短編
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建築をテーマにアニメ作品を作る事が決まった。
監督の指示のもと、近場で大掛かりな工事をする現場に取材に行く事に。ヘルメットを被り、監督につぎ、作画スタッフと製作関係者がカメラを片手に現場に訪れる。そこにクロッキー帳を構える男。
「いやー着手したばかりなのにすみません、今日は宜しくお願いします」
「おう、よろしゅうな。ええ宣伝になるやろ」
うちの名前はでっかく頼むで!と笑う男にそりゃあもう!と喜ぶ製作者達。
「重機も通るで、ワシが案内したる」
社長自ら案内するという。ついていく取材班。ここは神室町ヒルズという名の、大型ビルの建設を予定している。偶々着工から観れるのは取材においてありがたい。快く引き受けてくれた真島建設に感謝すると、社長である真島が設計予定図を見せてくれる。かなりの高層ビルで、ミレニアムタワーに勝るとも劣らない商業施設を予定しているらしい。
「かなり大掛かりになりそうですねー、設計方法など聞かせて頂ければ……」
「あ?そんなんネットで調べた通りや」
固まる取材班に苦笑いの製作陣。社長の話は荒唐無稽で、アニメを制作する側は面白く聞いていたが、プロデューサー達が不安がり、現場の人間にも話を聞こうと促す。
その取材陣の中に、真島の話を熱心にメモを取る男がいた。真島の目に留まるが、その男は他の人間に促され、現場の取材に向かっていく。去っていくその男の背中を見送る真島。
作業をする男に話しかける監督。
「忙しい中すみません、現場はどんな作業なんですか?」
「ああ?今忙しいの見てわかるだろ?後にしろ」
あくせく働く厳つい男が、機材を片手にひと睨みする。
「ああ、そうですよねすみません……」
おずおずと退がる監督に真島が、
「折角聞いてくれとんのやから答えたらんかい!手は止めんで、口で答えたらええんや!」
社長の無茶苦茶な要求に、怯えながら答える厳つい男。監督は作品作りの熱が入っている為、2人の会話の応酬に怯みながらも、話を聞けた事でメモを取る事に夢中になり、製作陣が苦い顔をしている事に気が付いていない。
「すみません……この会社、大丈夫ですかね?」
話しかけやすい、優しそうな顔をした男に話しかける製作プロデューサー。
「大丈夫かと言われると……ブラックではあります。特に社長の方針が……ですが、一度請け負ったからには、必ず成し遂げる社長なんです。俺達もそれを毎回見てますから!」
だから、大丈夫ですよ!と言う男に少しの安堵を見せる製作陣。
その様子をメモを取りながらスケッチする男。その男に気付くと、優しい顔の男が話しかける。
「俺の事も描いてるんすか?」
「あ、すみません!クロッキーをするのが癖で……見せられる物じゃないですけど……」
と、おずおず見せるそのクロッキー帳には先程の製作陣に微笑みかける男の顔。
「すごい上手いっすね!……そりゃ当然か。自分、西田って言います。よければこれ、貰ってもいいですか?」
「ざっくりですけど、こんなんでよければ!」
「うわー嬉しいなあ!母ちゃんも喜ぶだろうな……!」
絵を眺めながら感慨深く頷く西田に照れ臭くなる男。他のスケッチもしようと視線を移すと、男を眺めていた真島が近寄り、声をかける。
「他の奴らは写真撮ってんで?あんたは撮らんのかいな」
「あ……撮るんですけど、実物を見てスケッチもしたいんです。そこにしかない空気とか、質感だったりがあるので書き留めないと」
せかせかとスケッチに戻る男の様子に目を細めて眺める真島。
「ほぉん、仕事熱心な奴やなぁ」
と感心したように言う真島に、男は言葉を続ける。
「実は、この作品、監督に指名されて演出の初作品なんです。だから社長と同じく、成功させたくて!」
にかり、と笑う男に釣られ、口角の上がる真島。
「そら大事やな」
なんなら、作品に俺も出してや?と冗談を言う真島に笑いながら、それも面白そうですね!と返す男。
「そないに熱心なら、危なくない範囲で見せたるわ。いつでもとはいかんけどな」
「良いんですか?!嬉しいです、絵の勉強になります!」
喜ぶ男は手を差し出すと、名前を名乗った。
「◯◯と申します!」
「俺は真島吾朗や」
手を握り、答える真島。名刺を交換する2人。
そこから度々、取材と評した息抜きに訪れる本郷を受け入れる事になる真島建設。
「ほんまにずっと絵描いとるな」
「まぁそれが仕事ですから」
工事現場の端、積み上げられた建築材に腰を預けて立つ真島は男の手元を覗いていた。真島が用意した椅子に腰掛ける男。
「そや、作品見たったわ!見るのはガキん頃以来やで、最近のはあないに複雑なもんなんか」
大変やのう、と昔を思い出し物思いに耽るような顔をする真島に笑う。男の視線は建築材を運ぶ群衆と建築途中の現場に注がれている。男の手元にスラスラと浮かび上がるその姿に、魔法でも見ているような気分だった。徐に男が口を開く。
「今は別の作品もやってるんですよ」
「ほぉ、そらえらいこっちゃ。こっちの作品もやって、別の作品もやって……ごっちゃにならへんのか?」
真島の純粋な疑問に苦笑いを返す男。なるんですよねえ、と返すとクロッキー帳を閉じる。粗方の絵を描き終えたようだ。簡易椅子から立ち上がると真島と肩を並べる。
「でも、色々な絵が描けて楽しいですよ!何より、出来上がった作品にクレジットが載って、報われる瞬間が最高です」
笑う男の顔に晴々とした空のような雰囲気を読み取る真島。仕事が報われる瞬間の気持ち良さは何物にも代え難いだろう事は真島にも理解が出来た。
「そやな、クレジットに名前が載るんはええもんや……これでワシの会社も一躍有名会社やな!」
思うたより小さかったけどな、と笑う真島。男も真島の嬉しそうな顔に安心し、微笑み返す。
「小さくても嬉しいもんは嬉しいですよね!僕もこれからの真島建設の繁栄を応援してます」
「ハッなんや堅苦しいのう、俺もお前ん事応援しといたるわ」
少し気恥ずかしそうにする真島の顔に吹き出しながら笑う男。コロコロと軽やかに笑う男の様子に笑いすぎやろ!とつっこむ。危うく手が出そうになるが、真島建設の従業員と違いカタギの人間に手を出す訳にはいかなかった。
「真島さんって律儀な所ありますよね、良かったらこの仕事が終わっても仲良くしてくれませんか?」
なんて事なく告げる男に真島は少しの沈黙を返す。今はカタギに戻っていても本質は極道のまま。躊躇う真島に眉が下がる男。
「……やっぱり駄目、ですかね」
男のその顔に脈が跳ねた気がしたが、そっぽを向くとヘルメット越しに頭を掻く。
「……まあ、したらん事もないわ」
隣で笑う声が聞こえる。工事現場に目を向けている真島に寄り添うように並ぶ男。青空の下、微笑みながら作業員を眺める2人の間にはカラッとした空気が流れていた。
監督の指示のもと、近場で大掛かりな工事をする現場に取材に行く事に。ヘルメットを被り、監督につぎ、作画スタッフと製作関係者がカメラを片手に現場に訪れる。そこにクロッキー帳を構える男。
「いやー着手したばかりなのにすみません、今日は宜しくお願いします」
「おう、よろしゅうな。ええ宣伝になるやろ」
うちの名前はでっかく頼むで!と笑う男にそりゃあもう!と喜ぶ製作者達。
「重機も通るで、ワシが案内したる」
社長自ら案内するという。ついていく取材班。ここは神室町ヒルズという名の、大型ビルの建設を予定している。偶々着工から観れるのは取材においてありがたい。快く引き受けてくれた真島建設に感謝すると、社長である真島が設計予定図を見せてくれる。かなりの高層ビルで、ミレニアムタワーに勝るとも劣らない商業施設を予定しているらしい。
「かなり大掛かりになりそうですねー、設計方法など聞かせて頂ければ……」
「あ?そんなんネットで調べた通りや」
固まる取材班に苦笑いの製作陣。社長の話は荒唐無稽で、アニメを制作する側は面白く聞いていたが、プロデューサー達が不安がり、現場の人間にも話を聞こうと促す。
その取材陣の中に、真島の話を熱心にメモを取る男がいた。真島の目に留まるが、その男は他の人間に促され、現場の取材に向かっていく。去っていくその男の背中を見送る真島。
作業をする男に話しかける監督。
「忙しい中すみません、現場はどんな作業なんですか?」
「ああ?今忙しいの見てわかるだろ?後にしろ」
あくせく働く厳つい男が、機材を片手にひと睨みする。
「ああ、そうですよねすみません……」
おずおずと退がる監督に真島が、
「折角聞いてくれとんのやから答えたらんかい!手は止めんで、口で答えたらええんや!」
社長の無茶苦茶な要求に、怯えながら答える厳つい男。監督は作品作りの熱が入っている為、2人の会話の応酬に怯みながらも、話を聞けた事でメモを取る事に夢中になり、製作陣が苦い顔をしている事に気が付いていない。
「すみません……この会社、大丈夫ですかね?」
話しかけやすい、優しそうな顔をした男に話しかける製作プロデューサー。
「大丈夫かと言われると……ブラックではあります。特に社長の方針が……ですが、一度請け負ったからには、必ず成し遂げる社長なんです。俺達もそれを毎回見てますから!」
だから、大丈夫ですよ!と言う男に少しの安堵を見せる製作陣。
その様子をメモを取りながらスケッチする男。その男に気付くと、優しい顔の男が話しかける。
「俺の事も描いてるんすか?」
「あ、すみません!クロッキーをするのが癖で……見せられる物じゃないですけど……」
と、おずおず見せるそのクロッキー帳には先程の製作陣に微笑みかける男の顔。
「すごい上手いっすね!……そりゃ当然か。自分、西田って言います。よければこれ、貰ってもいいですか?」
「ざっくりですけど、こんなんでよければ!」
「うわー嬉しいなあ!母ちゃんも喜ぶだろうな……!」
絵を眺めながら感慨深く頷く西田に照れ臭くなる男。他のスケッチもしようと視線を移すと、男を眺めていた真島が近寄り、声をかける。
「他の奴らは写真撮ってんで?あんたは撮らんのかいな」
「あ……撮るんですけど、実物を見てスケッチもしたいんです。そこにしかない空気とか、質感だったりがあるので書き留めないと」
せかせかとスケッチに戻る男の様子に目を細めて眺める真島。
「ほぉん、仕事熱心な奴やなぁ」
と感心したように言う真島に、男は言葉を続ける。
「実は、この作品、監督に指名されて演出の初作品なんです。だから社長と同じく、成功させたくて!」
にかり、と笑う男に釣られ、口角の上がる真島。
「そら大事やな」
なんなら、作品に俺も出してや?と冗談を言う真島に笑いながら、それも面白そうですね!と返す男。
「そないに熱心なら、危なくない範囲で見せたるわ。いつでもとはいかんけどな」
「良いんですか?!嬉しいです、絵の勉強になります!」
喜ぶ男は手を差し出すと、名前を名乗った。
「◯◯と申します!」
「俺は真島吾朗や」
手を握り、答える真島。名刺を交換する2人。
そこから度々、取材と評した息抜きに訪れる本郷を受け入れる事になる真島建設。
「ほんまにずっと絵描いとるな」
「まぁそれが仕事ですから」
工事現場の端、積み上げられた建築材に腰を預けて立つ真島は男の手元を覗いていた。真島が用意した椅子に腰掛ける男。
「そや、作品見たったわ!見るのはガキん頃以来やで、最近のはあないに複雑なもんなんか」
大変やのう、と昔を思い出し物思いに耽るような顔をする真島に笑う。男の視線は建築材を運ぶ群衆と建築途中の現場に注がれている。男の手元にスラスラと浮かび上がるその姿に、魔法でも見ているような気分だった。徐に男が口を開く。
「今は別の作品もやってるんですよ」
「ほぉ、そらえらいこっちゃ。こっちの作品もやって、別の作品もやって……ごっちゃにならへんのか?」
真島の純粋な疑問に苦笑いを返す男。なるんですよねえ、と返すとクロッキー帳を閉じる。粗方の絵を描き終えたようだ。簡易椅子から立ち上がると真島と肩を並べる。
「でも、色々な絵が描けて楽しいですよ!何より、出来上がった作品にクレジットが載って、報われる瞬間が最高です」
笑う男の顔に晴々とした空のような雰囲気を読み取る真島。仕事が報われる瞬間の気持ち良さは何物にも代え難いだろう事は真島にも理解が出来た。
「そやな、クレジットに名前が載るんはええもんや……これでワシの会社も一躍有名会社やな!」
思うたより小さかったけどな、と笑う真島。男も真島の嬉しそうな顔に安心し、微笑み返す。
「小さくても嬉しいもんは嬉しいですよね!僕もこれからの真島建設の繁栄を応援してます」
「ハッなんや堅苦しいのう、俺もお前ん事応援しといたるわ」
少し気恥ずかしそうにする真島の顔に吹き出しながら笑う男。コロコロと軽やかに笑う男の様子に笑いすぎやろ!とつっこむ。危うく手が出そうになるが、真島建設の従業員と違いカタギの人間に手を出す訳にはいかなかった。
「真島さんって律儀な所ありますよね、良かったらこの仕事が終わっても仲良くしてくれませんか?」
なんて事なく告げる男に真島は少しの沈黙を返す。今はカタギに戻っていても本質は極道のまま。躊躇う真島に眉が下がる男。
「……やっぱり駄目、ですかね」
男のその顔に脈が跳ねた気がしたが、そっぽを向くとヘルメット越しに頭を掻く。
「……まあ、したらん事もないわ」
隣で笑う声が聞こえる。工事現場に目を向けている真島に寄り添うように並ぶ男。青空の下、微笑みながら作業員を眺める2人の間にはカラッとした空気が流れていた。