一歩踏み出す誕生日
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今日一日の報告書をまとめて青雉大将の元へ行く。
朝の出来事は胸にしまって、何もなかったかのように大好きなクザンさんと接するのは少し寂しい。
でも自分で決めたことだから、そんな弱音吐くのはお門違いなんだけど。
「失礼いたします。青雉大将お疲れ様です、本日の報告書をお持ち致しました。」
「おー、お疲れさん。」
仕事部屋のソファーにはプレゼントであろう品達がいくつか置いてあって、どれだけ彼が好かれているのか実感する。
女の子たちへの対応で仕事進んでないだろうし早々に退散して集中させてあげなければ。
「書類はこちらに置きますね、それでは失礼いたします。」
「ちょっと待って!あっ、あのさぁ…あと少しで仕事終わんだけど、この後ちょっと買い物付き合ってくんない?」
「え…、え?!私ですか?!なんで?!」
驚きのあまり敬語を忘れてしまったが、それどころではない。
好きな人からのお誘いを断る理由はないが何故自分なのかくらいは知っておきたい。
けれどクザンさんの言葉を聞いて、ひどく後悔した。
「いやぁ、ほら、なんだ…秋ちゃんは流行りに詳しいみたいだから女の子へのプレゼント選びを手伝って欲しくて…」
たしかに私が今までプレゼントしてきた物は女性が好むものばかりだ。
彼自身に必要がない物を考えた結果だったから。
気持ちの押し付けをしたかっただけだから。
クザンさんは近いうち女性に何かプレゼントするのか。
どんな意味を込めて?プロポーズとか…?
自分が例年やってきた作戦がこんな形で自分を傷つける結果になるとは思わなかった。
「…な、るほど。わかりました、私がお役に立てるなら光栄です!是非ご一緒させてください。」
「ありがとう、じゃあ俺の仕事が終わったらすぐ行くから先に街行ってて…絶対待っててよ!」
必死なクザンさんを見て、あんまり見ない表情だなと、にやけそうになる。
傷ついた直後だけど、想い人の為に仕事を頑張るクザンさんもかっこいい。
クザンさんの幸せに力添えできるなら、やっぱり私は振り向いてもらわずとも構わないのかもしれない。
きっと今ちくりと痛むこの気持ちも、幸せなクザンさんを見れば治るだろうから、応援したい。
「大将、残りの仕事お手伝いさせてください。二人の方が早いでしょうから、優先度の高い書類をまとめますね。」
「え、あ、ありがとう…いつも以上に仕事進まなくってさぁ…」
「部屋を見る限り予測できます、大丈夫ですよ!お店が閉まる時間までにはきっと終わります!」
こんなに必死に書類に向き合う青雉大将は珍しい、まあ仕事を溜め込んでしまう彼が悪いのだが。
その後、張り切って手伝える作業をひたすらこなした。
クザンさんの“あと少しで終わる”はあてにならなかったが、手伝った甲斐あって1時間ほどで書類の山は綺麗になった。
私は急いで更衣室に行ってTシャツとパンツスタイルという朝着ていた通勤するだけの服装に着替える。
朝プレゼント渡した時は隊服だったのもあって私服で会うというのは少し照れくさい。
わざわざ家行ってオシャレするよりこの格好の方が恋人だとか変な噂がたたずに済むだろうけど
噂されてもいいじゃないか、と下心がうずく。
そんなのいけないと制止する私。
こんな下心と制止を繰り返す自問自答は5年間でどれだけ繰り返してきたかわからない。
私は私が思っている以上に欲張りなんだろう。
「青雉大将、お待たせしました!お役立て出来るよう尽力いたします!」
「待って待って、仕事じゃないんだから…敬礼も敬語も無し!街で青雉大将なんて敬礼付きで絶対呼ばないでよ?」
「え、では何て呼べば…」
「…上司の名前くらい、知ってるでしょ?」
「呼んでも、いいんですか…私が…」
「呼んでよ、いくらでも。」
胸の内でしか呼んだ事のない名前を口にする、嬉しくて、恥ずかしさもあって、顔に熱が集まる。
「クザン…さん…よ、よろしくお願いします…!」
「ん、こちらこそアドバイスよろしく頼むよ、秋ちゃん」
こんなに幸せでいいんだろうか、今日は人生で幸せな日一位で決定だ。