【3Z】かいこうそうぐう
名前変更
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ここは3Z教室、時は1限が終わった直後。
創作に没頭し、体育館裏の出来事を忘れた頃。
数えれば1週間後となる、珍しく授業に出席していた自分に訪問者がいた。
「河上くぅーん、A組の子が呼んでるよぉー」
「…?」
クラスメイトの声を聞き、視線を教室の入り口に向ければいつぞやボロボロになっていた真面目そうな彼女が立っていた。
「久しぶりでござるな。」
「こんにちは、先日はありがとうございました。」
「礼ならあの時に充分聞いたでござる、拙者に何の用でござるか?」
尋ねると彼女はポケットから手のひらに収まるほどの小さな包みを出した。
「あの日あなたが落としていったの、追いかけて渡そうと思ったんですが、その時もう姿が見えなくて… 」
包みを開けるとギターのピックが入っていた。
気づいたらなくなってた自分のピックに間違いなかった。
「届けてくれた事感謝するでござる、ありがとう」
「いえ、もっと早く渡せたらよかったんですが、中々お会いできなくて…。」
「あぁ、あまり授業に出てないのでな。毎日ここに足を運んでいたのか?」
「ご迷惑だとは思ったんですが、はい。」
「面倒をかけてしまったな。…あ。」
ここに来て名前を聞いてない事に気づいた。
もちろん自分も名乗ってはいなかったのでお互い知らなくて当然なのだが。
「名を聞かせてもらえぬか?拙者はZ組の河上万斉と申す。」
「あっ…そうですね、お名前お伝えしてなかったですね。A組の佐藤 秋と申します。」
「何かの縁だ、また何かあった時はよろしく頼むでござるよ。」
「はい…!こちらこそ、是非またお話させてください。」
「拙者は軽音部の部室か裏庭にいる、教室にはほぼいないのでな、用がある時はそっちに顔を出すでござる。」
「ありがとうございますじゃあ、今日は失礼させてもらいます、またお会いしましょうね。」
「あぁ。また。」
以前と同じく深々と頭を下げ、彼女は教室へ戻っていった。
自分も席に戻ろうと教室に向き直ったらそこにはクラスメイト達がニタニタと拙者を見ていた。
普段からよく話す来島と武市が食い入る様に話しかけてきた。
「先輩!!あの子彼女っすか?!彼女いたんすか!!何話してたんすか?!」
「隅におけないですねぇ、まあ、これだけ顔立ちが良いのですから、万斉殿にだって彼女がいたっておかしくはないでしょう。」
「万斉、お前意外と女の趣味は地味なんだな」
晋助はどうせ興味もないくせにからかう様に口を挟んできた。
「あの女とはそんな関係じゃない、ちょっとばかり話すきっかけがあっただけで中身のある会話なんか一度もしたことはないでござるよ。たった今自己紹介をしたくらい出会ってから日は浅いでござる。」
「そうなんすか?!雰囲気が恋人のそれだったのでてっきり彼女かと思ったっす。」
「彼女風紀委員の佐藤さんですよね、たまに校門で挨拶運動してるのを見かけますよー、真面目に委員会活動をするとはなんといい子なんでしょう。」
「武市先輩言い方がキモいんっすけど、よく見てますね、この学校に挨拶運動なんてものがあったのを初めて知りましたよ。」
「あんなに清楚で真面目そうな女子はこの学校では天然記念物ですからね、そんないたいけな女の子が朝から校門に立っていれば誰だって目につくと思いますよ?」
「もういいです喋んないでください武市変態。」
「変態じゃありませんフェミニストです。」
その会話から彼女の知らない一面を知る。
風紀委員、彼女にはぴったりだと思った。
騒がしい2人と晋助を無視して自分の席につく。
ポケットからさっき受け取った可愛いらしい包みに入ったピックを眺める。
拾ったものを返すだけなのに小さなラッピングを施してから返すのは、女の中では普通なのか、拙者が知るところではない。
ただ、初対面の姿からは見受けられなかった女の子らしい彼女の一面に、表情を綻ばせる自分がいた。