お隣さんの花形さん
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夏真っ盛りの7月。
引越してから早3ヶ月。
中学生活にも慣れてきた、マイナス思考だった春が嘘だったように楽しく過ごしている。
そんな夏のある日、帰宅した私は玄関前の階段に腰をかけて困り果てていた。
家の鍵を忘れてしまったのだ。
父は先週末から出張、母の仕事も今日は遅いと言っていた。
「どーーーしよ…」
母の職場まで行って鍵をもらうのが妥当、でも移動時間を考えると母の帰りを待った場合とさほど変わらない。
母が帰るのは20時くらい、今は補習終わりの帰宅で17時。
仕方ないので宿題をしながら待つことにした。
時たまに家の前を通る人とは、恥ずかしいので目を合わせず宿題と向き合う。
「(玄関先でノート開いてるの恥ずかしいけど、自分の管理能力が低いのが悪い…)」
宿題も終えて、腕時計で時間を見る。
18時。
体感よりも全然時間が進んでない。
夏の蒸し暑さを感じながら過ごしていると、目の前にお隣の花形さん、息子さんが声をかけていた。
「佐藤さん、家入らないの?」
「あー…鍵を忘れてしまって、入れないんです。気にしないでください、お母さんももう少しで帰ってくるので。」
少し嘘をついた。
恥ずかしいのと、初めて会話することに緊張して。
「…うちで待ちますか?外暑いだろうし」
「いえいえ、お気遣いありがとうございます。大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません。」
「そっか…」
帰っていく花形さんちの彼にお辞儀をして見送った。
すると5分もしないでまた花形さんが戻ってきた。
花形さんのお母様を引き連れて。
「秋ちゃん!だったわよね?ダメよ女の子が遅くに外にいるなんて!それに熱中症になったらどうするの!気にしないでうちにいらっしゃい!」
「え?!あ、いや、でも本当、大丈夫なんで…」
「遠慮しないで!もうすぐ晩御飯だからよかったらうちで食べていって!」
「あぁ…えっと…」
「…佐藤さん、遠慮しなくていいよ、母さんも気遣い以上に来てくれたら嬉しいんだって」
「そ!だから行きましょう?」
正直ご近所さんと交流あるのはお母さんだけだし、おじゃまするなんて申し訳なさと緊張で精神的にキャパオーバーだ。
けれどお母様に圧倒されて、私は「ありがとうございます、お邪魔させてください」とお辞儀をした。
「おじゃまします」
「どうぞー!今ご飯支度すませるから、ソファで待っててね」
「ありがとうございます」
失礼がないようにしなければ、緊張と少しの不安で落ち着かない、そわそわしてしまう。
「やっぱり心配で母さんに相談したんだ。迷惑かけてごめんな、気にせず過ごしてよ」
「いえっ、ご迷惑かけたのはこちらでして、本当すみません…」
「佐藤さんって、立原中だよね俺もなんだ」
「そうなんですね、じゃあどこかで会ってるかもしれませんね?」
「俺はわりと佐藤さん見かけてるよ?」
「え?!嘘っ!!気づかなくてすみません!!」
緊張状態が高まったこんな状況も相まって思わず声を荒げてしまった、1個目の失礼だ。
「謝ることじゃないよ、移動教室で見かけたってだけだから。ちゃんと話すの今日が初めてだし、急に話しかけても変だろ?」
「いや、そんな、そうかも…?…次は、私が気付けるように、その時はちゃんと花形さんに声かけますね」
「花形さんって、うち全員花形だよ?俺、透。気にせず名前で呼んで」
そこで初めてちゃんと自己紹介をしてないことに気づいた。2個目の失礼。
「ありがとうございます!自己紹介が遅れてすみません。佐藤 秋です。私も秋で構いません。よろしくお願いします。」
透は少し微笑んで「秋、こちらこそよろしく」と声をかけてくれた。
「お待たせー!さあ食べましょ!」
お母様の呼びかけで食卓へと移動し、美味しいご飯をご馳走になった。
食事の後はお母様とお話しをしていた。
男の子はもういるから女の子も育ててみたい、学校は楽しい?、部活は?、お休みの日はどうしてる?、お洋服の趣味は?
たくさんの質問攻めにあってびっくりしたけど、とても楽しかった。
お母さんが迎えに来るのも思ったより早かった。
「今度は休日にでもゆっくりしに来てね!」
「はい、是非よろしくお願いします。」
おやすみなさいと挨拶をし、お母様の後ろから控えめに手を振る透に、私も手を振り返して、帰宅した。
お隣の花形さんはとても良い人たちで、もっと仲良く出来たらいいなと思えた。
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中学校名は捏造です。公式設定ではありません。