花道軍団
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桜が咲き始めている春。
来週から私は高校生になる。
良い友人関係を作れるか、授業にはついていけるのか、少しの不安と。
“高校生”という義務教育を外れて、少し大人な響きの枠組みに入れるという嬉しさ。
心を弾ませながら残りの春休みを過ごしていた。
そんな明るい期待に満ちた私に、何か不満を抱いたのか、私が向かう先には負の感情でいっぱいの“不良様”が道を塞いできた。
「オイ、ここ通りたかったら通行料貰わねーとなぁ?金置いてけや。」
コンビニに行きたいだけなんです、退けてください、何て言葉は小心者の私からは口に出きません。
彼らは男3人、学ランを着ている。
校章見るところ同じ高校なんだな、怖いな。
でもお休みの日に制服着てるのを見るともしかしたら優しい人かな。
冷や汗をかきながらさっきまで浮かれていた脳内では箇条書きのように言葉を並べていた。
「おい聞いてんのか?」
「き、聞いてマス…」
「じゃあさっさと通行料、出せよ?」
「いやぁ……大金の持ち合わせはないので…今日はお家に帰ります…すみませんでしたぁー…」
「ハァ?!何ほざいてんだこのアマ」
正直に帰りたい気持ちを頑張って伝えたつもりが火に油を注いでしまったようだった。
進路を塞いでた彼らは次に帰路まで塞いでしまった。
お財布には千円ぽっちしか入っていないのに。
男3人に囲まれて困っていると、遠くからこちらを眺めているこれまた男の子集団の1人と目があった。
言葉よりも先に体が動いた。
私を囲った不良を無理矢理掻き分けて男の子集団に助けを求めた。大きな声で叫んだ。
「すみませーーん!!助けてくださーーい!!」
叫んだことでさらに不良は苛立ち、私の胸ぐらを掴み、視線を無理矢理合わせた。
「いい気になってんじゃねーぞクソがッ!!」
「カツアゲされてんの見たらわかんだろうが!誰も助けちゃくれねーよ」
怒ったり、嘲笑ったり、人生で初めての恐怖体験だ。
「おい、テメーらその手を離せ。」
「可愛い女の子1人に寄って集って、腐った根性してるじゃねーの?」
「花道!洋平!やっちまえやっちまえ!!」
男の子集団の彼らは私の助けに応えてくれた。
不良に対して怒ってる人、応援しているのか笑い声をあげる人。
先程まで胸ぐらを掴んでいた彼らとはだいぶ雰囲気が違う。
きっと悪い人達じゃない、はず。
「喧嘩上等!!」
その声を皮切りに、互いに拳を振り上げた。
恐ろしい速さで決着がついて私は驚いた。
勝ったのは助けてくれた男の子達。
「助かりました!本当に助かりました!!」
恐怖心から解放された私は涙ぐみながら感謝を伝えた。
赤髪の彼は喧嘩していた時とは打って変わって、柔らかい雰囲気で照れながら大した事はしていないと謙遜した。
一緒に喧嘩してくれたリーゼントの彼は怖かっただろうと私を慰めてくれた。
一緒にいた明るい男の子達はこの後みんなでお茶でもしようよ、冗談めいて声をかけてくれた。
「何かお礼をしたいのですが、私手持ちは少ないので大したお礼が出来ないのですか、何か出来る事はありませんか?」
彼らは目を合わせてお礼なんかいらないと言って、彼らは帰ろうとしていた。
この人達も同じ高校かもしれない。
瞬時にそう思った。
「あの!お名前聞いてもいいですか?!私は佐藤 秋と申します!」
「名前?俺は桜木花道!!」
「じゃあ俺らは桜木軍団!!とでも言っとこうか?」
名乗ると手を振りながら彼らは去っていった。
「同じ高校だといいなぁ…」
そして春休みが明けて入学式。
体育館での式の最中、背が高く赤い髪の男の子を見つけた。
同じ高校で嬉しくて笑みが溢れた。
放課後、もう一度感謝を伝えるべく彼らのもとを訪ねた。
「桜木君いますか?」
「ん?…おお!?君はこの前のカツアゲ少女じゃないか!」
「かつあげ…」
色々間違ってる気はしないが、桜木君は私の事を面白い覚え方をしていた。
「本当だ、この間はどーも」
「えっと、桜木軍団の…」
「俺は水戸、水戸洋平ってんだ。よろしくな。」
「私は佐藤 秋です、改めてよろしくお願いします!この前は本当に助かりました!…混乱していたので、つい助けを求めてしまって、申し訳なかったです。」
改めて自己紹介と、感謝と謝罪。
「気にするな、女の子に意地悪していたあいつらが悪いんだからな!この花道様にとってはあんな連中大したことではない!!」
「花道に助けを求めて正解だったよ佐藤ちゃんは」
謝罪に対して彼らはケラケラと笑ってくれた。
彼らにとってあの喧嘩は本当に些細な事だったらしい。
「私はちゃんとお礼をしたいので、出来ることがあれば何でも言ってくださいね!」
「佐藤ちゃんは律儀だねぇー、花道どうする?」
「うーーん…とりあえずは保留で。後々でっかく恩返しして貰おうじゃないか!」
「お前なぁ…」
「全然かまいませんので、これから仲良くなれたら嬉しいです!」
よろしくお願いします、と挨拶を交わして今日は帰ることにした。
知り合いからお友達になれた事が嬉しくてスキップをして帰路を辿った。
お友達になれた彼らがどれだけすごい人達か知るのは、少し後のお話。
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