三井 寿
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暑かった夏も過ぎ去り、肌寒いと感じ始めた。
秋はもう目の前まで来ている。
校庭の木の葉はほんのり色を変えていたが、紅葉で一面になるまではまだまだかかりそうだ。
少し強い木枯しは私の髪を乱した。
「…ぅ。もぉー、さっき直したばっかりなのに、ボサボサじゃあ寿くん来た時に笑われちゃうよー…。」
校門で私の彼、寿くんが来るのを待っている。
スポーツの秋という季節だが、彼氏の寿くんは最近大会を終えて部活には少し顔を出す程度の活動になった。
夏ほどの運動量よりはるかに少ない。
その放課後の余裕の時間を私との時間にあててくれてる。
登下校も大会以前には叶わなかった。
彼はすごく熱心にバスケと向きあっていたから。
寂しかったけど、バスケで汗を流す彼を見るのが大好きだった。
寂しさなんて吹き飛んでしまうくらい、私も応援に熱を入れていた。
「(寿くんのこと考えてるの幸せなんだけど、風やまないよー…ヘアゴム持ってくればよかったなぁ…早くこないかなぁ…)」
鞄を柵に立てかけ、耐えきれず乱れる髪を両手で梳かしたり抑えたりをきりもなく繰り返していた。
「おいっ!秋っ!!」
「!」
校舎の方から寿くんの声が聞こえて嬉しさからすぐに振り向いた。
けれど寿くんは顔を赤くして叱咤する。
「お前!こんなに風強んだから気をつけろよ!!」
「何度直してもボサボサになっちゃうんだもんー」
「バッッカ!髪じゃねよスカート!!髪気にするよりスカート押さえろ!!見えたらどうすんだ!!」
寿くんの顔が赤い意味はわかった。
考えもしてなかった話題に私も顔を赤くしてしまった。
「え…、ひ、寿くんスカートの中見ちゃったの?!」
「なっ…見てねえよ!!見えそうだっただけだ!!」
「そっか、よかった…恥かくところだったよ…」
「呑気に校門に突っ立ってんなよ、世の中変態ばっかなんだぞ。」
「すみません…」
本音を言えば「寿くんも変態ですか?」と聞きたいところだが、私は怒られた側なので大人しくしようとその言葉を飲み込んだ。
寿くんは私の乱れた髪を
木枯し以上にわしゃわしゃと乱し始めた。
スキンシップをとってくれる彼の手が大好き。
髪を乱す風は許せないのに
今はどんなに髪を乱されても心は飛び跳ねるくらい嬉しくて喜びでいっぱいだ。
頭を撫でまわされている私はきっと犬の様だろう。
「ふふっ、撫でてくれるの嬉しいけどこんなにぐしゃぐしゃだと寿くんに恥かかせちゃう。」
「何で俺が恥ずかしいんだよ。」
「えー?“三井寿の彼女は身嗜みがなっていない!”って思われちゃったら恥ずかしいでしょ?」
彼は口を尖らせて少し考え込むと、さっきとは違う、優しく、愛しむ様、私を撫でた。
「あまりに秋が魅力的すぎて横取りされるくらいならだらしない方が嬉しい…かも。」
寿くんから、こんなドラマの様な、少女漫画の様なセリフが聞けると思いもしなかった私の顔は真っ赤になった。
真っ赤になった私を見て寿くんも同じ様に顔を赤らめた。
「私もずっと寿くんの彼女でいたいから、たまにはボサボサでもいいかな?」
「おぅ…そうしとけ。」
「次はスカートもちゃんと気にするね。」
「そこは徹底しろよ?心配かけさせんな…。」
「はーい。」
冷たい木枯しが、二人の火照りを下げていく。
鞄を持ち、少し乱れた髪をなびかせて彼と並んで帰路を辿る。
紅葉を見ながら帰る日はきっとそう遠くはない。
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