エネル
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これはビルカが滅びる前のお話。
今日、空島のビルカに落雷が一つ落ちた。
落雷は大きく、一瞬で我が家を焼き払った。
家の中には家族が、私は夕食の魚をとりに行っていたので被害もなく無事で済んだ。
この日を境に落雷が頻発する様になり、その元凶の男が隣の街に住んでいると知り私は自分の気持ちをぶつける先をその男に決め、隣町を目指した。
街に着いてから少し聞き込みをするとすぐにその男の情報が手に入った。
エネルという男らしい。
聞き込みの通りに彼の家を目指した、近づくにつれて焼け焦げた家屋が増えていく。
落雷の彼に近づいてる証拠だと確信して緊張しながらも足をすすめた。
彼の家の前には焼け焦げた人が何人も倒れていた。息があるのかはわからない、何故焼かれたのか私にはわからなかった。
その倒れた人を眺めていると視界に影ができた、視線を上げるとそこには高身長の男が立っていた。
「次は女か……もう復讐やら仇討ちには飽き飽きしている、まったく何人目だって言うんだ…」
目の前に立つ彼の表情は逆光で見えにくかったけど、声を聞くにこれは怒っているのかもしれないと思い私は早口で要件を口にした。
「あ、あの!!突然の来訪すみません!!私は秋と申します!!今日はお礼を言いに来ました!!」
「ん…?お礼だって?」
「はい!…ここ最近の落雷は貴方の力だと聞きました、その落雷で我が家は家族もろとも焼けました。」
「ほぉ…」
「でも家族なんて名ばかりの……血のつながりがないからと…あの人達は、私にとっては不幸の元凶、悪の権現でした……」
それがあの日、あの雷のおかげで私は自由を手に入れた。
焼ける家を見て嬉しかった。
殴られることもないし、罵詈雑言も聞かなくていい。
無茶な要望もなければ、性根の腐った男から体を求められることもない。
「あの落雷に私は救われました…!」
言葉にするにつれて自由を手に入れた実感が湧いてきて、初対面なのも忘れて涙をこぼしながら喜びと、感謝を叫んだ。
「あの美しい落雷の光は一生忘れません…!ありがとうございました…!!ありがとう!!私を自由にしてくれて…ありがとうございます…!!」
彼は腕を組み少し考えてる様子だった、私は感謝を伝えられただけで充分だった。
無言の時間が流れる中、手土産を持ってくるべきだったなと勢いで来たことを後悔をしていた、その時倒れていた1人が声をあげた。
「っな、何が…ありがとうだ…、娘を、妻を…家族を殺された俺たちの…他の奴らのっこと、も…考えてものを言え…っ!!恥を知れっ!!」
何も知らない男からの言葉に、私はたった今まで嬉しかった気持ちが腑が煮えくりかえる怒りへと一瞬で変わってしまった。
「うるさいっ!!!!私がどれだけ苦しかったかアンタにはわからないでしょう…アンタが口にする、今感じているだろう不幸、理不尽、それを私は10年間…毎日感じながら生きてきたわ…アンタみたいな人間はまず今まで幸せだった事を感謝しなさいよ!!」
「ふざけるなっ!!お前みたいな女1人の幸せと引き換えに町民が不幸を被るなんておかしな話だ…この男のせいで…この男さえ、居なければ俺らは幸せなままだった!!」
「……今まで幸せだったならいいじゃない…、少しは虚しい人生送ってみたらどう?我が家の落雷は天罰も同然…あの人らは死んで当然だった、アナタの家族も同じく天罰だったんじゃない?」
「なんだと…!?!!」
キレた男は火事場の馬鹿力というやつか、立ち上がり拳を振ってきたが、その拳は私に届く前に落雷によって目の前で消えてしまった。
「女、お前は良いことを言う、言われてみれば俺もそんな気がしてきた。」
「え?」
「ここ数日、力の練習をしていただけなのに家族の仇打ち、燃えた家を返せ、この街を出ていけ、ちょうどうんざりしていたんだ。
何でこんな怒っているのか。
でもお前の言う通りクソな人間に落ちるべくして雷は落ちた、俺は天罰を与えていただけ。すごく良い!それでいい!」
エネルは考え込んでいたさっきの表情とは打って変わり笑っていた。
「俺はエネル。おまえを殺す気でいたから話聞いてる間に名前を忘れた、もう一度名乗れ。」
「私は秋、手土産も無くごめんなさい。二度も救ってくれてありがとう、私の神様…」
「うむ、神と呼ばれるのも悪くないな!」
握手を求めると彼は満足げにまた笑って握手をしてくれた。
私にとって雷は自由をくれた希望の光。
1/1ページ