はじまりの日2
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そして、現在に至る。
「そのほうが安全だから」と説得されて、私の身体は宙を舞うこととなったのだ。
私はレオナルドさんに抱き抱えられてビル群の屋上を次から次へと飛び回っていた。
目の前に広がるのは、普段よりずっと小さい車や、人の群れ。
まるで、パノラマを見ているようだ。
彼らの家があった地下から下水道(!)を通ってマンホールから地上に出たはいいが、そこでレオナルドさんは言ったのだ。
「屋上を飛んだほうが安全だから」と。
そう言ったレオナルドさんに反論する間もなく、私はあっという間にその両腕に抱き抱えられた。
ーこれって、お姫様抱っこ、よね……
自分の発想に、ほんの少し頬が熱くなる。
最初は怖い気持ちもあったが、屋上に登った途端それは正反対の気持ちへと変化した。
空が、近い。
上を見上げればそこには、少ないながらも星々が輝いていて。
思わず、満天の星が煌めいていた日本の実家から見る夜空を思い出した。
「怖かったら言ってくれ。スピード、落とすから」
ポツリと、レオナルドさんが口にした。
その声からは全く息切れなどは感じられない。
「はい、大丈夫です。風が気持ちいいし」
「それはよかった」
レオナルドさんが、笑って答えた。
それから少しの間、お互い無言で飛び続けていた。
今日は本当にいろんなことがあった。
暴漢に襲われかけたし、でもそれがきっかけでみんなと出会うことができた。
人生って、本当にわからないものなんだ。
日本を出て半年、まさかこんな日がこようとは夢にも思わなかった。
「こんな経験、初めてです」
お姫様抱っこで屋上を飛ぶ日がこようなんて、誰が思っただろうか。
「そりゃあそうだろうね」
ポツリと漏らした一言に、苦笑を交えてレオナルドさんが返す。
「あ」
と、レオナルドさんが急停止した。
「どうかしたんですか?」
「……せっかくだから、ちょっとだけ寄り道しようか」
そう呟いて、レオナルドさんは一際高いビルの屋上へとジャンプした。
「うわ……」
目の前に広がる景色に、心を奪われた。
レオナルドさんは、そっと私を屋上へ降ろすと、そのまま空を見上げた。
そこには、漆黒の闇に浮かぶ、完全な満月。
その形を遮るものが何もない状態で見るそれは、あまりに偉大で、そして怖いくらいに美しかった。
思わず、感激で身体がぶるりと震える。
「綺麗……」
「このビルからだと一番よく見えるんだ。自由に外出できるわけじゃないから、いつも見られるわけじゃないんだけど……。今日が確か満月だったと思ったから。今日はいろいろあって気持ちも落ち着かないかと思って……。その、せっかくだから」
「ええ、ありがとうございます。見られて、嬉しい」
左に立つレオナルドさんを見つめる。
その顔は月明かりに照らされて、なんだかとても神秘的だ。
「こんな素敵なもの、はじめて見ました。ありがとう」
「うん?……いや、そんな、礼を言われるほどのものじゃないけど」
目が合った途端に照れだす。
他の兄弟たちと一緒の時より、心なしか幼く見える気がした。
それがなんだか可笑しくて、思わずふふっと笑みを漏らしてしまう。
「なんだい?」
「いいえ。あなた方に逢えて、本当に良かったなあと思って」
素直にそう思ったから口にしただけなのに。
照れからか、彼はぷいっとあらぬ方向を向いてしまった。
「に、日本人はおとなしくてあまり率直に気持ちを口にしない国民性があるってスプリンター先生から聞いたことがあるんだけれど……その、君はどうやら違うらしいな」
「そう、ですかね?
「そう、思うけどなあ」
なんとなくおかしくなって、互いに顔を見合わせてふふっと笑い合った。
ひゅるり、と風が身体を撫でる。
少しほてった頬に、それはとても心地よく感じられた。
「……そろそろ行こうか。あまり遅くなっても良くないから」
「はい。お願いします」
レオナルドさんの腕が、再び軽々と私を抱き上げる。
そのまま、隣のビルへと飛び移った。
++++++++++
眼下に広がる風景が、見慣れたものとなってきた。
「そろそろ……です。あ、あの6階建てのアパートメント、あそこの5階です」
「え、君のアパートって、あそこなのか…?」
少し驚いたふうに、レオナルドさんが呟いた。
5階の外階段に、ふんわりと着地する。
そういえば窓の鍵は……と思ったが、情けないことに鍵は開いたまま。
今日はこのまま室内に入れるからありがたいものの、もう少し防犯意識をしっかりしなくちゃ。
ふとレオナルドさんを見ると、上階をしきりに気にして何度も見上げている。
「上が、気になるんですか?」
「えっ?いや……実は友人が、ここに住んでるものだからさ」
「そうなんですか、私も友達がここに住んでるんですよ」
「そうなのか、それじゃあ安心だな」
「ええ、仕事関係で知り合った人なんですけど、このアパートだって彼女に紹介してもらったからはいれたようなもので。エイプリルさんっていって、本当に頼りにさせてもらってるんです」
「そうなのか……って、え、エイプリルっ!?エイプリルってまさか、エイプリル・オニール?」
「……なんで、知ってるんですか……?!」
お互いだらしないくらい口をあんぐりと開けたまま、しばらく固まってしまった。
その後、我に返った私がエイプリルさんとの出会いやこれまでの付き合いを説明した。
レオナルドさんも、これまでの彼女との付き合いを簡単に説明してくれる。
「なんだ、君とは本当に縁があったんだな」
「本当。びっくりしちゃった」
2人して、カラカラと笑い合う。
「明日みんなに話してやってくれるかな。きっとびっくりするから」
「そうですね、ふふっ、楽しみ!」
その後、明日のマンホールへのお迎え時間を確認してレオナルドさんと別れた。
そのまま浴室へ向かう。
レオナルドさん、ラファエロさん、ドナテロさんに、ミケランジェロさん、そして……スプリンター先生。
今日みんなと会えていなかったら、ホームシックになっていたかもしれない。
あんな怖いことがあったんだもの。
でも、今心を満たしているのは今日のみんなの表情。驚いたり喜んだり……。
これからのニューヨーク生活が、ますます楽しくなりそうな、そんな予感を胸に抱きつつ私は浴室へ足を踏み入れた。
「そのほうが安全だから」と説得されて、私の身体は宙を舞うこととなったのだ。
私はレオナルドさんに抱き抱えられてビル群の屋上を次から次へと飛び回っていた。
目の前に広がるのは、普段よりずっと小さい車や、人の群れ。
まるで、パノラマを見ているようだ。
彼らの家があった地下から下水道(!)を通ってマンホールから地上に出たはいいが、そこでレオナルドさんは言ったのだ。
「屋上を飛んだほうが安全だから」と。
そう言ったレオナルドさんに反論する間もなく、私はあっという間にその両腕に抱き抱えられた。
ーこれって、お姫様抱っこ、よね……
自分の発想に、ほんの少し頬が熱くなる。
最初は怖い気持ちもあったが、屋上に登った途端それは正反対の気持ちへと変化した。
空が、近い。
上を見上げればそこには、少ないながらも星々が輝いていて。
思わず、満天の星が煌めいていた日本の実家から見る夜空を思い出した。
「怖かったら言ってくれ。スピード、落とすから」
ポツリと、レオナルドさんが口にした。
その声からは全く息切れなどは感じられない。
「はい、大丈夫です。風が気持ちいいし」
「それはよかった」
レオナルドさんが、笑って答えた。
それから少しの間、お互い無言で飛び続けていた。
今日は本当にいろんなことがあった。
暴漢に襲われかけたし、でもそれがきっかけでみんなと出会うことができた。
人生って、本当にわからないものなんだ。
日本を出て半年、まさかこんな日がこようとは夢にも思わなかった。
「こんな経験、初めてです」
お姫様抱っこで屋上を飛ぶ日がこようなんて、誰が思っただろうか。
「そりゃあそうだろうね」
ポツリと漏らした一言に、苦笑を交えてレオナルドさんが返す。
「あ」
と、レオナルドさんが急停止した。
「どうかしたんですか?」
「……せっかくだから、ちょっとだけ寄り道しようか」
そう呟いて、レオナルドさんは一際高いビルの屋上へとジャンプした。
「うわ……」
目の前に広がる景色に、心を奪われた。
レオナルドさんは、そっと私を屋上へ降ろすと、そのまま空を見上げた。
そこには、漆黒の闇に浮かぶ、完全な満月。
その形を遮るものが何もない状態で見るそれは、あまりに偉大で、そして怖いくらいに美しかった。
思わず、感激で身体がぶるりと震える。
「綺麗……」
「このビルからだと一番よく見えるんだ。自由に外出できるわけじゃないから、いつも見られるわけじゃないんだけど……。今日が確か満月だったと思ったから。今日はいろいろあって気持ちも落ち着かないかと思って……。その、せっかくだから」
「ええ、ありがとうございます。見られて、嬉しい」
左に立つレオナルドさんを見つめる。
その顔は月明かりに照らされて、なんだかとても神秘的だ。
「こんな素敵なもの、はじめて見ました。ありがとう」
「うん?……いや、そんな、礼を言われるほどのものじゃないけど」
目が合った途端に照れだす。
他の兄弟たちと一緒の時より、心なしか幼く見える気がした。
それがなんだか可笑しくて、思わずふふっと笑みを漏らしてしまう。
「なんだい?」
「いいえ。あなた方に逢えて、本当に良かったなあと思って」
素直にそう思ったから口にしただけなのに。
照れからか、彼はぷいっとあらぬ方向を向いてしまった。
「に、日本人はおとなしくてあまり率直に気持ちを口にしない国民性があるってスプリンター先生から聞いたことがあるんだけれど……その、君はどうやら違うらしいな」
「そう、ですかね?
「そう、思うけどなあ」
なんとなくおかしくなって、互いに顔を見合わせてふふっと笑い合った。
ひゅるり、と風が身体を撫でる。
少しほてった頬に、それはとても心地よく感じられた。
「……そろそろ行こうか。あまり遅くなっても良くないから」
「はい。お願いします」
レオナルドさんの腕が、再び軽々と私を抱き上げる。
そのまま、隣のビルへと飛び移った。
++++++++++
眼下に広がる風景が、見慣れたものとなってきた。
「そろそろ……です。あ、あの6階建てのアパートメント、あそこの5階です」
「え、君のアパートって、あそこなのか…?」
少し驚いたふうに、レオナルドさんが呟いた。
5階の外階段に、ふんわりと着地する。
そういえば窓の鍵は……と思ったが、情けないことに鍵は開いたまま。
今日はこのまま室内に入れるからありがたいものの、もう少し防犯意識をしっかりしなくちゃ。
ふとレオナルドさんを見ると、上階をしきりに気にして何度も見上げている。
「上が、気になるんですか?」
「えっ?いや……実は友人が、ここに住んでるものだからさ」
「そうなんですか、私も友達がここに住んでるんですよ」
「そうなのか、それじゃあ安心だな」
「ええ、仕事関係で知り合った人なんですけど、このアパートだって彼女に紹介してもらったからはいれたようなもので。エイプリルさんっていって、本当に頼りにさせてもらってるんです」
「そうなのか……って、え、エイプリルっ!?エイプリルってまさか、エイプリル・オニール?」
「……なんで、知ってるんですか……?!」
お互いだらしないくらい口をあんぐりと開けたまま、しばらく固まってしまった。
その後、我に返った私がエイプリルさんとの出会いやこれまでの付き合いを説明した。
レオナルドさんも、これまでの彼女との付き合いを簡単に説明してくれる。
「なんだ、君とは本当に縁があったんだな」
「本当。びっくりしちゃった」
2人して、カラカラと笑い合う。
「明日みんなに話してやってくれるかな。きっとびっくりするから」
「そうですね、ふふっ、楽しみ!」
その後、明日のマンホールへのお迎え時間を確認してレオナルドさんと別れた。
そのまま浴室へ向かう。
レオナルドさん、ラファエロさん、ドナテロさんに、ミケランジェロさん、そして……スプリンター先生。
今日みんなと会えていなかったら、ホームシックになっていたかもしれない。
あんな怖いことがあったんだもの。
でも、今心を満たしているのは今日のみんなの表情。驚いたり喜んだり……。
これからのニューヨーク生活が、ますます楽しくなりそうな、そんな予感を胸に抱きつつ私は浴室へ足を踏み入れた。
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