【3Z】かいこうそうぐう
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珍しく遅刻せず定刻通りに登校すると、校門には佐藤がいた。
風紀委員で挨拶運動をしていると言っていた武市の言葉を思い出す。
「朝から大変そうだな佐藤。」
「あ、おはようございます河上くん。委員会の仕事ですから。それに大変なことなんてないですよ。」
「本当に真面目でござるな。」
「褒めていただけて嬉しいです。」
「じゃあ、先に失礼するでござる。」
たわいもない会話を済ませて教室へ向かった。
たまたま朝早く起きてしまい、定刻通りに登校しただけだが、こんな朝も悪くないなと思った。
その日のお昼休み。
購買にパンを買いに行くと佐藤がいた。
1人で食べる量には見えないパンと飲み物を持つ彼女を見てあの“お友達”に会いに行くのが容易に想像できた。
「おい佐藤、そんなに抱えてどこに向かうつもりでござるか?」
「わっ…河上くん。えっと、友達のところに…」
「やはりそうであったか。放っておけ、と言いたいが前の様にボロボロになるのが目に見えるでござるな。」
「そういう…ことですね、気にしないでください。もう慣れっこなので。」
思わずため息が出る。
普段からZ組の女を見てるからかどうしてこんな軟弱な思考になるのか不思議なものだ。
強気な自分主義がすぎるあの女達もどうかと思うが。
この軟弱精神の佐藤でも出来ることがないかアドバイスをしたいがそれといっていい案が浮かばない。
「…あの、河上くん。私そろそろ行かないと怒られちゃうのでまた今度お話するのでも大丈夫かな…?」
「……わかったでござる。拙者も着いていこう。」
「え?」
「どうせこの後遅れてきた佐藤をあの女達が憂さ晴らしに殴りかかるのであれば拙者が一緒に行って事を防げば二の舞を演じずに済むであろう。」
「いや、でも…うぅ、どうしよう…えっと…」
「佐藤が断っても拙者は着いていく、気にすることないでござる。」
話しながら自分のお昼に食べる焼きそばパンと缶コーヒーを買う。
真面目な佐藤は拙者に迷惑がかかるとか色々考えているのであろう。
見ると前に受けた時の顔の擦り傷も治ったばかりだと思われた。
わかりきっているのに自ら傷を負いに行く必要はない。
「さあ、体育館裏に向かうでござるよ。」
「………」
会話もないまま体育館裏に向かった。
遠くにはあの女達の姿が見えてきた。
「佐藤!遅っせーんだよ食べる時間なくな、るだろうって、何関係ねー奴連れてきてんだよ!」
「げ、また河上じゃん…やば」
「何ナニー?あんたら昼休みまで一緒しちゃってー、付き合ってんの?」
勝手について来ておいて言うのもなんだが本当に不愉快な女達だ。気分が悪い。
「拙者がいると困ることでもあるのか?」
「女子会してるんだから男子禁制、部外者の男子はどっかいってくんない?いられると女子会出来なくて困るんで。」
「ほぉ…そうでござったか。女子会というよりは醜い井戸端会議と名を改めるべきでござるな。」
「何いってんの意味わかんないんですけど?」
不愉快極まりなく喧嘩を売っている拙者の横で佐藤は真っ青のまま立っていた。
彼女の立場を考えるとこれ以上はやめた方がいいと自分が引くべきだと判断した。
「佐藤、その持っている品をよこせ。」
「ぁ…はぃ…どうぞ……」
彼女が購買で買った品を受け取り、そのまま女達に放り投げた。
「お主らは不愉快極まりない、金輪際佐藤に近づくな。自身の平和な高校生活を過ごしたいなら素直に聞き入れておくのが身のためでござるよ。」
拙者の言葉がそこそこ鋭かったのか、口を開くものはいなかった。
「行くぞ。」
佐藤の背を押し歩かせる。
表情は依然として真っ青のまま。
自分がよく居座る裏庭に連れてきて佐藤と向き合う。
「…勢いであそこまで言ったが悪い事をしたつもりはない。不愉快だったからああした。」
「…ちょっと今、困惑してます…今後、自分がどうしたらいいのか…わかりません。このあと教室に戻るのが怖いです…」
「そうでござるか…」
謝る気は毛頭ないが、こうはっきり言われるとお思ってる以上に節介だったかもしれないと思い返してしまう。
「でも…」
「?」
「もしこれから、ゆっくり学校生活出来るかもしれないと思うと…嬉しいです。」
真っ青だった表情が落ち着いて、目を伏せる顔は穏やかで拙者は安心した。
「そうか、いい方向に向くはずでござる。信じて待っていろ。」
「嫌な役をさせてしまってすみませんでした…ありがとうございました。」
「拙者が勝手にしたことだ、気にする必要はないでござるよ。」
落ち着いた頃には休み時間は残り少なくなっていたが、その少ない時間で2人でお昼ごはんを食べた。
言葉は交わさない沈黙が、不思議と心地よかった。