本にまつわるエトセトラ
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サブストーリー「命売りの女」
『命売ります』
手書きで書かれたポップを手に立ちんぼをする女。桐生は思わずそのポップを掲げる女の前に立ち止まる。暫しの間、無言で見つめ合う二人。
「……お客さんですか?」
「いや……ただ何をしているんだと思ってな……」
目の前の女に深く踏み込むべきか躊躇する桐生。その間にも女はただ混じり気のない眼で桐生を見つめているのだった。その眼差しにいよいよ引っ込みのつかなくなった桐生は渋々、女の掲げるそれに介入する事を決めた。
「それは何だ?」
「言い値で売ってます。命に関わる貴方の事を全て私が引き受けます」
「……そんな簡単に引き受けるものじゃねえ、命を粗末にするな」
抑揚の無い声に加えて表情も欠落した女の様子に桐生も只事では無い空気を感じ取るも、余りの責任感の無さに口を挟まざるを得ない様子。しかし、桐生のありきたりな言葉は女には微塵も響いていないようだった。
「周りを見ろ、ここには他にも女の立ちんぼが居る……命以外で弄ばれるぞ」
「それならそれで金を請求するまでです。この身体も、人生にも、未練も何も無いのです」
女の視線は変わらず桐生を見つめている。それを覗く桐生には女の瞳の中に暗い闇が見えた気がした。その闇に錦山の事が頭を掠める桐生。
「この世の全てが醜く、汚い……己にはそう見えたのです。ゴキブリが文字に擬態するような不快感……貴方にはきっと分からないのでしょうね」
兄弟分であった錦山が闇に飲まれるのを止められなかった桐生は、女の言葉がまるで槍のように急所を突くのを体感する。女はそんな桐生の様子など歯牙にも掛けないで佇むのみだった。
「分かった、俺が言い値で買ってやる……だから、俺の命に変えても救いたい男の為にも、お前の抱えるものを教えてくれ」
桐生の覚悟の眼差しを受け、女の方も渋々といった形で桐生の誘いを受ける。女を連れて話せる場所を探す二人の後ろ姿は、行方不明の片想い相手とも、命を賭けても救いたい男のものとも違い、遥に似た、小さくか弱い背中が桐生の横に並ぶのだった。
『命売ります』
手書きで書かれたポップを手に立ちんぼをする女。桐生は思わずそのポップを掲げる女の前に立ち止まる。暫しの間、無言で見つめ合う二人。
「……お客さんですか?」
「いや……ただ何をしているんだと思ってな……」
目の前の女に深く踏み込むべきか躊躇する桐生。その間にも女はただ混じり気のない眼で桐生を見つめているのだった。その眼差しにいよいよ引っ込みのつかなくなった桐生は渋々、女の掲げるそれに介入する事を決めた。
「それは何だ?」
「言い値で売ってます。命に関わる貴方の事を全て私が引き受けます」
「……そんな簡単に引き受けるものじゃねえ、命を粗末にするな」
抑揚の無い声に加えて表情も欠落した女の様子に桐生も只事では無い空気を感じ取るも、余りの責任感の無さに口を挟まざるを得ない様子。しかし、桐生のありきたりな言葉は女には微塵も響いていないようだった。
「周りを見ろ、ここには他にも女の立ちんぼが居る……命以外で弄ばれるぞ」
「それならそれで金を請求するまでです。この身体も、人生にも、未練も何も無いのです」
女の視線は変わらず桐生を見つめている。それを覗く桐生には女の瞳の中に暗い闇が見えた気がした。その闇に錦山の事が頭を掠める桐生。
「この世の全てが醜く、汚い……己にはそう見えたのです。ゴキブリが文字に擬態するような不快感……貴方にはきっと分からないのでしょうね」
兄弟分であった錦山が闇に飲まれるのを止められなかった桐生は、女の言葉がまるで槍のように急所を突くのを体感する。女はそんな桐生の様子など歯牙にも掛けないで佇むのみだった。
「分かった、俺が言い値で買ってやる……だから、俺の命に変えても救いたい男の為にも、お前の抱えるものを教えてくれ」
桐生の覚悟の眼差しを受け、女の方も渋々といった形で桐生の誘いを受ける。女を連れて話せる場所を探す二人の後ろ姿は、行方不明の片想い相手とも、命を賭けても救いたい男のものとも違い、遥に似た、小さくか弱い背中が桐生の横に並ぶのだった。