お隣さんの花形さん
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日、時刻は長い授業を終えた放課後。
今日は昨日の雨のせいで蒸しててじっとり汗をかいてしまい居心地が悪い。
「カナちゃん、これから私バスケ部見に行こうと思ってるんだけど一緒に来る?」
「まじ?!行く!珍しいね秋がよその部活見に行くなんて、花形先輩みるの?」
「まあそんな所かなー、花形先輩が今日試合させるって昨日言ってたんだ、面白そうだから見に行こうと思って。」
昨日の言葉は本当だった様で朝練の時そのことを部員に伝えたことがファンに伝わりもう放課後には全学年の女子には情報が回っているんじゃないかという雰囲気だった。
そんな今の廊下では「体育館いこー!」ときゃっきゃしながら歩く女子がチラつく。
「私、花形先輩が部活してるの見たことなかったし、一回くらい見ておこうかなーって。」
「へー、いいんじゃない?私前に放課後ちらっと見たことあるけどスッゴイかっこいいよ、あれはファンがつくの共感できる。まあ好みじゃないんだけどねー、私文芸部の男の方が好き。」
「そんなにかっこいいの?ハードル上げすぎじゃない?
私は体育会系の方が好きだな、筋肉ってなんか頼りになるじゃん?」
「ムキムキの文系男子で良くないそれ?」
「うちの学校にそんなのいないでしょ…いつか文系でムキムキが現れたら連れてきてよ…。」
2人で目合わせて大笑いした後、大して意味もない会話をしながら体育館へ向かうとすでに人だかりと部員の試合をしてる声が聞こえる。
「人すご…蒸してて暑いね…」
「前行こうよ秋!絶対近くで見た方がかっこいいから!」
「この人混みかき分けて行くの?!まじかぁ…」
「ほら行くよ!」
カナちゃんに手を引かれながら「すみません、通ります」を繰り返しながら最前に無理やり出た。
頭を下げながら人をかき分けたので
顔をあげて視界が開けた時の飛び込んできた景色に私は驚いた。
全力でボールを追いかける部員たち。
体育館の照明が彼らを輝かせていた。
眩しい、でも美しかった。
声を出し合い連携をとる、その声は私の鼓膜を大きく揺らす。
「すご………」
思わず漏れた声もバッシュの鋭い音に掻き消えた。
透を見つけて目で追いかける。
私の前では出さない声量に心臓がどきどきした。
ボールと共に駆け出しシュートを決める彼に惹きつけられた。
透と目が合った。最前の私に気づいたようだった。
手を振られた、一瞬だったから反応出来なかったけど、後ろの女子たちが歓声をあげていた。
どきどきが大きくなって、試合が終わるまでずっと透をみつめていた。
試合が終わって透は私のところに駆け寄って「どうだった?面白かったか?」って聞いてきた。
「面白かったよ!!バスケってすごいね!!」
「秋がそう言うなら今日試合にして良かった。また来いよ?」
「うん!!」
周りのギャラリーのことも忘れ興奮のまま透と会話を終えた。
ギャラリーを気にして青ざめてるカナちゃんには悪いが興奮は冷めることなく私を突き動かした。
「カナちゃん私今日先帰るから!また明日!」
「え?!ちょっと!!」
来た時と同じ様にすみません、すみませんと人をかき分けて急いで学校を出た。
行先は通学路にある本屋さん。
蒸し暑さと、走って汗だくの自分をハンカチで拭いその日私は“明日からバスケットボールを始めよう!”という初心者向けの本を買った。
この日から私はバスケが大好きになった。
5/5ページ