トリップ先は海賊船
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私のお気に入りの茶葉で紅茶を準備するサンジを眺めながら
さっき口にしていた私に対して“魅力的”という言葉を脳内で繰り返し思い出す。
もしかしたらサンジの中の私は、私が思うよりほんの少しくらいいい女なのかもしれない?
もしかしたらサンジも私のことが?
思わず声にフフっと漏れてしまった。
その声はしっかりサンジに届いてしまったようだ。
「どうかした?」
「えっと!えーとぉー…」
どうにか誤魔化さなきゃと話題を探した。
「あ!さ、サンジの淹れる紅茶が世界一美味しいなって最近気づいたの!だから嬉しくて!」
そういうとサンジは豆鉄砲くらったように口を開けたまま私に視線を合わせていた。
「世界一…?」
「そう!世界一美味しい!」
私の言葉を聞いてサンジは目を輝かせた。
「その世界一の称号絶対他のやつに譲らねえぞ!!これからもおれが淹れた紅茶でティータイムを過ごしてくれ…レディ…!!」
「ぉ…あわ、なんかそれって…!プロポーズ?!」
「え?!なんで?!」
「え?!違うの?!…あっ!こっちの文化じゃない!!」
前いた世界では“一生きみの作った味噌汁が飲みたい”というプロポーズの形があるんだと話をした。
浮かれた脳みそだったから気づけなかったが
よく考えれば全然その文のテンプレートに当てはまっていないという事に
サンジに説明しながら気づいてしまった。
「そうか、そんな気持ちの伝え方があるんだな、秋ちゃんの世界には。」
「そうだね、でも似てたってだけで突拍子もないこと言ってごめんねサンジ。」
「いや、いいよ。秋ちゃんの世界に触れられておれは嬉しいよ。」
話しを聞き終えて手際よく紅茶を淹れてくれたサンジは
いつもよりちょっと凛々しい表情で私の前に紅茶を置いた。
「秋ちゃんの口から“一生”の言葉が出てくるまで、おれは君から貰った世界一の称号を守ってみせるよ。」
ごゆっくり
そう言葉を残してサンジはダイニングを後にしてしまった。
私の顔は真っ赤になったままで
私が“一生”って言ったら彼はそれに応えてくれるということなんだろうか。
冷めないうちにと思い口にした熱い紅茶は、私の体温をさらに上げる。
それは、彼が私と同じ気持ちだと信じていいんだろうか。
私から伝えてもいいんだろうか。
違う世界で、こことは違う文化で育った私が
この世界で生きている彼に気持ちを伝えてもいいんだろうか。
答えの見つからない自問自答をしてて気持ちも落ち着かず、紅茶一杯を飲むのにだいぶ時間を費やしていた。
サンジが出て行ってから初めてダイニングに来たのはルフィとゾロだった。
「秋ー、サンジどこだ?おれ腹減ったんだけどよぉ。」
「おれも腹減った。」
「え、あぁ。…あのさぁルフィ。」
「ん?」
「私がさ、サンジにプロポーズしたら怒る?」
「別に?いいんじゃねーの?」
「ばっ…!ルフィお前意味わかってんのか?!」
「それくらいおれにもわかるぞゾロ!言うのは秋の勝手だし、そのあとどうしたいかはサンジが決めればいいだけだろ?」
「お前…そのあとどうなろうと知らねえってのは無責任って言うんだよバカ。」
「おう!おれは知らねえ!秋、何でもいいから腹減ったからサンジ呼んで来てくれよー、プロポーズしてきてもいいからさぁー。」
ゾロは気まずそうな顔をしてたけど、ルフィの“いいよ”って言葉聞いたら
気が抜けて早くサンジの顔がみたくなっちゃって。
「うん…!ルフィ待ってて!サンジ呼んでくるから!二人とも聞いてくれてありがとう!」
ダイニングを出て、大きなサニー号の中をバタバタと走り回った。
甲板にはいなくて
見張り台に登って見渡してもいなかったから
下に降りて食糧庫に向かうとタバコの匂いがして
この先に彼がいることを知らされる。
心臓はバクバクと大きく音を立て始める。
樽に腰をかけるサンジに声をかけた。
「さ、サンジ!」
「…なんだい?秋ちゃん。」
「私、世界一美味しいサンジの紅茶を毎日…一生飲みたいです…!お願いします!」
お願いしますと手を差し出すその手は震えてる
こわばる私の顔とは反対に、サンジは安心して顔を綻ばせた。
「あんなこと言って逃げ出した腰抜けのおれを、迎えに来てくれてありがとう…秋が望むならおれは君のそばで仰せのままに…」
差し出した手を彼は両手で包んでくれた。
彼はいつもそうだ。
出会った日にも彼は私の手を握ってくれた。
優しいさで包んでくれる。
震えがおさまった私の手の甲に
一つキスをおとして私と視線を合わせる。
「一生幸せにしてみせるから。」
気づけば目から涙が溢れてたけれど、緊張が解けて嬉しい気持ちが溢れてしまった。
これからの不安もあるけれど、今は嬉しい気持ちだけを彼と分かちあいたい。
「はい…よろしくお願いします…!」