トリップ先は海賊船
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最近電車に飛び込みする人が多いってニュースでやってた。
私は専門学校の授業とバイトの両立が少ししんどいなって程度だからそこまで追い詰める人がいるんだ、と他人事だった。
けれど事実は違っていた。
私は明らかに背中を押されて電車の前に出た。
殺人事件だったのかぁ、と思って悲しくなった。
他の人も突然訪れた終わりにきっと戸惑っただろう、そう思った。
嫌なやつだ私は。
ついさっきまで対岸の火事のごとく上の空だったくせに。
自分に不幸が降りかかって初めて気づきを得るんだ。
来世では真面目にニュースと向き合うのでもう一度生きるチャンスをくださいと祈った。
それが私の覚えている最後の記憶。
今、目の前に広がってるのは電車なんかなくて、ビルもなければ人もいない。
私は広い海の上に小舟で浮かんでいた。
「私の覚えているとこから…来世のスタート、早くない…?」
私都会育ちだから海なんて旅行でしか来たことないのであまり知識がない。
ましてやこんな海のど真ん中で、来世を始められても困惑してしまう…
神様がいるならあまりにも扱いがぞんざいじゃないだろうか、死んだばかりなのに…。
太陽を遮るものがなくて暑い、小舟の中には何もない。
私はもう一度死ぬんだろうか?
それともここは来世じゃなく地獄なのかもしれない。
こんなに景色は綺麗なのに。
状況は残酷だ。
「誰かぁー!!助けてください!!誰かあああ!!」
声を上げるしかなかった、この広い海に人がいるかはわからない。
私が干からびるのが先か、助けが来るのが先か。
不毛な戦いと思いながら叫び続けた。
叫んで叫んで、喉が渇くが海水は飲んじゃダメだと昔テレビで見た。
日が傾き、夜が来た。
「誰かぁ…誰かきてぇ…お願い、します…」
喉は痛いし、日に焼けた肌もヒリヒリする。
まだ地獄が始まって半日くらいだと思う、これがいつまで続くか考えると恐怖感に襲われた。
孤独感がそれを加速させた。
突然こんな苦痛を与えられるほど私の前世は悪業ばかりだったのだろうか。
舟の中でうずくまり、視界に入る自分の服装を見て脳裏に前世がよぎる。
今日は新しいロングスカート履いて
ちょっといいブランドのブラウス着て
学校の作業が終わったら人気のカフェで女子会の予定だったのを思い出した。
私の人生、充分楽しかったなぁ。
この地獄が終わったら、また友達とカフェに行けるだろうか。
「はぁ…誰か助けてよ…助からないならさぁ…早く終わってよ……」
「おーい!誰かいるのかー?」
上の方から声が聞こえて飛び起きた
うずくまって泣いてたから波の音も気にしてなければ船が目につくこともなかった。
人の喧騒に慣れていた私にはこの孤独は随分応えた。
人に会えたことが嬉しくて泣きながら叫んだ。
「い!います!!!助けてください!!…お願いします!!ぐずっ…助けてぇー!!!」
「おっし!今引き上げるから待ってろ!」
「おいルフィちょっとまて!今チョッパーがロープ下ろすから!!」
会話が落ち着く前に長い腕が私の腕を突然掴んで来た。
直後すごい速度で私は宙に浮いた。
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