かむあぶ

「兎って淋しいと死ぬんだって」
「……団長、脳みそをくだらん事に使うぐらいなら、是非ともそのかけら程度でも仕事の事を考えていただけますかねぇ?」
「仕事って、戦闘中に小難しいこと考えてたら死ぬよ?」
「まあ、違いありませんが」

無造作に番傘を振るい、ため息をついた。
条件反射のように向かってくる敵へと対応していると、また唐突に神威が声をかけてきた。

「阿伏兎を見てると、寂しくて死ぬって言うのも納得できる気がするんだけど」
「はあ?」
「だって、その証拠に夜兎が一杯いる第七師団にいるし」
「アホか、淋しくて死ぬのは兎の話であって、夜兎には当て嵌まらんだろ」

互いに相手の顔を見ずに会話を続ける。
低脳を絵に描いたように考え無しに突撃して来る敵。
まとめて殺してください、とでも言わんばかりの有相無相へと銃弾を放った。
何発か撃った後、銃弾が出なくなり舌打ちをした。

血の飛び散る中、日よけの包帯をなびかせ跳び回っていた神威は足を止めた。
呆れながら振り返り、今しがた振るった番傘を阿伏兎へと向けた。


「それでも、阿伏兎ってやっぱり同族好きだよね」


銃声が響き渡り、後には静寂が残った。




「どうしてあそこで反応が遅れるかな? 自殺志願者だって思われるよ」
「返す言葉もありませんねぇ」
「本当、阿伏兎はダメだね。夜兎族だと認識するとすぐに手加減して」
「はぁ、そうですか」

のんびりと歩きながら、神威は辛辣に言葉を並べる。
もっとも、否定が出来ない事ばかりなので適当に相槌を打つ。

「本当、阿伏兎って同族好き過ぎるね」
「団長のために夜兎族を残しておいた、とでも思え」
「ああ、後、銃弾の数ぐらい覚えておこうよ。俺の方に銃弾が残ってなかったらどうするつもりだったの?」
「それは、まあ、いつも通りの足中心に戦ったでしょうよ」
「あっそ。別に俺の事信用してくれるのは嬉しいけどね」
「はいはい、どうぞお好きなようにお取りください」


end
(2011/01/25)
字書きさんに書き方で10題
2.バトルorシリアス小説を書く
配布元:TOY
80/100ページ