訳あるか、どんなジャイアニズムだ」

チョコレートの山を背にケラケラと上機嫌に笑う神威。
その山の大半は本人宛に送られてはいた。
が、山の中には部下宛てに送られた分も混じっていた。

自分宛てに送られた分だけで充分だろと言う反論はすでに流された。
部下達に残された道は自分達のチョコが消えるさまをただ見ているだけしかなく。
周りにいた部下達は血の涙を流しながら、唯一団長に反論できる人物を見守った。


「だいたいさー、阿伏兎が俺にチョコをくれるなら元々こんな事しなかったよ?」
「嘘を吐くな、嘘を」
「本当だって、逆に俺宛てのチョコだって皆にあげてたから」

神威の言葉を聞きながら、頭痛がしやがるとため息を吐いて阿伏兎は額に手を当てた。

「当日だし、もうチョコなんて何処にもないだろうから、阿伏兎を貰えるならこの山全部渡すよ?」
「ハードルが上がってるぞ団長。たく、思う存分ジャイアニズムでも何でもし……」

ふと周り見渡すと、ストライキよろしく看板や横断幕を持った部下達がいた。

「……おい、お前ら何の真似だ?」


ヒクリと口元を引きつらせ、阿伏兎は周りを睨みつけた。
看板や横断幕に書かれていたのは、

『断固拒否、略奪バレンタイン』
『頑張れ副団長!』
『ギブミーチョコ!!』


「みんな素直だねー、満場一致で阿伏兎が俺に差し出される方に賛同してるよ」
「いやいや、アレは単なる応援だろ。誰一人としてそんなもん賛同してないだろ」
「諦めろよ、阿伏兎」

チョコの山から下りて阿伏兎との距離を縮める神威。
ジリジリと神威との間合いを計り、冷や汗を流しながら阿伏兎は後ろへと下がった。

「団長……今からチョコを買ってくるんで、それで勘弁できんか?」
「却下」
「地球産のチョコでも何でも買ってくるぞ?」
「却下。そんな物じゃ俺の渇きは癒されないよ、阿伏兎」



交渉決裂
「さっきまでチョコが欲しいだ何だと言ってただろ! このすっとこどっこい!!」
「気が変わったんだ、やっぱり阿伏兎が欲しい」


end
(2012/09/19)
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