かむあぶ

白の中に残る紅を見つけ、ため息をついた。


「団長、あれほどつけるなと忠告したはずですが?」
「アリ? いつの間に?」
「いつの間に、じゃないだろこのすっとこどっこい。あんた以外誰がつけるんで?」
「細かいこと気にするなよ、どうせ直ぐに跡形もなくなるだろ」
「ちなみに、この場合誰が苦労をこうむると?」
「阿伏兎でしょ?」

いけしゃあしゃあとこの団長様は……
そう思いながら、またため息をついた。

「少しは考えて頂きたいものですねぇ。団長様?」
「そんな事言ったって、白いのが悪いんだよ」
「ほぉ、白いのが悪いと。そこまで分かっているなら是非とも次からは気をつけて欲しいものですね」

皮肉気に答えながら、阿伏兎は脱ぎ散らかされた服を拾い集めた。

「阿伏兎も早く着替えれば? 汚れて気持ち悪いだろ?」
「はいはい、そうさせて頂きますよ」

拾い集めた服を小脇に抱え、部屋の外へと足を向けた。



「じゃ、洗濯がんばってねー」

ひらひらと手を振り見送る神威を、ピキリと青筋を立てながら阿伏兎は睨んだ。

「団長、次からは黒服にしてください」
「阿伏兎、白いからこそ戦場では目立つんだよ」
「キリッとした顔で言っているところ、多分に悪いのですが。仮にも海賊王を目指すなら、海賊らしく血の目立たない赤か黒服でも着てろ」



せんたくのしかた
血の染みは、漂白剤だけで落ちるのか?


end
(2010/11/10)
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