その男、狂犬につき
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真島の観察眼が鋭く功を制した作戦。
注意を引き付け、目線が合ったところを見逃さなかった真島のお陰で目的の倉庫にやってくる事が出来た2人。
資材が多く、埃が舞っていて光が入る場所ではそれがキラキラと反射していた。
「……ほんまにここにその息子がおるんか?」
あまりに人の気配が無い倉庫に真島が不審がる。無論、椎名も勘付いていた。案内していた蛇目連合の男が倉庫中央で立ち止まる。それについて来た2人も立ち止まる。異変を察知し、椎名が倉庫の入り口を振り返ると同時に男は動いていた。音がした方を見ると、真島に飛び掛かる男が見える。思わず声を掛ける椎名。
「真島!」
対する真島は冷静に男を躱わすと、蹴りを喰らわす。男の腹に入ったのが見えた。ふらつきながら退く男。しかし倒れる事はなく、再度立ち向かう。それに駆け寄ろうとすると、片手を突き出し止める真島。
「1人で十分やろ……やったろやないか!」
果敢にも真島の腹に飛びつき、投げようとする男を引っ剥がし転がす真島。体を回転させ転がる男は直ぐに立ち上がり、真島に向けて何かを投げた。
粉っぽく宙を舞うそれは、倉庫にあった木屑のようで真島の顔面に向けて放たれた。
「っ……!」
古典的な目潰しを喰らう真島。咄嗟に腕を前に翳した事で片目が見えなくなり、一瞬の隙が生まれる。そこに角材を取り出した男が殴りかかろうとする。椎名は身を挺して真島に当たる筈だった角材を止める。真島の頭を狙ったそれを椎名が間に入り、頭をガードする腕が阻む。椎名の耳元で骨が軋む嫌な音がした。
「お前っ何してんねん!」
目を見開く真島に肩越しに振り返ると叱責する。
「油断するな!」
椎名の痛みに耐える表情が見えた真島は、拳を握り込むと構えを取る。
「分かっとるわ!……お前、覚悟出来とるんやろな?!」
男に向かって威嚇する真島。
黙って角材を手に間合いを計る男。
2人を相手取る男は中々のやり手で、角材を手足のように操る。真島への攻撃に使ったかと思えば、その隙に攻撃した椎名への盾として使い、反撃までするその技術に感心すら覚える椎名。
しかしダメージを蓄積した角材も、真島の手にかかれば簡単に折れてしまうのだった。2つに割れた角材を手に戦う男。武器としての危険性が増したが、2人より小さい体格の男はリーチがなくなると御し易い。2人で連携し、男の手から角材を蹴り飛ばす。素手だけになった男はそれでも耐えるが、男2人相手には敵わなかった。椎名が男の殴りかかる腕を掴み、そのまま背負い投げる。勢いよく倒れ伏した男。気を失っているのか立ち上がらない様子に思わず男の脈を確認する椎名。
「……大丈夫、生きてる」
真島を見上げ、お互い顔を合わせると安堵の表情を見せる椎名。
気を失った男を床に転がしたまま、その場を後にする。
神室町に戻る道すがら会話をする2人。
「当てが外れよったな……」
「だが、倉庫は一つ潰れた……組もそんなに大きくないんだろ?相手の人数分捌けば限られてくる」
「確か……闘えそうなんは組長が2人、後は会長の蛇目本人ぐらいやったか」
2人並び歩く背中は、夕日に染められていた。
「相手も本気だった……焦ってる事が分かったし、十分収穫ありだ」
腕を庇いながら歩く椎名に気付く真島。少し椎名に近寄ると、庇った腕の方に周りそちらを気にするそぶりを見せる。
「どうした、見えない方に俺が居たらまずいんじゃないのか?」
「……すまんかった」
あんなにも自信があった真島がしおらしくしている。嶋野の狂犬とも名のつく男の誠実さに触れた椎名。初めて見るその姿に男はなんだか、胸を掴まれたような締め付けを感じた。
「闘わせるつもりはなかってん、確かに油断やったわ」
しらおしくしていたかと思うと男に向き直る真島。それに合わせて立ち止まる。神妙な顔を突き合わせる2人。
「無理に1人で闘うな、俺もいる」
「無理ちゃうわ!」
現役の極道舐めんなや、と呟くと1人歩き始める真島。
それを見てフッと笑うと真島の背中を追う。
「その派手な格好、変えたらいいんじゃないか?少なくとも戦闘は減らせそうだ」
「あ?俺の一張羅やぞ、簡単に……」
言葉を途中で止める真島。同時に立ち止まると、その場で考え込む。その横に並び、真島の顔を眺める男。何かを閃いたようだ。パッと表情を明るくすると男に視線を合わせる。
「そや、変装や……!桐生ちゃん時の服が残っとる、その手があったわ!」
男の怪訝な顔に1人納得する真島は頷くと、はやる気持ちを抑えるように歩を進める。
「おい、どういう事なんだ?」
真島について回る男に答える。その表情に先程までのしおらしさなど微塵もなく、次の作戦に心躍らせているようだ。
「潜入捜査、いや……どこでも真島の再開や!」
いやー桐生ちゃんが欲しいところやなぁ、と1人完結している真島を呆れたように見る男は、意欲が削がれていない事を安堵し、真島の後を追うのだった。
注意を引き付け、目線が合ったところを見逃さなかった真島のお陰で目的の倉庫にやってくる事が出来た2人。
資材が多く、埃が舞っていて光が入る場所ではそれがキラキラと反射していた。
「……ほんまにここにその息子がおるんか?」
あまりに人の気配が無い倉庫に真島が不審がる。無論、椎名も勘付いていた。案内していた蛇目連合の男が倉庫中央で立ち止まる。それについて来た2人も立ち止まる。異変を察知し、椎名が倉庫の入り口を振り返ると同時に男は動いていた。音がした方を見ると、真島に飛び掛かる男が見える。思わず声を掛ける椎名。
「真島!」
対する真島は冷静に男を躱わすと、蹴りを喰らわす。男の腹に入ったのが見えた。ふらつきながら退く男。しかし倒れる事はなく、再度立ち向かう。それに駆け寄ろうとすると、片手を突き出し止める真島。
「1人で十分やろ……やったろやないか!」
果敢にも真島の腹に飛びつき、投げようとする男を引っ剥がし転がす真島。体を回転させ転がる男は直ぐに立ち上がり、真島に向けて何かを投げた。
粉っぽく宙を舞うそれは、倉庫にあった木屑のようで真島の顔面に向けて放たれた。
「っ……!」
古典的な目潰しを喰らう真島。咄嗟に腕を前に翳した事で片目が見えなくなり、一瞬の隙が生まれる。そこに角材を取り出した男が殴りかかろうとする。椎名は身を挺して真島に当たる筈だった角材を止める。真島の頭を狙ったそれを椎名が間に入り、頭をガードする腕が阻む。椎名の耳元で骨が軋む嫌な音がした。
「お前っ何してんねん!」
目を見開く真島に肩越しに振り返ると叱責する。
「油断するな!」
椎名の痛みに耐える表情が見えた真島は、拳を握り込むと構えを取る。
「分かっとるわ!……お前、覚悟出来とるんやろな?!」
男に向かって威嚇する真島。
黙って角材を手に間合いを計る男。
2人を相手取る男は中々のやり手で、角材を手足のように操る。真島への攻撃に使ったかと思えば、その隙に攻撃した椎名への盾として使い、反撃までするその技術に感心すら覚える椎名。
しかしダメージを蓄積した角材も、真島の手にかかれば簡単に折れてしまうのだった。2つに割れた角材を手に戦う男。武器としての危険性が増したが、2人より小さい体格の男はリーチがなくなると御し易い。2人で連携し、男の手から角材を蹴り飛ばす。素手だけになった男はそれでも耐えるが、男2人相手には敵わなかった。椎名が男の殴りかかる腕を掴み、そのまま背負い投げる。勢いよく倒れ伏した男。気を失っているのか立ち上がらない様子に思わず男の脈を確認する椎名。
「……大丈夫、生きてる」
真島を見上げ、お互い顔を合わせると安堵の表情を見せる椎名。
気を失った男を床に転がしたまま、その場を後にする。
神室町に戻る道すがら会話をする2人。
「当てが外れよったな……」
「だが、倉庫は一つ潰れた……組もそんなに大きくないんだろ?相手の人数分捌けば限られてくる」
「確か……闘えそうなんは組長が2人、後は会長の蛇目本人ぐらいやったか」
2人並び歩く背中は、夕日に染められていた。
「相手も本気だった……焦ってる事が分かったし、十分収穫ありだ」
腕を庇いながら歩く椎名に気付く真島。少し椎名に近寄ると、庇った腕の方に周りそちらを気にするそぶりを見せる。
「どうした、見えない方に俺が居たらまずいんじゃないのか?」
「……すまんかった」
あんなにも自信があった真島がしおらしくしている。嶋野の狂犬とも名のつく男の誠実さに触れた椎名。初めて見るその姿に男はなんだか、胸を掴まれたような締め付けを感じた。
「闘わせるつもりはなかってん、確かに油断やったわ」
しらおしくしていたかと思うと男に向き直る真島。それに合わせて立ち止まる。神妙な顔を突き合わせる2人。
「無理に1人で闘うな、俺もいる」
「無理ちゃうわ!」
現役の極道舐めんなや、と呟くと1人歩き始める真島。
それを見てフッと笑うと真島の背中を追う。
「その派手な格好、変えたらいいんじゃないか?少なくとも戦闘は減らせそうだ」
「あ?俺の一張羅やぞ、簡単に……」
言葉を途中で止める真島。同時に立ち止まると、その場で考え込む。その横に並び、真島の顔を眺める男。何かを閃いたようだ。パッと表情を明るくすると男に視線を合わせる。
「そや、変装や……!桐生ちゃん時の服が残っとる、その手があったわ!」
男の怪訝な顔に1人納得する真島は頷くと、はやる気持ちを抑えるように歩を進める。
「おい、どういう事なんだ?」
真島について回る男に答える。その表情に先程までのしおらしさなど微塵もなく、次の作戦に心躍らせているようだ。
「潜入捜査、いや……どこでも真島の再開や!」
いやー桐生ちゃんが欲しいところやなぁ、と1人完結している真島を呆れたように見る男は、意欲が削がれていない事を安堵し、真島の後を追うのだった。