その男、狂犬につき
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蛇目は焦っていた。
舎弟頭、若頭と次々やられ、場所が割れていく。辿り着かれるのも時間の問題だった。そもそもの組員が少なく、その上戦える組員など限られていたというのにそいつらは見事に真島に完敗、戦う前から口を割る舎弟頭まで出る始末。残り少ない組員で戦闘に回せる者はもういない。頼りない組員を置いて倉庫を移動する算段を立てる。
今だに様子の可笑しかった男を引っ張り出して、神室町にある、組員すら知らない場所に男を移そうとする。
「な、なんと……!」
男を隠していた工務店の倉庫へ向かうと、そこには蛇目連合の非戦闘員達が転がっていた。これはもう遅かったか、と男を探しに行くとそこに姿はあった。しかし、いつもの狂った様子と違う。怪訝に思うも急いで移動させる為に呼んでおいたタクシーに男を連れ込む。
乗り込むなり行き先を告げる蛇目。
「神室町、ホテル街の脇でいい……急いでくれ!」
「シートベルトの着用をお願いします」
ああ分かったから!と言いながらシートベルトを着用すると、発進するタクシー。
蛇目は焦っていた為、運転手の顔を見ていなかった。
ニヤリと笑うその男は言われた目的の場所まで2人を運ぶのだった。
──────
「釣りはいらん!」
蛇目は紙の現金を運転手の出したトレーに出すと急ぎ、男を車から出す。
先程から大人しい男に違和感を抱くも、今は隠すのが先決である。ホテル街ではなく右に曲がり神室町の際にある雑居ビルに入る。
組の金を隠すカモフラージュのペーパーカンパニーを持っていた蛇目は、そこに男を押しやると扉に鍵を掛ける。これで安全な筈だった。
不意に響くノック音。
びくりと体を揺らす蛇目。男の目は虚で反応はない。1人驚く蛇目は恐る恐るドアに近付く。
「すみませーん、領収書を渡しに来ましたー」
先程のタクシーの運転手だった。
「領収書なぞいらん!帰ってくれ!」
「そうは行かないんですよー会社の規定なんです、クレームが来ても困るのでー」
食い下がる運転手に蛇目は舌打ちをすると渋々ドアを少し開ける。
と、目の前に現れるはタクシー運転手。手に領収書を持っている。
受け取る為に手を出すと少し身を引く運転手にムキになり、ドアを開けて毟り取ろうとすると、横から棒のような物が蛇目の頭目掛けて降ってくる。
気付いた時にはもう遅かった。強い衝撃に意識を失い倒れる蛇目。運転手と謎の男達は倒れている蛇目を気にせず、その部屋に入り込んでいくのだった。
──────
2人は男の言っていた倉庫に辿り着く。そこには倒れている蛇目連合の組員と思わしき男達。
「どういうこっちゃ……?」
「これは一体……」
狼狽える2人は中に入ろうとするも、別の男がやってくる。それに気付き物陰に隠れる2人。現れたのは蛇目だった。
「な、なんと……!」
驚いている蛇目はそのまま倉庫に入ったかと思うと王史郎を連れて出てくる。大人しい王史郎は黙って蛇目の後を付いていく。タクシーに乗った2人を見届けると、2人は頷き合いこちらもタクシーで追うのだった。
前を走るタクシーを追い、辿り着いたのは神室町の端。
雑居ビルに入っていく2人を追う為に降りる2人は、前のタクシーが動かない事に違和感を持つ。
領収書を手に出てきた運転手に、受け取り忘れか、と見過ごそうとしていると運転手と共にどこからか現れたスーツの男達が後を追いビルへ入っていく。
これは何か可笑しい。
真島と視線を合わせる。真島も勘付いているようだ。蛇目の命が危ない。
2人はビルの非常階段を駆け上がっていくのだった。
──────
エレベーターが止まった回を確認、そこまで向かうとドアが開いている一室があり、人が倒れている。2人が駆け寄ると、倒れている男の意識が戻ったのかぴくり、と反応する指。
蹲み込む椎名が倒れている蛇目に声を掛ける。
「おい!大丈夫か?何があった!」
「アイツはどこにおるんや?!」
真島の問い掛けに蛇目の震える指がゆっくりとエレベーターを指す。
「ミ、レニア、ム……タ、ワー……」
最後の気力だったらしい。パタリと指を下ろしそれきり目を開けない。
頭を強く打っているのか微量の出血も見られる為、無闇に体を揺する事が出来ない。故に移動させる事も出来ず、その場に置き去りにする事を躊躇う椎名。
真島の檄が飛ぶ。
「犯人追うんが先決やろ、早よ行くで!」
「……分かってる」
名残惜しくも立ち上がる椎名を腕を掴み、エレベーターへ向かう真島と椎名。
ドアに挟まれたまま倒れている蛇目を気の毒に思う椎名は、せめてもの思いで通行人に119番を要請し、その場を去るのだった。
──────
王史郎と謎の男達はミレニアムタワーにいる。
駆けつけた2人がエレベーターを見ると、一つだけ最上階へ登っている。
刑事の第六感ともいうものが働いた椎名は、別のエレベーターで最上階を目指す。
「よりにもよって組事務所があるミレニアムタワーかいな……別の組の人質にでも取られとるんちゃうか?」
「いや、どうだかな……態々敵対事務所まで来ないだろ……それに蛇目は警戒していた筈だ、それを考えると手口が少し手慣れている気がする」
エレベーター待ちの間に所感を述べる椎名。真島の考えもなくはないが、ならミレニアムタワーで待つ必要もない、そのまま真島組にカチコミに行けばいいのだ。目的はなんなのか、王史郎は無事か、それを確かめに行く2人。
最上階に着くと、目の前にはヘリポート。今日は無風な筈だが最上階ともなるとそれなりの風が吹いている。夜でも明るいヘリポート。
目印である着陸区域照明灯が男達の足元に反射していて、存在を証明している。
「王史郎!」
遠く離れた場所にいる男に声を張り上げる椎名。
すると待っていたかのように振り返る男。それに伴い周りを囲むスーツの男達も振り返る。
「警棒……?お前達、警察か?!」
「そうだよ、玲士……公安だってさ、父さんが護衛にって寄越したんだ」
余計な事してくれたもんだよ、全く……と反省の色もない王史郎に詰め寄る椎名。
しかし、同僚らしき男達に阻まれる。
「お前なら許してくれるよな……?可愛がってやったもんなぁ玲士……」
「お前……!」
卑しく笑う王史郎を睨み付ける椎名。離れた位置から見守っていた真島が口を開く。
「おい、うちんとこから借りよった560万……どないしてん」
真島が話し掛けるとそちらを向く王史郎。その顔には余裕の笑みが浮かんでいる。
「ああ……記者に要求されて用意したけど、あんな端金ばら撒いてやったよ!何せネタ元からいくらでも揺すれるんだからなぁ!」
腹を抱えて笑う王史郎。それを見る椎名の頭に血が昇る。それに気が付いてる真島は冷静に言葉を返す。
「クズはどこまでもクズやのう、はなから返すつもりもなかったっちゅう訳や……極道舐めたらアカンで」
真島の真剣な表情に全身の圧が加わる。極道の面子にも関わる問題だ。真島の殺気に飲まれる男達。椎名の背中にも冷や汗が伝う。
「お、お前達、アイツを殺せ!」
「え、いやしかし……」
「いいから!」
真島の殺気に怖気付いた王史郎が周りの男達に指示を出す。しかし警察であるが故に、事件を隠匿する為にも殺す事は出来ない。
それでも強要する王史郎に渋々応戦の姿勢を見せる男達。警棒を抜き臨戦体勢になる男達にドスを抜き、構える真島。
それに呼応するように構える椎名。
王史郎の「行けェ!!」の声に一斉に駆け出す男達。
同じく走り出した2人。大乱闘が始まる。
警棒を取り出した男達に素手で応戦する椎名。相手はやはり手練のようで、そう簡単にやられてはくれない。警棒に腕を絡め取られ、肩を外されそうになると真島が拘束する男を蹴飛ばし、解放する。
「悪い!」
「油断すんなや!」
と笑い合う2人。椎名の余裕の無さをカバーするように戦う真島が、大半の警察達を蹴散らす。残っているのは王史郎を守る2人と王史郎自身。
「さぁ、どないする?今なら見逃したるで……」
ドスを撫でる真島に拳を鳴らす椎名。2人に怯える王史郎は自分の身を固める2人に命令を下す。
「お、俺を守れ!」
「情けないのう!お前の父親の株も落ちるわ」
「そんなものある訳ない!!」
その日一番の必死な表情を見せる王史郎に異変を感じ取る2人。
「そうだよ、俺だって……やってやる!」
と、自身を鼓舞すると雄叫びと共に2人に立ち向かう王史郎。それを追うように警護の警察2人も応戦する。
2人は警察の相手を優先する。手練である者達を早く片付け、王史郎の目を覚まさせる必要があった。
なんとか警棒を弾き飛ばし、素手での応戦に持ち込む。殴り合いには自信があった椎名は拳を男に叩き込む。恨みなどないが致し方ない。
椎名が男を伸すのと同時に真島の方も男を蹴り飛ばしていた。
王史郎に取り掛かろうとしたその時、倒れていた警察の懐から抜いたのだろう、こちらに向けて拳銃を構える王史郎がいた。
「と、父さんに出来るなら、俺にも出来る……!」
王史郎の震える指がゆっくりとトリガーにかかる。
「やめろ!戻れなくなるぞ!」
「うるせぇ!!元はと言えばお前がっ……!」
と椎名に視線をずらし、意識を持っていかれている隙に真島が王史郎の手から拳銃を蹴り飛ばす。
ヘリポートの端に飛ばされる拳銃。
王史郎は腰を抜かし、膝を震わせながら床に座り込む。
「全部、全部……父さんが悪いんだっ……!」
泣きながら蹲る王史郎に2人は顔を見合わせ、王史郎の話を聞く体制に入るのだった。
舎弟頭、若頭と次々やられ、場所が割れていく。辿り着かれるのも時間の問題だった。そもそもの組員が少なく、その上戦える組員など限られていたというのにそいつらは見事に真島に完敗、戦う前から口を割る舎弟頭まで出る始末。残り少ない組員で戦闘に回せる者はもういない。頼りない組員を置いて倉庫を移動する算段を立てる。
今だに様子の可笑しかった男を引っ張り出して、神室町にある、組員すら知らない場所に男を移そうとする。
「な、なんと……!」
男を隠していた工務店の倉庫へ向かうと、そこには蛇目連合の非戦闘員達が転がっていた。これはもう遅かったか、と男を探しに行くとそこに姿はあった。しかし、いつもの狂った様子と違う。怪訝に思うも急いで移動させる為に呼んでおいたタクシーに男を連れ込む。
乗り込むなり行き先を告げる蛇目。
「神室町、ホテル街の脇でいい……急いでくれ!」
「シートベルトの着用をお願いします」
ああ分かったから!と言いながらシートベルトを着用すると、発進するタクシー。
蛇目は焦っていた為、運転手の顔を見ていなかった。
ニヤリと笑うその男は言われた目的の場所まで2人を運ぶのだった。
──────
「釣りはいらん!」
蛇目は紙の現金を運転手の出したトレーに出すと急ぎ、男を車から出す。
先程から大人しい男に違和感を抱くも、今は隠すのが先決である。ホテル街ではなく右に曲がり神室町の際にある雑居ビルに入る。
組の金を隠すカモフラージュのペーパーカンパニーを持っていた蛇目は、そこに男を押しやると扉に鍵を掛ける。これで安全な筈だった。
不意に響くノック音。
びくりと体を揺らす蛇目。男の目は虚で反応はない。1人驚く蛇目は恐る恐るドアに近付く。
「すみませーん、領収書を渡しに来ましたー」
先程のタクシーの運転手だった。
「領収書なぞいらん!帰ってくれ!」
「そうは行かないんですよー会社の規定なんです、クレームが来ても困るのでー」
食い下がる運転手に蛇目は舌打ちをすると渋々ドアを少し開ける。
と、目の前に現れるはタクシー運転手。手に領収書を持っている。
受け取る為に手を出すと少し身を引く運転手にムキになり、ドアを開けて毟り取ろうとすると、横から棒のような物が蛇目の頭目掛けて降ってくる。
気付いた時にはもう遅かった。強い衝撃に意識を失い倒れる蛇目。運転手と謎の男達は倒れている蛇目を気にせず、その部屋に入り込んでいくのだった。
──────
2人は男の言っていた倉庫に辿り着く。そこには倒れている蛇目連合の組員と思わしき男達。
「どういうこっちゃ……?」
「これは一体……」
狼狽える2人は中に入ろうとするも、別の男がやってくる。それに気付き物陰に隠れる2人。現れたのは蛇目だった。
「な、なんと……!」
驚いている蛇目はそのまま倉庫に入ったかと思うと王史郎を連れて出てくる。大人しい王史郎は黙って蛇目の後を付いていく。タクシーに乗った2人を見届けると、2人は頷き合いこちらもタクシーで追うのだった。
前を走るタクシーを追い、辿り着いたのは神室町の端。
雑居ビルに入っていく2人を追う為に降りる2人は、前のタクシーが動かない事に違和感を持つ。
領収書を手に出てきた運転手に、受け取り忘れか、と見過ごそうとしていると運転手と共にどこからか現れたスーツの男達が後を追いビルへ入っていく。
これは何か可笑しい。
真島と視線を合わせる。真島も勘付いているようだ。蛇目の命が危ない。
2人はビルの非常階段を駆け上がっていくのだった。
──────
エレベーターが止まった回を確認、そこまで向かうとドアが開いている一室があり、人が倒れている。2人が駆け寄ると、倒れている男の意識が戻ったのかぴくり、と反応する指。
蹲み込む椎名が倒れている蛇目に声を掛ける。
「おい!大丈夫か?何があった!」
「アイツはどこにおるんや?!」
真島の問い掛けに蛇目の震える指がゆっくりとエレベーターを指す。
「ミ、レニア、ム……タ、ワー……」
最後の気力だったらしい。パタリと指を下ろしそれきり目を開けない。
頭を強く打っているのか微量の出血も見られる為、無闇に体を揺する事が出来ない。故に移動させる事も出来ず、その場に置き去りにする事を躊躇う椎名。
真島の檄が飛ぶ。
「犯人追うんが先決やろ、早よ行くで!」
「……分かってる」
名残惜しくも立ち上がる椎名を腕を掴み、エレベーターへ向かう真島と椎名。
ドアに挟まれたまま倒れている蛇目を気の毒に思う椎名は、せめてもの思いで通行人に119番を要請し、その場を去るのだった。
──────
王史郎と謎の男達はミレニアムタワーにいる。
駆けつけた2人がエレベーターを見ると、一つだけ最上階へ登っている。
刑事の第六感ともいうものが働いた椎名は、別のエレベーターで最上階を目指す。
「よりにもよって組事務所があるミレニアムタワーかいな……別の組の人質にでも取られとるんちゃうか?」
「いや、どうだかな……態々敵対事務所まで来ないだろ……それに蛇目は警戒していた筈だ、それを考えると手口が少し手慣れている気がする」
エレベーター待ちの間に所感を述べる椎名。真島の考えもなくはないが、ならミレニアムタワーで待つ必要もない、そのまま真島組にカチコミに行けばいいのだ。目的はなんなのか、王史郎は無事か、それを確かめに行く2人。
最上階に着くと、目の前にはヘリポート。今日は無風な筈だが最上階ともなるとそれなりの風が吹いている。夜でも明るいヘリポート。
目印である着陸区域照明灯が男達の足元に反射していて、存在を証明している。
「王史郎!」
遠く離れた場所にいる男に声を張り上げる椎名。
すると待っていたかのように振り返る男。それに伴い周りを囲むスーツの男達も振り返る。
「警棒……?お前達、警察か?!」
「そうだよ、玲士……公安だってさ、父さんが護衛にって寄越したんだ」
余計な事してくれたもんだよ、全く……と反省の色もない王史郎に詰め寄る椎名。
しかし、同僚らしき男達に阻まれる。
「お前なら許してくれるよな……?可愛がってやったもんなぁ玲士……」
「お前……!」
卑しく笑う王史郎を睨み付ける椎名。離れた位置から見守っていた真島が口を開く。
「おい、うちんとこから借りよった560万……どないしてん」
真島が話し掛けるとそちらを向く王史郎。その顔には余裕の笑みが浮かんでいる。
「ああ……記者に要求されて用意したけど、あんな端金ばら撒いてやったよ!何せネタ元からいくらでも揺すれるんだからなぁ!」
腹を抱えて笑う王史郎。それを見る椎名の頭に血が昇る。それに気が付いてる真島は冷静に言葉を返す。
「クズはどこまでもクズやのう、はなから返すつもりもなかったっちゅう訳や……極道舐めたらアカンで」
真島の真剣な表情に全身の圧が加わる。極道の面子にも関わる問題だ。真島の殺気に飲まれる男達。椎名の背中にも冷や汗が伝う。
「お、お前達、アイツを殺せ!」
「え、いやしかし……」
「いいから!」
真島の殺気に怖気付いた王史郎が周りの男達に指示を出す。しかし警察であるが故に、事件を隠匿する為にも殺す事は出来ない。
それでも強要する王史郎に渋々応戦の姿勢を見せる男達。警棒を抜き臨戦体勢になる男達にドスを抜き、構える真島。
それに呼応するように構える椎名。
王史郎の「行けェ!!」の声に一斉に駆け出す男達。
同じく走り出した2人。大乱闘が始まる。
警棒を取り出した男達に素手で応戦する椎名。相手はやはり手練のようで、そう簡単にやられてはくれない。警棒に腕を絡め取られ、肩を外されそうになると真島が拘束する男を蹴飛ばし、解放する。
「悪い!」
「油断すんなや!」
と笑い合う2人。椎名の余裕の無さをカバーするように戦う真島が、大半の警察達を蹴散らす。残っているのは王史郎を守る2人と王史郎自身。
「さぁ、どないする?今なら見逃したるで……」
ドスを撫でる真島に拳を鳴らす椎名。2人に怯える王史郎は自分の身を固める2人に命令を下す。
「お、俺を守れ!」
「情けないのう!お前の父親の株も落ちるわ」
「そんなものある訳ない!!」
その日一番の必死な表情を見せる王史郎に異変を感じ取る2人。
「そうだよ、俺だって……やってやる!」
と、自身を鼓舞すると雄叫びと共に2人に立ち向かう王史郎。それを追うように警護の警察2人も応戦する。
2人は警察の相手を優先する。手練である者達を早く片付け、王史郎の目を覚まさせる必要があった。
なんとか警棒を弾き飛ばし、素手での応戦に持ち込む。殴り合いには自信があった椎名は拳を男に叩き込む。恨みなどないが致し方ない。
椎名が男を伸すのと同時に真島の方も男を蹴り飛ばしていた。
王史郎に取り掛かろうとしたその時、倒れていた警察の懐から抜いたのだろう、こちらに向けて拳銃を構える王史郎がいた。
「と、父さんに出来るなら、俺にも出来る……!」
王史郎の震える指がゆっくりとトリガーにかかる。
「やめろ!戻れなくなるぞ!」
「うるせぇ!!元はと言えばお前がっ……!」
と椎名に視線をずらし、意識を持っていかれている隙に真島が王史郎の手から拳銃を蹴り飛ばす。
ヘリポートの端に飛ばされる拳銃。
王史郎は腰を抜かし、膝を震わせながら床に座り込む。
「全部、全部……父さんが悪いんだっ……!」
泣きながら蹲る王史郎に2人は顔を見合わせ、王史郎の話を聞く体制に入るのだった。