かむあぶ

「阿伏兎ー、蕎麦追加して」
「毎年の事ながら、あんたは常識と言うものから外れてますねぇ……」

何杯目になることやら、と思いながら阿伏兎は神威の椀に蕎麦を入れた。
追加された蕎麦を水でも飲むかのように食べてから神威は阿伏兎に答えた。

「俺だけでもないだろ? 周りも同じだし」
「馬鹿げた大会も此処までくればたいしたもんだ」

死屍累々。もとい、はち切れんばかりに蕎麦を食べ、床に転がる第七師団員達。
辺りを見回し、机の上に積み重ねられた椀を眺め。
今年も同じ結果かと、阿伏兎は何とも言えない顔で考えた。

「阿伏兎も参加すればいいのに」
「団長の隣にいると何もいらないと思えてくるものでねぇ」
「俺の事で胸が一杯で?」
「どちらかと言うと、見るのも嫌になる程の蕎麦が原因だ、このすっとこどっこい」



年越し蕎麦
大会の勝者は毎年同じ。


end
(2010/12/31)
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