その男、狂犬につき
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蛇目連合。
小さな組の寄せ集めで出来た少人数の組織である。纏め役の親父が蛇目と言うので蛇目連合。中には1人親分の組もあるその組織は、それぞれなんとか東城会にしがみつき、いずれは自分の大きな組織を持つ事を夢見ていた。
そんな小さな組に降って湧いた打ち出の小槌。
警視庁副総監、宗像征四郎の息子、宗像王史郎だった。
男、王史郎は組に自らの身分を明かし、スキャンダルのデータを持ち込み、これで匿ってくれと頼み込んできた。
男の身分とデータにより、匿う事を決めた蛇目連合はデータを使いネタ元に脅しを掛けると、今までの組の規模では考えられない大金を手に入れ、この男、王史郎を組織で囲い、手放さない事を密かに決めていた。
そんな事も露知らず、人を殺した罪の意識と大金をせしめた喜びで人が可笑しくなったように狂う様子を見せる王史郎。男を組織の寂れた倉庫に押しやると、その男を探す同じ東城会系の組織がある事を知る。慌てて事情を問い詰めると、要領を得ないながらも断片的に、蛇目連合に来る前に別組織から金を借りていた事を聞き出す。その金は持ち逃げし、蛇目達が使い込んだ金に混ぜたと話す。
大変な事態に揺れる連合。しかし他組織にはまだバレていない為、隠しおおせると踏んだ蛇目達はその後も男を監禁。その組織を見張る事でなんとか過ごしていた。
しかし、その組織は真島組傘下だったのだ。金を回収出来ずに真島組に泣きつきに行ったその組織を見て慌てふためく他の者達。真島組が乗るはずがない、と落ち着かせる蛇目だったが日も経たずに真島組構成員が神室町に解き放たれた。あまりの総動員に腰を抜かしそうになる蛇目連合は、取るに足らない小さな組織なので真島に認識されていない事を祈った。そして密かに監視をし、動きを知る事でちょこまかと動きやすい連合を有利に扱い、真島組の目から逃れた筈だった。
執念深い刑事がいる事と真島本人が動かなければ、の話だったが……。
ーーーーーー
「で、その組織はどこにあるんだ?」
「いやーどこやったかのう?そもそも認識したんも今が初めてかもしれん……」
顎に手を当て、髭を摩る真島に振り返り、呆れる椎名。
「おいおい……先行き不安だな。そんなんでよく組織をまとめられたもんだ」
「喧しいわ、余計なお世話じゃ!」
ちょお待っとれ!と言うと懐から携帯を取り出し、何処かへ連絡を取る真島。
「おう西田、あん組どこやったかのう?……ああ?!あん組言うたらあれやろが!!俺ら監視しとった小さい組や!!」
電話口に怒鳴る真島。そんな真島から少し距離を取る男に気が付いていない真島は、結局西田に事の次第を説明するのだった。
「……ああ、分かったわ。ほな」
と言うと電話を切る真島。離れた場所から他人事のように観察していた椎名は、電話を終えた真島の元へそっと近寄る。
「ただでさえ目立つんだから、少しは慎んでくれ」
「そら無理や、これが真島吾朗の生き方やからのう……それより、詳しい事分かったで」
真島が西田から聞いた情報を整理しながら伝える。
真島が認識していないのも当然で、最近出来上がったばかりの、1人組長が多い寄せ集め連合だった。三次団体以下の極小連合に名前が付いたのも最近。蛇目連合と呼ばれるその組織はごく最近まで稼ぎも僅か、アガリも僅かの弱小連合でもあった。しかしここ最近に限って急に羽振りが良くなり、カタギと変わらぬ生活を送っていたが、大きな犯罪にまで手を染めるようになったとか。
「明らかに奴が逃げ込んだからだ……大方、被害者のネタを盗んで金に変えたんだろう」
「せやな、後は場所なんやが……」
事務所という場所はこれといって無く、各々が住む家や工務店、資材倉庫などが主な拠点のようだ。
「人数の割に働きもんらしい……その倉庫やらが多くて2人やと時間かかる言うとった」
なんで極道やってんのやろな、と呟く真島に椎名が口を開く。
「……そういう人達の命のセーフティーネットなんじゃないのか、極道は……仕事に恵まれず、続ける事もできない、食うに困る、行き場をなくした男達が最終的に夢を見る場所だろ」
「せやけど、その極道で食っていけてへんのも事実や。人生、ちっと見方変えたら案外上手く転がるもんやで」
と、カラッとした顔で笑う真島を見て、男は真島のその発言の影を感じ取る。達観した事を言っているが、真島自身そう思い込もうとしている節があるのではないか。数多の犯罪者を見てきた男には刑事の第六感とも云うべき何かが真島に反応していた。
「ほんで手っ取り早い方法が……あれやな」
真島の目線の先を見ると、人の行き交う往来で物陰からこちらを見る男が1人。視線が合うと慌てて逃げ出そうとする不審人物に真島達も後を追う。
「な、目立つんも悪ないやろ!」
「今はな!」
走りながら会話をする2人は、既にお互いを理解し合う相棒の片鱗を見せていた。
走りながら此方を気にする様子の不審者に余裕を見る。敢えて人混みを選び走りぬけ、真島達を撒こうとするもしぶとく追いかける2人。道に落ちている物を投げたり、自転車を倒したり、ゴミを散らばらせたりなどしたい放題の逃走者に次第に怒りが湧く椎名。狭い路地に逃げ込んだのを見計らうと、真島と顔を合わせ、椎名は路地に。真島は迂回し、先回りをする。
暗く狭い路地にまたもや障害物で妨害する男。椎名は華麗に避けるが、その隙に差が広がってしまう。もうすぐで路地を抜ける。
光が差し込む向こう側に勢いよく抜けようとした男の目の前に、壁のように現れた真島。たたらを踏み、急停止するその男の背後につく椎名。体力に自信があると言ってもスーツで長時間走る事になるとは思っていなかった。サラリーマンに紛れる為の革靴を少し後悔する。
逃走者も流石に肩で息をしていた。明るい日差しの向こうから影の濃い路地に押し込むように男を追いやる真島。
「何処に逃げるつもりやったん?なぁ、俺らも連れてってや」
と壁際に男を追い詰めた真島は、覗き込むように逃走者を見る。その横に立つ椎名もまた身長が高く、聳える2つの壁に怯える男は先程の余裕など見る影もない程に萎れていた。
小さな組の寄せ集めで出来た少人数の組織である。纏め役の親父が蛇目と言うので蛇目連合。中には1人親分の組もあるその組織は、それぞれなんとか東城会にしがみつき、いずれは自分の大きな組織を持つ事を夢見ていた。
そんな小さな組に降って湧いた打ち出の小槌。
警視庁副総監、宗像征四郎の息子、宗像王史郎だった。
男、王史郎は組に自らの身分を明かし、スキャンダルのデータを持ち込み、これで匿ってくれと頼み込んできた。
男の身分とデータにより、匿う事を決めた蛇目連合はデータを使いネタ元に脅しを掛けると、今までの組の規模では考えられない大金を手に入れ、この男、王史郎を組織で囲い、手放さない事を密かに決めていた。
そんな事も露知らず、人を殺した罪の意識と大金をせしめた喜びで人が可笑しくなったように狂う様子を見せる王史郎。男を組織の寂れた倉庫に押しやると、その男を探す同じ東城会系の組織がある事を知る。慌てて事情を問い詰めると、要領を得ないながらも断片的に、蛇目連合に来る前に別組織から金を借りていた事を聞き出す。その金は持ち逃げし、蛇目達が使い込んだ金に混ぜたと話す。
大変な事態に揺れる連合。しかし他組織にはまだバレていない為、隠しおおせると踏んだ蛇目達はその後も男を監禁。その組織を見張る事でなんとか過ごしていた。
しかし、その組織は真島組傘下だったのだ。金を回収出来ずに真島組に泣きつきに行ったその組織を見て慌てふためく他の者達。真島組が乗るはずがない、と落ち着かせる蛇目だったが日も経たずに真島組構成員が神室町に解き放たれた。あまりの総動員に腰を抜かしそうになる蛇目連合は、取るに足らない小さな組織なので真島に認識されていない事を祈った。そして密かに監視をし、動きを知る事でちょこまかと動きやすい連合を有利に扱い、真島組の目から逃れた筈だった。
執念深い刑事がいる事と真島本人が動かなければ、の話だったが……。
ーーーーーー
「で、その組織はどこにあるんだ?」
「いやーどこやったかのう?そもそも認識したんも今が初めてかもしれん……」
顎に手を当て、髭を摩る真島に振り返り、呆れる椎名。
「おいおい……先行き不安だな。そんなんでよく組織をまとめられたもんだ」
「喧しいわ、余計なお世話じゃ!」
ちょお待っとれ!と言うと懐から携帯を取り出し、何処かへ連絡を取る真島。
「おう西田、あん組どこやったかのう?……ああ?!あん組言うたらあれやろが!!俺ら監視しとった小さい組や!!」
電話口に怒鳴る真島。そんな真島から少し距離を取る男に気が付いていない真島は、結局西田に事の次第を説明するのだった。
「……ああ、分かったわ。ほな」
と言うと電話を切る真島。離れた場所から他人事のように観察していた椎名は、電話を終えた真島の元へそっと近寄る。
「ただでさえ目立つんだから、少しは慎んでくれ」
「そら無理や、これが真島吾朗の生き方やからのう……それより、詳しい事分かったで」
真島が西田から聞いた情報を整理しながら伝える。
真島が認識していないのも当然で、最近出来上がったばかりの、1人組長が多い寄せ集め連合だった。三次団体以下の極小連合に名前が付いたのも最近。蛇目連合と呼ばれるその組織はごく最近まで稼ぎも僅か、アガリも僅かの弱小連合でもあった。しかしここ最近に限って急に羽振りが良くなり、カタギと変わらぬ生活を送っていたが、大きな犯罪にまで手を染めるようになったとか。
「明らかに奴が逃げ込んだからだ……大方、被害者のネタを盗んで金に変えたんだろう」
「せやな、後は場所なんやが……」
事務所という場所はこれといって無く、各々が住む家や工務店、資材倉庫などが主な拠点のようだ。
「人数の割に働きもんらしい……その倉庫やらが多くて2人やと時間かかる言うとった」
なんで極道やってんのやろな、と呟く真島に椎名が口を開く。
「……そういう人達の命のセーフティーネットなんじゃないのか、極道は……仕事に恵まれず、続ける事もできない、食うに困る、行き場をなくした男達が最終的に夢を見る場所だろ」
「せやけど、その極道で食っていけてへんのも事実や。人生、ちっと見方変えたら案外上手く転がるもんやで」
と、カラッとした顔で笑う真島を見て、男は真島のその発言の影を感じ取る。達観した事を言っているが、真島自身そう思い込もうとしている節があるのではないか。数多の犯罪者を見てきた男には刑事の第六感とも云うべき何かが真島に反応していた。
「ほんで手っ取り早い方法が……あれやな」
真島の目線の先を見ると、人の行き交う往来で物陰からこちらを見る男が1人。視線が合うと慌てて逃げ出そうとする不審人物に真島達も後を追う。
「な、目立つんも悪ないやろ!」
「今はな!」
走りながら会話をする2人は、既にお互いを理解し合う相棒の片鱗を見せていた。
走りながら此方を気にする様子の不審者に余裕を見る。敢えて人混みを選び走りぬけ、真島達を撒こうとするもしぶとく追いかける2人。道に落ちている物を投げたり、自転車を倒したり、ゴミを散らばらせたりなどしたい放題の逃走者に次第に怒りが湧く椎名。狭い路地に逃げ込んだのを見計らうと、真島と顔を合わせ、椎名は路地に。真島は迂回し、先回りをする。
暗く狭い路地にまたもや障害物で妨害する男。椎名は華麗に避けるが、その隙に差が広がってしまう。もうすぐで路地を抜ける。
光が差し込む向こう側に勢いよく抜けようとした男の目の前に、壁のように現れた真島。たたらを踏み、急停止するその男の背後につく椎名。体力に自信があると言ってもスーツで長時間走る事になるとは思っていなかった。サラリーマンに紛れる為の革靴を少し後悔する。
逃走者も流石に肩で息をしていた。明るい日差しの向こうから影の濃い路地に押し込むように男を追いやる真島。
「何処に逃げるつもりやったん?なぁ、俺らも連れてってや」
と壁際に男を追い詰めた真島は、覗き込むように逃走者を見る。その横に立つ椎名もまた身長が高く、聳える2つの壁に怯える男は先程の余裕など見る影もない程に萎れていた。