短編
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グランドにまた例の貸切男が現れたと報告があり、ホールに向かう真島。
今日は大人しくしているかと思いきや西谷1人にキャストの数が多い。よく見ると1人の女はグランドのキャストではなく一般客のようだ。
「おお真島くん!」
今日はちゃんと飲ましてもろてるでー、と酒を掲げて笑う西谷に呆れる真島。
「キャバレーに女連れか……何考えとんねん」
「ああ、ちゃうちゃう!」
と大袈裟に手を振り座席に寛ぐ西谷を半目で眺め、何がちゃうねん、と呟く。
「こん娘はそういうんちゃうねん、なあ?」
と女に顔を向ける。同じく女に視線をやると西谷の横にいるキャストを気にかける仕草をしている。そわそわと落ち着かない様子の女に、
「困ってんで、帰らしたらどうや」
と、言うと西谷ごと帰らせようとする真島。
「待ってや真島くぅん、こん娘はな、女が怖いねん」
「せやったらなんで、」
「せやけど、ワシがおらんのもアカンのや」
女の事情を説明する西谷。幼少期の母親からの虐待と、思春期の頃に女性からの性加害によって女性を怖がるようになった女。
「女を見ると暴れ散らかして手がつけれんかったらしいわ」
仰々しく身振り手振りを交えて説明する西谷。
そこからパニックを起こすようになった為、逃げ出した先で西谷が拾ったと言う。
「今ではましになったんやけど、一時期はすごかったんやでぇ!」
と、言うと座席の背もたれに腕を広げ、キャストと女の肩を抱くように寛ぐ西谷。何かに閃き膝を打つと、前屈みになり真島を見据える。
「そうや、真島くんがこん娘を教育したってや!」
と、妙案のように言う西谷にキャストは苦笑い。横で女は大慌てで西谷を止める。真島の眉間に皺がよる。面倒な事に巻き込まれた。
「何言ってんの!もう、すみません……」
平謝りする女にキャストは困り果てる。黙って見ていた真島がため息混じりに口を開く。
「……西谷から離れられんようなら無理やろ。本人が乗り気ちゃうやろしな」
「そこを真島くんがどうにかすんねん!」
食い下がる西谷に、どうにかってなんやねん、と頭に手をやりかぶりを振る真島。女も西谷の態度に困惑していたが西谷を止める様子はない。変わりたい、という心はあるようだ。
「ちょいと失礼すんで」
と、中座を告げる西谷に手を伸ばす女。便所や、と振り向き様に告げるとそのままいなくなる。残された女と真島とキャスト。真島は一旦キャストをはけさせる。座ってもええか、と女に聞き、頷く女を見て対面に座る。
「……私、捨てられちゃったのかな」
と俯き縮こまる女に、真島は西谷の言う女の依存心を理解する。
「……逃げるんなら今やで」
「そんな事出来るわけっ……分かってるの」
女は顔を上げたと思ったらまた俯き語り出す。西谷の存在に助けられている事、依存する心、重荷になりたくない事。冴島を思う自分の心にほんの少しだけ似ていて、ただ女と立場の違う真島。女の握り込み、白くなる指先に気持ちが痛いほど伝わる。
「自覚してんねやから、動くしかないやろ」
「それが出来ないから……」
今にも泣き出しそうな女に同情のあまり、身を乗り出そうとする真島。
「おっと……そこまでや真島くん」
帰ってきた西谷が真島を止める。どかりと真島の横に腰掛け、真島の肩に腕を乗せ引き寄せる。
「それはアカンわぁ、ワシの許可を得んと」
「そんなんちゃう」
何事か分からないという顔をする女を放って話を進める2人。
「で、どや……教育してくれるんか?ああ?」
横目で女を見遣る真島。女は困惑した表情をしているが真島に対しての怯えや拒絶はない。
「……アンタ次第や」
と、女に話を振ると、戸惑いながらも頷いた後、西谷の顔色を伺う女。その様子を見てふぅん、と鼻を鳴らし真島を見る西谷。
「スケコマシやのぉ、真島くん」
と言い笑う西谷に真島があ?と食ってかかるも西谷の飄々とした態度に流される。
「ほな、そういう事で宜しゅう」
と、言うと立ち上がり女を連れて店を出て行こうとする。真島もそれを見送りに行くが女は立ち止まり、真島の腕を自らの方へ引く。
「……っ!」
勢いのついたそれに前屈みになると耳元へ、
「真島くんなら、いいよ」
と囁くと腕を離し、真島に向き合う。呆気に取られる真島。一瞬の間、腕を下ろそうとする女の後ろに西谷がぬっと現れ、女を抱き締める。
「おいたはあかんで」
と女の耳元で言い、暗く濁った瞳で真島を睨んだかと思うといつもの顔に戻り、名残惜しそうにする女の腰を抱き、去っていく。西谷の一瞬の表情に女への執着の重さを理解した真島は、女の行く未来を想像し、肌が粟立つ思いだった。
今日は大人しくしているかと思いきや西谷1人にキャストの数が多い。よく見ると1人の女はグランドのキャストではなく一般客のようだ。
「おお真島くん!」
今日はちゃんと飲ましてもろてるでー、と酒を掲げて笑う西谷に呆れる真島。
「キャバレーに女連れか……何考えとんねん」
「ああ、ちゃうちゃう!」
と大袈裟に手を振り座席に寛ぐ西谷を半目で眺め、何がちゃうねん、と呟く。
「こん娘はそういうんちゃうねん、なあ?」
と女に顔を向ける。同じく女に視線をやると西谷の横にいるキャストを気にかける仕草をしている。そわそわと落ち着かない様子の女に、
「困ってんで、帰らしたらどうや」
と、言うと西谷ごと帰らせようとする真島。
「待ってや真島くぅん、こん娘はな、女が怖いねん」
「せやったらなんで、」
「せやけど、ワシがおらんのもアカンのや」
女の事情を説明する西谷。幼少期の母親からの虐待と、思春期の頃に女性からの性加害によって女性を怖がるようになった女。
「女を見ると暴れ散らかして手がつけれんかったらしいわ」
仰々しく身振り手振りを交えて説明する西谷。
そこからパニックを起こすようになった為、逃げ出した先で西谷が拾ったと言う。
「今ではましになったんやけど、一時期はすごかったんやでぇ!」
と、言うと座席の背もたれに腕を広げ、キャストと女の肩を抱くように寛ぐ西谷。何かに閃き膝を打つと、前屈みになり真島を見据える。
「そうや、真島くんがこん娘を教育したってや!」
と、妙案のように言う西谷にキャストは苦笑い。横で女は大慌てで西谷を止める。真島の眉間に皺がよる。面倒な事に巻き込まれた。
「何言ってんの!もう、すみません……」
平謝りする女にキャストは困り果てる。黙って見ていた真島がため息混じりに口を開く。
「……西谷から離れられんようなら無理やろ。本人が乗り気ちゃうやろしな」
「そこを真島くんがどうにかすんねん!」
食い下がる西谷に、どうにかってなんやねん、と頭に手をやりかぶりを振る真島。女も西谷の態度に困惑していたが西谷を止める様子はない。変わりたい、という心はあるようだ。
「ちょいと失礼すんで」
と、中座を告げる西谷に手を伸ばす女。便所や、と振り向き様に告げるとそのままいなくなる。残された女と真島とキャスト。真島は一旦キャストをはけさせる。座ってもええか、と女に聞き、頷く女を見て対面に座る。
「……私、捨てられちゃったのかな」
と俯き縮こまる女に、真島は西谷の言う女の依存心を理解する。
「……逃げるんなら今やで」
「そんな事出来るわけっ……分かってるの」
女は顔を上げたと思ったらまた俯き語り出す。西谷の存在に助けられている事、依存する心、重荷になりたくない事。冴島を思う自分の心にほんの少しだけ似ていて、ただ女と立場の違う真島。女の握り込み、白くなる指先に気持ちが痛いほど伝わる。
「自覚してんねやから、動くしかないやろ」
「それが出来ないから……」
今にも泣き出しそうな女に同情のあまり、身を乗り出そうとする真島。
「おっと……そこまでや真島くん」
帰ってきた西谷が真島を止める。どかりと真島の横に腰掛け、真島の肩に腕を乗せ引き寄せる。
「それはアカンわぁ、ワシの許可を得んと」
「そんなんちゃう」
何事か分からないという顔をする女を放って話を進める2人。
「で、どや……教育してくれるんか?ああ?」
横目で女を見遣る真島。女は困惑した表情をしているが真島に対しての怯えや拒絶はない。
「……アンタ次第や」
と、女に話を振ると、戸惑いながらも頷いた後、西谷の顔色を伺う女。その様子を見てふぅん、と鼻を鳴らし真島を見る西谷。
「スケコマシやのぉ、真島くん」
と言い笑う西谷に真島があ?と食ってかかるも西谷の飄々とした態度に流される。
「ほな、そういう事で宜しゅう」
と、言うと立ち上がり女を連れて店を出て行こうとする。真島もそれを見送りに行くが女は立ち止まり、真島の腕を自らの方へ引く。
「……っ!」
勢いのついたそれに前屈みになると耳元へ、
「真島くんなら、いいよ」
と囁くと腕を離し、真島に向き合う。呆気に取られる真島。一瞬の間、腕を下ろそうとする女の後ろに西谷がぬっと現れ、女を抱き締める。
「おいたはあかんで」
と女の耳元で言い、暗く濁った瞳で真島を睨んだかと思うといつもの顔に戻り、名残惜しそうにする女の腰を抱き、去っていく。西谷の一瞬の表情に女への執着の重さを理解した真島は、女の行く未来を想像し、肌が粟立つ思いだった。