本にまつわるエトセトラ
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その男には誰にも言えない秘密があった。
簡単に言えば女装なのだが、男の趣味はそれに留まらず、完全に女に擬態しその場で一番良い男を引っ掛け、女の羨望の眼差しを受ける事にあった。今宵も女の羨望の眼差し目当てに男を引っ掛ける場所を探していた。
「おうそこの姉ちゃん、俺らと飲みいこうや」
男の相当に磨かれた女装の腕故にこういう事もある。
気怠げながらも柄の悪い男達に振り返ると、女に擬態している男はしおらしく、実に清楚でたおやかな様で男達を躱そうとする。
「待ち合わせなので……」
「良いじゃねーか少しくらいよ」
男の一人が粘りを見せる。一度声を掛けた手前、引っ込みがつかないのだろう。集団の空気に飲まれている。
「そうはいきません、相手がいますので……」
「そう言っても来ねえじゃねえか、な?大人しく俺らと来ればいいんだよ!」
女装する男の腕を掴むという強硬手段に出る男達に溜息を吐きつつ、応戦するつもりで男達を見据えたその時、
「ごめんごめん、待った?……で、この娘になんか用?」
煙草を片手に間に入ってくる男の背中には見覚えがあった。赤いストライプのジャケットに黒のワイシャツと合わせたスラックス。腕に付けた金の厳つい時計が男の経済力を象徴する。
「あ、秋山さん……いや、ちょっと誘っただけで……」
まごつく男達は秋山がどういう男なのか知っているようだ。ただのごろつきかと思っていたが、極道の端くれだったか、と手を出さなかった事に安堵する。
『神室町の駆け込み寺』と称される金融を経営する秋山駿という男は商売上、極道に顔が利く。おまけに足技も強く、今回は戦闘になる事なく男達を追い払うと煙草を消し、こちらに向き直る秋山。
「大丈夫だった?怖かったよね」
安心させるように笑う秋山に女の様相を取り戻すと、こちらも秋山の登場に安心したかの様に返す。
「助かりました、ありがとうございます……では、待ち合わせなので」
「君、祐希君でしょ。待ち合わせには誰が来るんだい?」
秋山に背中を向けていた女が固まる。
完全に擬態したとしてもこの男にはバレバレだった。何故なら過去に一度引っ掛けた事のある男なのだ。その時と格好は違うとはいえ、情報収集にも長けている秋山には全てお見通しなのだろう。
「悪い子だね、君も……また男を騙して引っ掛けようって?」
祐希の二の腕を掴み振り返らせると、化粧を乗せた艶やかな女の顔をする頬に指を滑らせる秋山。そのままウィッグの髪に手をやると祐希の後頭部に手を回す。途端に近寄る二人の距離。
「俺じゃ満足出来なかったかな?そんな悪い子にはお仕置きしなくちゃ……ね」
耳元で囁く秋山の声が頭の中で甘い香りを残し響き渡り、祐希の脳を支配していく。秋山の放つ色香で新たに甘美で痺れるような刺激を受けた男は、秋山の首に両の腕をかけるとそれに浸る様に、寄せられた秋山の顔に自身の顔を寄せるのだった。
簡単に言えば女装なのだが、男の趣味はそれに留まらず、完全に女に擬態しその場で一番良い男を引っ掛け、女の羨望の眼差しを受ける事にあった。今宵も女の羨望の眼差し目当てに男を引っ掛ける場所を探していた。
「おうそこの姉ちゃん、俺らと飲みいこうや」
男の相当に磨かれた女装の腕故にこういう事もある。
気怠げながらも柄の悪い男達に振り返ると、女に擬態している男はしおらしく、実に清楚でたおやかな様で男達を躱そうとする。
「待ち合わせなので……」
「良いじゃねーか少しくらいよ」
男の一人が粘りを見せる。一度声を掛けた手前、引っ込みがつかないのだろう。集団の空気に飲まれている。
「そうはいきません、相手がいますので……」
「そう言っても来ねえじゃねえか、な?大人しく俺らと来ればいいんだよ!」
女装する男の腕を掴むという強硬手段に出る男達に溜息を吐きつつ、応戦するつもりで男達を見据えたその時、
「ごめんごめん、待った?……で、この娘になんか用?」
煙草を片手に間に入ってくる男の背中には見覚えがあった。赤いストライプのジャケットに黒のワイシャツと合わせたスラックス。腕に付けた金の厳つい時計が男の経済力を象徴する。
「あ、秋山さん……いや、ちょっと誘っただけで……」
まごつく男達は秋山がどういう男なのか知っているようだ。ただのごろつきかと思っていたが、極道の端くれだったか、と手を出さなかった事に安堵する。
『神室町の駆け込み寺』と称される金融を経営する秋山駿という男は商売上、極道に顔が利く。おまけに足技も強く、今回は戦闘になる事なく男達を追い払うと煙草を消し、こちらに向き直る秋山。
「大丈夫だった?怖かったよね」
安心させるように笑う秋山に女の様相を取り戻すと、こちらも秋山の登場に安心したかの様に返す。
「助かりました、ありがとうございます……では、待ち合わせなので」
「君、祐希君でしょ。待ち合わせには誰が来るんだい?」
秋山に背中を向けていた女が固まる。
完全に擬態したとしてもこの男にはバレバレだった。何故なら過去に一度引っ掛けた事のある男なのだ。その時と格好は違うとはいえ、情報収集にも長けている秋山には全てお見通しなのだろう。
「悪い子だね、君も……また男を騙して引っ掛けようって?」
祐希の二の腕を掴み振り返らせると、化粧を乗せた艶やかな女の顔をする頬に指を滑らせる秋山。そのままウィッグの髪に手をやると祐希の後頭部に手を回す。途端に近寄る二人の距離。
「俺じゃ満足出来なかったかな?そんな悪い子にはお仕置きしなくちゃ……ね」
耳元で囁く秋山の声が頭の中で甘い香りを残し響き渡り、祐希の脳を支配していく。秋山の放つ色香で新たに甘美で痺れるような刺激を受けた男は、秋山の首に両の腕をかけるとそれに浸る様に、寄せられた秋山の顔に自身の顔を寄せるのだった。