幽霊女とキツネ男
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三井さんらが起こした体育館暴力事件の時俺は頭を殴られた。
その日から本来見えないはずの
体育館に居座っている女幽霊が見える様になった。
最初はステージの隅にいたのが見えて
いつステージに上がったんだ?
と思いじっと女を睨んだ。
練習が終わって俺らバスケ部が帰ろうとしているのに未だにステージの隅にいた。
「流川ぁー、体育館閉めるぞー」
出入口から鍵を見せながら木暮さんが声をかけてきたので
「アレほっといていいんすか?」
「アレ??どれのこと言ってんだ?ボールの片付け忘れもなさそうだが…」
「え、いや。あのステージの奴…」
「ステージ…?なんもないんだが…」
「え」
そこで初めて俺にしか見えてないのかも、と気づいた。
あいつが幽霊かもと思うと“じゃあ俺には関係ないし放っておこう”という気持ちに切り替わった。
木暮さんには「気のせいでしたすんません。」というと「視力が落ちてるなら早めにメガネ買えよ!」といらぬアドバイスをもらった。
だが次の日、幽霊女は俺が体育館に入るなり近づいて声をかけてきた。
「ねえ!あなた私の事見えてるんでしょ?!」
見えているが、ここで俺が返事をすると見えてない周りの部員から変な目で見られると思い。
彼女を避けて無言で通りすぎた。
「やっぱり見えてる!!今私のこと避けたでしょ!!」
言われて気づいた、幽霊なのだから見えないフリをするには素通りすべきだったのか。
「…めんどくせえから話しかけんな」
誰にも届かないほど小さな声でボソっと呟けば幽霊女は先ほどみたいな大声ではなく静かに話した。
「部活が終わったら少しだけお話しさせて欲しい…体育館に残ってほしいのよ…」
「嫌だ」
俺はボソリと返した
「じゃああなたの気持ちが変わるまで練習中ずっとあなたの邪魔し続けるから覚悟しておいてね…」
それは困る。
バスケの邪魔をされるのは非常に困るし不愉快極まりない。
仕方ないので俺は早々に手のひらを返した。
「練習が終わったら話しは聞いてやるから邪魔は絶対にするな」
幽霊女は笑って
「ありがとう!練習頑張ってね!」
そう言ってステージの隅に戻っていった。
邪魔もなく練習を無事に終えて
幽霊女との約束を果たす為に「俺最後に帰るので鍵閉めます」と嘘を言い先輩から鍵を預かった。
人が減るまでしばしボールを弾いた。
人気がなくなると幽霊女から話しかけてきた。
「ありがとう、約束守ってくれて」
「祟られたら困るからな、早く用件を話せ。俺は眠いから早く帰りたい。」
「あんた他の生徒とだいぶ違うわよね…色々…ずれてるっていうか…。まあいいわ、私ずぅっっと昔、入学式の日にしんじゃったの」
「ふーん」
「その反応ちょっと不服だわ…死因は集合写真の台が崩れて頭の打ちどころは悪いわ、崩れた際に雪崩れてきた生徒の重さのせいで容態は悪化、そのままポックリいっちゃったわけなの。」
まあ幽霊だし死に方も色々あるよなぁとボールを指の上で回しながら聞いていた。
「……で?」
「少しくらい同情しなさいよ…まあそんな訳で、高校生活を楽しめなかった私の未練を晴らすお手伝いをしてもらえない?いい加減ここに居続けるのも飽きちゃったんだけど、モヤモヤしたままだと成仏出来ないみたいなのよ。」
「いやだ」
「なんでよ!!生きてたら私のが年上なんだから譲歩してよ!!」
「バスケで忙しいから他をあたってくれ。」
「バスケで忙しいのは分かるわ、いつもみてたから。届いてないけど、応援だってしてたのよ?この前の喧嘩も酷かったわねー。」
ああ、そうか。
こいつはずっと見てたのか。
今までの練習も、喧嘩も。
「あなた達がバスケに真剣なのは知ってる、部活の邪魔はしないわよ?私の高校生活への手助けしてくれるならって条件だけど。」
「脅しじゃないか?」
「そうよ!正直なところ君に拒否権はないのよ流川くん!」
「…主に何をしたらいいんだ?」
「そうねー…とりあえず明日は一緒にお昼を食べましょう!一緒にお弁当食べるのはお友達の第一歩よ!」
「わかった、じゃあ昼にここに来る。」
「待ってるわね!遅くまで残って話を聞いてくれてありがとう!」
「あぁ、じゃあ帰る。眠い。」
「はーい!また明日ねー!」
ボールをカゴに戻して体育館の照明を落とした。
真っ暗な体育館から彼女の姿は見えなかったが、きっと向こうからは俺が見えているんだろう。
体育館の鍵を閉めて職員室に鍵を返却。
やること全部済ませて安心しきって上履きから外履きに履き替えた時に気づく。
「…幽霊女に名前聞くの忘れた…」
まあ、明日聞けばいいだろう。