【3Z】かいこうそうぐう
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裏庭で待っているとしばらくしてHRを終えた鐘が響いた。
すると程なくして佐藤は息を切らして走ってきた。
「おはよう、そんなに急がなくてもよかろう。」
「いや…、っ、授業、始まるまで…時間ないので…。」
「そうか」
佐藤が深呼吸をし、息を整え終えたところで話を切り出す。
「昨日、いい方向に向くと言っておいて、結果ことを大きくしてしまった、すまない。」
「いえ…私もそれなりに反撃、とか、陰湿ないたずらが続くと覚悟して登校したんですが…こんな形で騒がしくなるとは思ってませんでした…。」
「拙者はそれほど害は及ばない。だがお主の方はそうもいくまい、教室ではどうだったか教えるでござる。」
「あー…うぅーん……それなりに尾鰭がついて噂されてました…」
目をそらして言葉を溢す彼女にどうしたらいいか脳みそを働かす。
来島の言う通りことを大きくした拙者には彼女を見守る責任はある、このまま放っておくわけにはいかない。
クラスが違うが故、毎度手を貸してもやれない。
武市にいい案がないか相談するのも悪くないだろう。頭の良さは晋助のお墨付きだしな。
「少し電話をさせてくれ」
「どうぞ」
アドレス帳から武市の名前を探し電話をかける。
携帯を耳にあてていると2コールで出てくれた。
『もしもしぃ〜?』
「武市、お主の手を借りたい。拙者らではいい策が浮かばなくてな…どう動けばこの騒ぎが落ち着くと思う…?」
『そうですねー、噂というものはすぐに消せるものではありませんので。よく言う時間が解決してくれるってやつに期待するしかありませんねー』
「解決するまで降りかかる火の粉に耐え続けろと言うでござるか?」
『いえいえ、最後までお聞きなさい。その解決するまでの時間、万斉殿と佐藤殿は本当に付き合っている事にしてしまえば良いのです。まあ偽装カップルってやつです。』
「………」
絶句してしまった。
何言ってるんだコイツは。
『晋助殿の後ろ盾もあります、河上万斉の彼女に無闇矢鱈に近づくと危ないって印象づけるんです。この話が事実だったと気づけば騒いでる輩も少しずつ黙る事でしょう。』
「…確かにそうやもしれぬが」
『失礼承知ですが彼女には知人は多くても親しい友人は少なかったと存じます。学校では普段孤独の身の彼女には何の問題もないでしょう?』
武市の声の奥から来島が「他のクラスの女子の友人関係把握してるの気持ち悪っ!!!!」と叫んでる。
その通りである。
あぁ、この電話がスピーカーじゃなくてよかった。
本当に不躾なことを言うでござる。
「…わかった、その案が今すぐ使えそうな策に違いはない…佐藤にもそう伝えておくでござる。」
武市との電話を切り、佐藤と向き合う。
「待たせたな。今1番手っ取り早い対策として、拙者と主が付き合っているのは事実だと広めることが最善だという話になった。」
「え?!付き合ってないじゃないですか?!」
「落ち着け。この噂を消すために“偽装カップル”という器にしばらくの間収まるだけでござる。」
「でででもっ!!私は、その、どうしたらいいんでしょう?!男女のお付き合いをした事なんてないですし…偽装なんてうまく出来る自信ありません…!」
「そんなに難しく考えなくて良い、“付き合っているのか?”という問いに“はい、そうです”と肯定するだけで十分でござる。」
「……それでこの騒ぎが本当に鎮まるんですか…?」
「何とも言えぬな。今すぐ鎮静化を図りたいならば噂を口にする者を一人残らず病院送りにするくらいしか拙者には案が浮かばぬ。」
憂さ晴らしにもなるし拙者的には妙案だったんだがそれを聞いた佐藤は口を覆い青い顔をしていた。
「……う、噂が鎮まるまで、その、偽装カップルを演じるという案でお願いします…」
「うむ。ケータイを貸せ、連絡先を交換しておこう。何かあればすぐ連絡するでござるよ。」
桃色のケータイを受け取り勝手にポチポチと連絡先を打ち込み、交換を済ませる。
佐藤にケータイを返したと同時に予鈴の鐘が響く。
「あ!予鈴なっちゃった、またご連絡しますので失礼します!」
「あぁ。転ばぬ様にな。」
「ありがとうございます!あと、しばらくの間どうぞよろしくお願いします!」
慌ただしくお辞儀をして走って行った。
“よろしくお願いします”という言葉に気が抜けて少し笑ってしまう。
名目上の偽装カップルが何をよろしくするのか。
拙者がふっかけたお節介はどんな結末に向かうか見ものでござるな。
「今日は天気もいい、いい曲が書けそうだ」
拙者がこの場を離れたのは浮かんだ曲のイントロが出来た頃だった。