短編
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帰りが遅くなる女。終電に間に合い、人がそこそこいる電車に揺られながら、電車の暖かさに少しうとうとするも、足早に帰路に着く。
寒さが目立つようになってきた今日この頃。ついこの間まで汗を噴き出しながら外を歩いていたかと思えば、長袖でないと肌寒いという温度差に体も心も参っていた。
「遅くなっちゃったー……怒られるかな」
誰もいない夜道、街灯だけが道を照らす住宅街を歩く女。相手に連絡済みなものの、既読や電話が繋がらず、迎えにも来てくれない。
「ちょっと遅くなったぐらいでそんなに怒らなくても……」
1人で夜道を歩く道すがら、暗闇の恐怖とそれに打ち勝つ為の興奮作用で独り言が多くなる。
誰も見ていない、と少し気の大きくなる女。連絡が来ていやしないか、と歩きスマホをし始める。スマホの光源で顔が照らされる女。その画面の相手は既読が付いている。
「……なんだ、見てるんじゃん」
と、後ろからカラン、と転がる音。
少し肩を跳ねさせ振り返るも、転がる缶以外に何もない。
「びっくりしたぁ」
早くなる鼓動に胸を抑える女は、スマホを閉じると足早に自宅へ向けて歩き出す。
すると、後ろからついてくる足音。先程まで何もなかった筈の背後が気になる女。
自分のヒールの音が反響しているだけで、人なんていないと信じながら歩くも、曲がる先々でついてくる足音。相手に連絡を、とはやる気持ちでスマホを開き電話をかける。
「真島さん!今どこ?!」
「お、なんや。今向かっとるわ」
「じゃあこれ真島さんの足音?!」
今だについてくる足音に最早走りかけている女。真島の返答によっては振り返って殴りかかってもいい。
「何いうとるんや?まだついてへんで」
肝の冷える女。走りづらいヒールで全力疾走する。足音がついてきているか、家への道が合っているか、最早わからなくなっている。
「いつものゾンビドッキリじゃないの?!」
「あれメイク大変やねん、そないにやらへんわ」
「今そういうのいいから!」
「……今、誰か居ったか?」
真島の返答に思わず足を止めてしまう。
「……ちょっと、やめてよそういうの」
無音になる電話に不安が増す。気が付けば家への道から外れていた女は、辺りを見回し真島に助けを乞う。
「……ねぇ真島さん?真島さんってば!」
気が付けば足音も消えていて、何処かも分からない住宅街に1人。肌寒さが女の不安を増幅させ、鳥肌が立つ。
スマホの表示を見ると通話中。しかし、相手からの返事が途絶えてしまった。電波の悪い場所にでもいるのだろうか、だとしたら通話自体切れる筈、と道を彷徨く女。真島への通話は切らず、呼びかけながら位置情報で自宅への道を検索し、なんとか戻る。
「やっと帰れる……」
自宅への道に戻り、近くまで来た女。少し街灯も増え、安心感に気も抜ける。スマホを閉じ、歩き始めるとふと、前をよぎる猫が1匹。それに気を取られ、猫を視線で追いかけると耳元で、
「みぃつけた」
思わず耳を抑えて振り向く女。そこには真島の姿。
「もー!なんだ早く言ってくださいよー!」
「しーっ!夜中やで静かにせえや」
口に人差し指を当て、ニヤニヤと笑う真島。怒りながらも2人で女の自宅に向かう2人。
「そや、煙草吸うてから行くわ」
と、自宅の下で別れる2人。アパートにある女の部屋は壁紙が黄色くなるのを懸念して禁煙にしていた。
「……分かりました」
しかし、真島はいつも換気扇の下で吸っていたはず。今日はそんな気分なのか、と気にせず家に入る。自宅の電気をつけて、カーテンを閉める。手を洗う為に洗面所へ向かうと玄関が騒がしい。
「◯◯ー!帰ってんかー!」
「はいはーい!」
部屋に戻ると外にいた真島が慌てた様子で入ってくる。
「どないしたんや、急に連絡取れへんくなって!」
「え、連絡しましたし、今、下で煙草吸ってましたよね?」
「何いうとるんや、今来たばっかやで!」
え、とお互いに顔を見合わせる2人。訳がわからない真島に、女は途端に顔が青ざめていく。
真島にしがみつき、皺になるほど握り込むと、
「今日は帰らないで……」
「お、おう……」
ドギマギする真島をおいて、女は真島に抱き付くと顔を埋める。
耳にこびりついたあの声を振り払うように、真島の胸に頭を擦り付け、真島の存在を両の腕で確かめるのだった。
女は恐怖を払拭する為に真島を求め、それに喜び応える真島と熱い夜を過ごす2人。いつもと違い、大いに盛り上がった夜を、満足げに翌日まで過ごす真島。その裏で、組員達が女のアパートを張り込んでいた。その実、真島のおふざけに付き合わされていた女と組員達。工作員である舎弟は女への罪悪感で胸がいっぱいになり、寝不足の顔で警備を続けるのだった。
寒さが目立つようになってきた今日この頃。ついこの間まで汗を噴き出しながら外を歩いていたかと思えば、長袖でないと肌寒いという温度差に体も心も参っていた。
「遅くなっちゃったー……怒られるかな」
誰もいない夜道、街灯だけが道を照らす住宅街を歩く女。相手に連絡済みなものの、既読や電話が繋がらず、迎えにも来てくれない。
「ちょっと遅くなったぐらいでそんなに怒らなくても……」
1人で夜道を歩く道すがら、暗闇の恐怖とそれに打ち勝つ為の興奮作用で独り言が多くなる。
誰も見ていない、と少し気の大きくなる女。連絡が来ていやしないか、と歩きスマホをし始める。スマホの光源で顔が照らされる女。その画面の相手は既読が付いている。
「……なんだ、見てるんじゃん」
と、後ろからカラン、と転がる音。
少し肩を跳ねさせ振り返るも、転がる缶以外に何もない。
「びっくりしたぁ」
早くなる鼓動に胸を抑える女は、スマホを閉じると足早に自宅へ向けて歩き出す。
すると、後ろからついてくる足音。先程まで何もなかった筈の背後が気になる女。
自分のヒールの音が反響しているだけで、人なんていないと信じながら歩くも、曲がる先々でついてくる足音。相手に連絡を、とはやる気持ちでスマホを開き電話をかける。
「真島さん!今どこ?!」
「お、なんや。今向かっとるわ」
「じゃあこれ真島さんの足音?!」
今だについてくる足音に最早走りかけている女。真島の返答によっては振り返って殴りかかってもいい。
「何いうとるんや?まだついてへんで」
肝の冷える女。走りづらいヒールで全力疾走する。足音がついてきているか、家への道が合っているか、最早わからなくなっている。
「いつものゾンビドッキリじゃないの?!」
「あれメイク大変やねん、そないにやらへんわ」
「今そういうのいいから!」
「……今、誰か居ったか?」
真島の返答に思わず足を止めてしまう。
「……ちょっと、やめてよそういうの」
無音になる電話に不安が増す。気が付けば家への道から外れていた女は、辺りを見回し真島に助けを乞う。
「……ねぇ真島さん?真島さんってば!」
気が付けば足音も消えていて、何処かも分からない住宅街に1人。肌寒さが女の不安を増幅させ、鳥肌が立つ。
スマホの表示を見ると通話中。しかし、相手からの返事が途絶えてしまった。電波の悪い場所にでもいるのだろうか、だとしたら通話自体切れる筈、と道を彷徨く女。真島への通話は切らず、呼びかけながら位置情報で自宅への道を検索し、なんとか戻る。
「やっと帰れる……」
自宅への道に戻り、近くまで来た女。少し街灯も増え、安心感に気も抜ける。スマホを閉じ、歩き始めるとふと、前をよぎる猫が1匹。それに気を取られ、猫を視線で追いかけると耳元で、
「みぃつけた」
思わず耳を抑えて振り向く女。そこには真島の姿。
「もー!なんだ早く言ってくださいよー!」
「しーっ!夜中やで静かにせえや」
口に人差し指を当て、ニヤニヤと笑う真島。怒りながらも2人で女の自宅に向かう2人。
「そや、煙草吸うてから行くわ」
と、自宅の下で別れる2人。アパートにある女の部屋は壁紙が黄色くなるのを懸念して禁煙にしていた。
「……分かりました」
しかし、真島はいつも換気扇の下で吸っていたはず。今日はそんな気分なのか、と気にせず家に入る。自宅の電気をつけて、カーテンを閉める。手を洗う為に洗面所へ向かうと玄関が騒がしい。
「◯◯ー!帰ってんかー!」
「はいはーい!」
部屋に戻ると外にいた真島が慌てた様子で入ってくる。
「どないしたんや、急に連絡取れへんくなって!」
「え、連絡しましたし、今、下で煙草吸ってましたよね?」
「何いうとるんや、今来たばっかやで!」
え、とお互いに顔を見合わせる2人。訳がわからない真島に、女は途端に顔が青ざめていく。
真島にしがみつき、皺になるほど握り込むと、
「今日は帰らないで……」
「お、おう……」
ドギマギする真島をおいて、女は真島に抱き付くと顔を埋める。
耳にこびりついたあの声を振り払うように、真島の胸に頭を擦り付け、真島の存在を両の腕で確かめるのだった。
女は恐怖を払拭する為に真島を求め、それに喜び応える真島と熱い夜を過ごす2人。いつもと違い、大いに盛り上がった夜を、満足げに翌日まで過ごす真島。その裏で、組員達が女のアパートを張り込んでいた。その実、真島のおふざけに付き合わされていた女と組員達。工作員である舎弟は女への罪悪感で胸がいっぱいになり、寝不足の顔で警備を続けるのだった。