かむあぶ
「丁」
「残念、半じゃ」
綺麗な笑みを向けて女性は可笑しそうに言った。
苦い顔で阿伏兎はサイコロを眺めた。
「第四師団団長様、そろそろ止めませんかねぇ」
「何故じゃ? 負けがこんできたからか」
「まぁ、それもありますが……」
時間が、と言いかけ阿伏兎は言葉を濁した。
孔雀扇を広げ、ゆるやかに扇ぐ女性は首を少し傾げた。
「負けたとしても特に負債はおっていなかろう? それとも、わしと博打をするのは嫌いか」
「滅相もございません」
「なら、次を振るぞ」
上機嫌に篭を振り始める女性。
切り上げを申し出てはのらくらとかわされ続け、阿伏兎はため息を吐きたくなった。
はたして、博打好きにとって何も賭けない博打は楽しいものなのだろうか。
「さて、丁か半か、どちらを選ぶ?」
「丁」
「残念、また半じゃ」
コロコロと笑う女性はサイコロを篭に入れようとして手を止めた。
「次は違う賭けをしてみるか?」
「は?」
「そうじゃな、内容はこの部屋にいつ神威がくるか」
目を見開く阿伏兎に対し、女性は目を細めた。
「約束でもしていたのであろう?」
「分かっていて引き止め続けていましたか」
「なに、そう怒るな。少しあの子供のお気に入りとやらを独占したかっただけじゃ」
「怒ってなどいませんよ。貴方様を前に、どうして怒りなど感じましょうか」
皮肉ともとれるほど丁寧な言葉に、同じように軽やかに女性は言葉を返した。
「そうか、それはよかった。有意義な時間だった、第七師団の副団長よ」
「貴方様の暇つぶしに貢献でき、とても光栄でしたよ。第四師団団長様」
暫くの間を置いて、ほぼ同時に二人は口を開いた。
「三分後」
「二十秒後」
「ほォ、そんな無謀な時間でよいのか?」
「いえいえ、これぐらいが丁度いいんですよ」
部屋の外で足音が止まったことを感じ、阿伏兎は苦笑するように続けた。
「ああ、修理代はもちませんよ」
「ふっ、致し方ないものよ」
一拍置いた後、室内には盛大な爆発音と共に扉が吹き飛んだ。
丁半博打
「やっぱり此処にいたんだ、阿伏兎」
end
(2011/04/30)
「残念、半じゃ」
綺麗な笑みを向けて女性は可笑しそうに言った。
苦い顔で阿伏兎はサイコロを眺めた。
「第四師団団長様、そろそろ止めませんかねぇ」
「何故じゃ? 負けがこんできたからか」
「まぁ、それもありますが……」
時間が、と言いかけ阿伏兎は言葉を濁した。
孔雀扇を広げ、ゆるやかに扇ぐ女性は首を少し傾げた。
「負けたとしても特に負債はおっていなかろう? それとも、わしと博打をするのは嫌いか」
「滅相もございません」
「なら、次を振るぞ」
上機嫌に篭を振り始める女性。
切り上げを申し出てはのらくらとかわされ続け、阿伏兎はため息を吐きたくなった。
はたして、博打好きにとって何も賭けない博打は楽しいものなのだろうか。
「さて、丁か半か、どちらを選ぶ?」
「丁」
「残念、また半じゃ」
コロコロと笑う女性はサイコロを篭に入れようとして手を止めた。
「次は違う賭けをしてみるか?」
「は?」
「そうじゃな、内容はこの部屋にいつ神威がくるか」
目を見開く阿伏兎に対し、女性は目を細めた。
「約束でもしていたのであろう?」
「分かっていて引き止め続けていましたか」
「なに、そう怒るな。少しあの子供のお気に入りとやらを独占したかっただけじゃ」
「怒ってなどいませんよ。貴方様を前に、どうして怒りなど感じましょうか」
皮肉ともとれるほど丁寧な言葉に、同じように軽やかに女性は言葉を返した。
「そうか、それはよかった。有意義な時間だった、第七師団の副団長よ」
「貴方様の暇つぶしに貢献でき、とても光栄でしたよ。第四師団団長様」
暫くの間を置いて、ほぼ同時に二人は口を開いた。
「三分後」
「二十秒後」
「ほォ、そんな無謀な時間でよいのか?」
「いえいえ、これぐらいが丁度いいんですよ」
部屋の外で足音が止まったことを感じ、阿伏兎は苦笑するように続けた。
「ああ、修理代はもちませんよ」
「ふっ、致し方ないものよ」
一拍置いた後、室内には盛大な爆発音と共に扉が吹き飛んだ。
丁半博打
「やっぱり此処にいたんだ、阿伏兎」
end
(2011/04/30)