一歩踏み出す誕生日
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執務室でさっきもらった包みを開けお菓子を眺めていた。
シンプルなのに洗練された美しさのあるお菓子たちがそこには並んでいた。
「おやぁ〜?クザン今年も早速お菓子貰ったのかい?」
「げっ。」
ここ数年、俺の誕生日の朝に俺のところに来るとお菓子があるのをしっかり把握してるボルサリーノは今年もしっかり俺のとこに来やがった。
机の上のお菓子を覗き込みボルサリーノはにやついてた。
「ほぉ〜!クザン知ってるかぁい?ここのお店高いんだよぉ〜。わっしよりもがめつい女たちに見つかったらあっという間に無くなるから気をつけた方がいいねぇ。」
そう言いながら秋ちゃんから貰ったお菓子に手を伸ばす。
「今年“も”お菓子だったよ…これって絶対わざとだよな、形残らないもの選ぶの…」
「今年で5年目だっけ?わざとだろうねぇ、気を使われるような関係を去年越えられなかったんだから仕方ないねぇ〜。」
「はぁー…そう言わんでくださいよ…こっちだって話題とかタイミングとか、色々考えて過ごしてたんですよ?…なんも出来ませんでしたけど…」
1年目から彼女の好意に気づいていた。
女性経験は豊富な方だからすぐに気づいた。
この子俺の事好きなんだ、って。
不思議だったのはそれから向こうからなんのアプローチもない事。
食事の誘いもない、それどころか仕事以外で会話したことがない。
けれど彼女は誕生日の朝、俺が執務室に向かう道中で待ってくれてる。
俺の誕生日を祝うために。
なんでだろうと思いながら目で追う回数が増えて気づけば俺が彼女に落ちてしまった。
「さっさと告白しちゃいなさいよ、他に取られちゃっても知らないよぉ?」
「好意があるのに距離を置くような女口説いたこと無いから困ってるんでしょうが…」
「肉食な女の子としか経験がないと自分からアプローチの仕方がわからなくなるんだねぇー!しっかしこれ美味しいねー!」
ケタケタと笑うボルサリーノを見て
なんで俺は朝っぱらから職場のおっさんと恋バナをしているんだろうか…と我にかえる。
それに俺より先にお菓子食べるんじゃないよ。
気分を切り替えよう、俺の為に選んでくれたには違いないんだ。俺もお菓子食べよう。
「…うっっま!なにこれめっちゃ美味しい…」
「これ、この前部下の女海兵が話してるの聞いたんだけど人気すぎて予約2ヶ月待ちらしいよぉ〜、クザンは愛されてるねぇー!」
今年はフィナンシェがメインのアソートセット、これコーヒーと絶対合うだろうな。
俺がコーヒー好きなの知ってて選んでくれてるのだろうか…けど2ヶ月も前から準備してくれてるというのは、本当に彼女から好かれている証拠だろう。
でも俺は“好かれている”それしか知らない。
「でも毎年女子人気の高いお菓子なんだろ、俺食べ物の好みこんな可愛らしくは無いと思うんだけどな…?」
そうこぼすとボルサリーノさんは豆鉄砲食らったような顔をした。
「客観視できないのか本気の恋愛に鈍いのか、どっちか知らんけどこれもわざとだよぉ」
「えっ」
「君が要らなければ君に寄ってくる女の子たちが綺麗に食べてくれるからねぇ〜、絶対君の手元には残りようがないんだよ彼女のプレゼントは。」
そこまで考えてなかった、去年は俺が仕事サボってお菓子食べてるところを女海兵に見つかって、残りを食べられちゃったのを思い出した。
ただの偶然の出来事にしか思っていなかった。
「…家でゆっくり食べたいから隠しとこ、マジで女に見つかったら俺の分なくなっちまう…ボルサリーノさん黙っといてくださいよ…?」
「それは振りかぁーい?」
「違いますよ…」
ヘラヘラしながらごちそうさまを言いボルサリーノは帰って行った。
俺のことを好きなのにアタックしないのは何故か、そんな彼女に俺はどうアタックしていいものか。
ここ数年の誕生日は、この答えの出せない悩みでいっぱいになる。
いい加減覚悟を決めなきゃいけない。