かむあぶ
「あれ、神楽ちゃん何見てるの?」
ハタキを持って埃を落としていた新八は、食い入るようにテレビを見ている神楽に声をかけた。
「私、これやりたいアル」
「え?」
テレビに視線を移すと、芸人やゲストがレストランのメニューからトップ十を当てる、と言う番組をやっていた。
「……神楽ちゃん、これはさすがにムリだよ」
十時間以上たっても帰れず食べ続ける、ある意味地獄のような状況を見ながら新八は呟いた。
「やるアル、私ならこれぐらい一人でやれるネ」
「いや、神楽ちゃんならできると思うけど……今の万事屋の状況分かってる? お金ないんだよ?」
「とにかくやりたいアル!!」
駄々をこねるように言う神楽の目は、テレビに映し出される料理しか見ていなかった。
「おーい、帰ったぞー……って、お前ら何もめてんの?」
「あ、銀さん。神楽ちゃんに言ってくださいよ、この番組みたいなことやりたいって言って聞かないんですよ」
「ん~? あー、これねー俺もやってみてーなー、パフェとかデザート系全部頼みてーよ」
「銀ちゃん! これやるアル!!」
「だから、ムリだって神楽ちゃ…『テレビを見ているそこの貴方!!』 ん?」
テレビのから聞こえるハイテンションな声に、新八は言葉を切って視線をテレビへと向けた。
『今!! 江戸一のレストランO-EDO祝1周年を記念し! 賞金は誰の手に!? 某番組の企画と微妙に同じ形式でトップ十を当てろ! 【帰らせま十】の参加者を募集中!! 奮ってご応募ください!』
テレビからの声を聞き入っていた3人は、無言で互いに顔を見合わせた。
「やるぞ神楽! 新八!!」
「おうネ!」
「やりましょう!!」
一致団結した三人は、その後の諸注意を聞かず、即行でレストランO-EDOへ直行した。
「さすがだな……」
「スゴイアル……」
「……なんでも、約百組近く応募したそうですよ」
会場内に来ている挑戦者達を前に、銀時達は気合を入れた。
『O-EDOメニュー全百五十品より某番組の企画と微妙に同じ形式でトップ十を当てろ! 【帰らせま十】! いよいよ開催されます!!』
ハイテンションな司会者の声を聞き流しつつ、全員がメニューを食い入るように見ていた。
「いいか、まずご飯系を中心にだな、食いたいやつから食っていく。どーせトップ十なんてのは皆が食いたいからトップに入ってんだよ、一般人の感覚からすれば自分が食いたいので大抵は合うんだよ」
「はい……なんたってこっちには神楽ちゃんがいるんですから、多少頼みすぎても大丈夫です」
「まかせるネ!!」
『では、これより【帰らせま十】を開催します!!』
派手な花火と共に、挑戦者一同、一斉に注文を開始した。
「食べろ神楽!! 俺は次にデザート系を攻める!!」
「僕は人気のおかず系です!!」
皿が次々に積み重ねられ、トップ十入りしている料理が自分達にだけが確認できるモニターへと表示される。
しかし、さすがに百五十品もあるため、じれったいほどにトップ十入りしない。
『おおっと!? ここで早くもトップを七つも当てた組が出ました!! その頼んだ総数五十品!? 数打ち当たる作戦も此処まで来ると凄まじいものがあります!!』
「ご、五十品アルか!?」
「まだ食い始めて一時間だぞ! どんだけ食ってんだよ!!」
「ブラックホール並みですか……」
思わず料理を食べていた手を止め、司会の声に耳を傾けた。
『その細身な体の何処に入るのか!? ピンク髪のチャイナ服の青年! ほとんど一人で食べています!!』
司会者からのアナウンス、他の挑戦者達からのどよめき、それらを聞き流しながら銀時達は嫌な予感がした。
「細身でピンク髪?」
「しかも、チャイナ服の青年ネ」
「いやもー、一人しかいなくね?」
取り敢えず自分達の机に置かれていた料理を食べきってから、席を離れ、人の群がる所へと歩き出した。
人込みを掻き分け視界に入ってきたのは、山のように積まれた皿と食い散らかされた残骸。
それから、巨大パフェのバケツ並みのグラスに顔を突っ込み食べている神威がいた。
「やっぱり地球のご飯は美味しいね」
「団長、今食ってたのはデザートですが?」
「細かいなー阿伏兎は」
「「やっぱりお前かよ!!」」
「何やってるネ、バカ兄貴!」
事も無げに巨大パフェを空にした神威は、叫んだ銀時達を振り返った。
「ん? ああ、吉原の時の。何か用?」
ケラケラと笑いながら言う神威に、額に青筋を立てて神楽は詰め寄った。
「どういう事じゃゴラァアア! 賞金稼ぎもいい加減にするネ!! だいたい何で地球にいるアルか!!」
「んー……阿伏兎、面倒だから説明しといて」
「はいはい……」
部下に説明を丸投げした神威は、次の料理を手に取った。
ため息をついた阿伏兎は、神楽達へと向き直った。
「どう言うことネ!!」
「……うちの団長様の気まぐれのようなものだ」
「それで済ませられませんよ! こっちは生活が掛かってるんですよ!?」
「仕方ないだろ、こちとら上司の命令は絶対でね」
気まずげに話す阿伏兎は、事の始まりを思い出しながら続けた。
「いきなりテレビを見ながら、某番組みたいな事をやりたいだと言われた部下の身にもなって欲しかったと言いたいところだ」
何処かで同じような言葉を言った神楽は気まずく冷や汗をかいた。
「だいたい、そちらさんも嬢ちゃんを連れてきてる時点で条件は一緒のようなものだろ? 団長がとにかく食いたいと言って五十品も頼んではいるが、こっちはちゃんと事前に調べてきてるんだ。トップ十を一般人の勘で探す、なんて言う非効率的な事をやっている人物たちに、此方がトップ十を当てるのが早いだ何だと、とやかく言われる筋合いはない、と思うがねぇ?」
皮肉ではなく、ただ事実を言っている阿伏兎に、一般人の食べたいものが、と言っていた銀時は気まずくなった。
同じく、新八も何となく自分達の方が悪い気がして気まずくなった。
静かになった万事屋組に、阿伏兎は何度目かのため息をついた。
後ろをチラリと見ると、神威はトップ十の内九つまで当てていた。
神威が大盛りのチャーハンに取り掛かるのを横目で見てから、阿伏兎は口を開いた。
「さて、地球の蛮族、ならびに夜兎の嬢ちゃん。此処でクイズだ。いま団長が食べている物はトップ十に入っているかどうか」
ものの数分としない内に残り数口になったチャーハン、銀時達はスローモーションの様にゆっくりとソレを眺めた。
「正解は……」
「美味しかったね、賞金も貰えたし一石二鳥かな?」
札束を広げながら、神威は嬉しそうに言った。
「で? 団長様はそれで何をお買いになる積もりですかねぇ?」
呆れながら神威の隣を歩く阿伏兎は、周りの羨望と嫉妬のまなざしを軽く流しつつ質問した。
「んー、そうだね。もう少しO-EDOで食べようかな?」
「それはそれは、まだ食べたりませんでしたか。もっとも、それをするのは止めといた方がよろしいかと思いますが」
「えー、何で?」
「敗者は今まで食べた分の料金プラス、参加者の使った皿の皿洗いが待ってるようですからねぇ」
「ふーん、商売根性たくましいね」
帰らせま十
諸注意はよく聞きましょう。
end
(2010/09/01)
ハタキを持って埃を落としていた新八は、食い入るようにテレビを見ている神楽に声をかけた。
「私、これやりたいアル」
「え?」
テレビに視線を移すと、芸人やゲストがレストランのメニューからトップ十を当てる、と言う番組をやっていた。
「……神楽ちゃん、これはさすがにムリだよ」
十時間以上たっても帰れず食べ続ける、ある意味地獄のような状況を見ながら新八は呟いた。
「やるアル、私ならこれぐらい一人でやれるネ」
「いや、神楽ちゃんならできると思うけど……今の万事屋の状況分かってる? お金ないんだよ?」
「とにかくやりたいアル!!」
駄々をこねるように言う神楽の目は、テレビに映し出される料理しか見ていなかった。
「おーい、帰ったぞー……って、お前ら何もめてんの?」
「あ、銀さん。神楽ちゃんに言ってくださいよ、この番組みたいなことやりたいって言って聞かないんですよ」
「ん~? あー、これねー俺もやってみてーなー、パフェとかデザート系全部頼みてーよ」
「銀ちゃん! これやるアル!!」
「だから、ムリだって神楽ちゃ…『テレビを見ているそこの貴方!!』 ん?」
テレビのから聞こえるハイテンションな声に、新八は言葉を切って視線をテレビへと向けた。
『今!! 江戸一のレストランO-EDO祝1周年を記念し! 賞金は誰の手に!? 某番組の企画と微妙に同じ形式でトップ十を当てろ! 【帰らせま十】の参加者を募集中!! 奮ってご応募ください!』
テレビからの声を聞き入っていた3人は、無言で互いに顔を見合わせた。
「やるぞ神楽! 新八!!」
「おうネ!」
「やりましょう!!」
一致団結した三人は、その後の諸注意を聞かず、即行でレストランO-EDOへ直行した。
「さすがだな……」
「スゴイアル……」
「……なんでも、約百組近く応募したそうですよ」
会場内に来ている挑戦者達を前に、銀時達は気合を入れた。
『O-EDOメニュー全百五十品より某番組の企画と微妙に同じ形式でトップ十を当てろ! 【帰らせま十】! いよいよ開催されます!!』
ハイテンションな司会者の声を聞き流しつつ、全員がメニューを食い入るように見ていた。
「いいか、まずご飯系を中心にだな、食いたいやつから食っていく。どーせトップ十なんてのは皆が食いたいからトップに入ってんだよ、一般人の感覚からすれば自分が食いたいので大抵は合うんだよ」
「はい……なんたってこっちには神楽ちゃんがいるんですから、多少頼みすぎても大丈夫です」
「まかせるネ!!」
『では、これより【帰らせま十】を開催します!!』
派手な花火と共に、挑戦者一同、一斉に注文を開始した。
「食べろ神楽!! 俺は次にデザート系を攻める!!」
「僕は人気のおかず系です!!」
皿が次々に積み重ねられ、トップ十入りしている料理が自分達にだけが確認できるモニターへと表示される。
しかし、さすがに百五十品もあるため、じれったいほどにトップ十入りしない。
『おおっと!? ここで早くもトップを七つも当てた組が出ました!! その頼んだ総数五十品!? 数打ち当たる作戦も此処まで来ると凄まじいものがあります!!』
「ご、五十品アルか!?」
「まだ食い始めて一時間だぞ! どんだけ食ってんだよ!!」
「ブラックホール並みですか……」
思わず料理を食べていた手を止め、司会の声に耳を傾けた。
『その細身な体の何処に入るのか!? ピンク髪のチャイナ服の青年! ほとんど一人で食べています!!』
司会者からのアナウンス、他の挑戦者達からのどよめき、それらを聞き流しながら銀時達は嫌な予感がした。
「細身でピンク髪?」
「しかも、チャイナ服の青年ネ」
「いやもー、一人しかいなくね?」
取り敢えず自分達の机に置かれていた料理を食べきってから、席を離れ、人の群がる所へと歩き出した。
人込みを掻き分け視界に入ってきたのは、山のように積まれた皿と食い散らかされた残骸。
それから、巨大パフェのバケツ並みのグラスに顔を突っ込み食べている神威がいた。
「やっぱり地球のご飯は美味しいね」
「団長、今食ってたのはデザートですが?」
「細かいなー阿伏兎は」
「「やっぱりお前かよ!!」」
「何やってるネ、バカ兄貴!」
事も無げに巨大パフェを空にした神威は、叫んだ銀時達を振り返った。
「ん? ああ、吉原の時の。何か用?」
ケラケラと笑いながら言う神威に、額に青筋を立てて神楽は詰め寄った。
「どういう事じゃゴラァアア! 賞金稼ぎもいい加減にするネ!! だいたい何で地球にいるアルか!!」
「んー……阿伏兎、面倒だから説明しといて」
「はいはい……」
部下に説明を丸投げした神威は、次の料理を手に取った。
ため息をついた阿伏兎は、神楽達へと向き直った。
「どう言うことネ!!」
「……うちの団長様の気まぐれのようなものだ」
「それで済ませられませんよ! こっちは生活が掛かってるんですよ!?」
「仕方ないだろ、こちとら上司の命令は絶対でね」
気まずげに話す阿伏兎は、事の始まりを思い出しながら続けた。
「いきなりテレビを見ながら、某番組みたいな事をやりたいだと言われた部下の身にもなって欲しかったと言いたいところだ」
何処かで同じような言葉を言った神楽は気まずく冷や汗をかいた。
「だいたい、そちらさんも嬢ちゃんを連れてきてる時点で条件は一緒のようなものだろ? 団長がとにかく食いたいと言って五十品も頼んではいるが、こっちはちゃんと事前に調べてきてるんだ。トップ十を一般人の勘で探す、なんて言う非効率的な事をやっている人物たちに、此方がトップ十を当てるのが早いだ何だと、とやかく言われる筋合いはない、と思うがねぇ?」
皮肉ではなく、ただ事実を言っている阿伏兎に、一般人の食べたいものが、と言っていた銀時は気まずくなった。
同じく、新八も何となく自分達の方が悪い気がして気まずくなった。
静かになった万事屋組に、阿伏兎は何度目かのため息をついた。
後ろをチラリと見ると、神威はトップ十の内九つまで当てていた。
神威が大盛りのチャーハンに取り掛かるのを横目で見てから、阿伏兎は口を開いた。
「さて、地球の蛮族、ならびに夜兎の嬢ちゃん。此処でクイズだ。いま団長が食べている物はトップ十に入っているかどうか」
ものの数分としない内に残り数口になったチャーハン、銀時達はスローモーションの様にゆっくりとソレを眺めた。
「正解は……」
「美味しかったね、賞金も貰えたし一石二鳥かな?」
札束を広げながら、神威は嬉しそうに言った。
「で? 団長様はそれで何をお買いになる積もりですかねぇ?」
呆れながら神威の隣を歩く阿伏兎は、周りの羨望と嫉妬のまなざしを軽く流しつつ質問した。
「んー、そうだね。もう少しO-EDOで食べようかな?」
「それはそれは、まだ食べたりませんでしたか。もっとも、それをするのは止めといた方がよろしいかと思いますが」
「えー、何で?」
「敗者は今まで食べた分の料金プラス、参加者の使った皿の皿洗いが待ってるようですからねぇ」
「ふーん、商売根性たくましいね」
帰らせま十
諸注意はよく聞きましょう。
end
(2010/09/01)