はじまりの日1
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体が、暖かなものに包まれるのがわかった。穏やかで心地いい揺れ。
ーなんだか、昔おばあちゃんに眠る前昔話してもらってた時みたい……すごく、穏やかで、緩やかで……優しい……。
ーおばあちゃん、元気かな……今年で、何歳になるんだっけ……ねえ、おばあちゃん……
「おばあちゃん……」
目を開けると、目の前に見慣れない天井が広がっている。
レンガ造りのそれは少しすすけていて、やや黒ずんでいる。
はて。
うちはクリーム色の壁紙だった気がするのだが。
ーいつ、こんなに汚しちゃったのかな……
「おばあちゃん?寝ぼけてるのかな……っと、あーーーっ!目が覚めたー!!」
天井をぼんやりと見つめていた私の顔を覗き込むように、ぬっと現れたのは緑色。
橙色の鉢巻をしていて、そこから覗く、くりくりした瞳がじっと自分を見つめている。
「元気ー?大丈夫〜?よかったよう、レオが君を連れてきたときは死んじゃってるのかと思ったし、心配したんだよ〜!あーっでも目が覚めてよかった!」
「ね?」とにっこり笑うそれは、どうみても、何回見ても、亀で。
「カメ……」
そっと呟くと、気を失う前の映像が急にフラッシュバックした。全身真緑で、青い鉢巻をした……
「ああああーーーーーーっ!!」
私のあまりの大声に、目の前の橙亀がソファの背から転げ落ちた。
どうやら、自分はソファに横になっているらしい。
しかし、今はそんな現状把握をしている場合ではない。
「緑の人が!いやっ!!」
えもしれぬ恐怖に襲われ、ソファから背を起こした。
防衛本能からか、かけられていた薄手の毛布を咄嗟に体に巻き付ける。
ソファの背を隔てて、目の前には橙亀。
「カメ!?亀!!」
ー亀が立っている!は、鉢巻までしている!!
あまりの驚きで正常思考ができない。
ここは夢?幻?
もう、なんなの!!
「誰なの!!」
恐怖で声が震える。
しかし、目の前の橙亀はあっけらかんと、
「ねね、落ち着いてね、もう大丈夫だからさ!そう、オイラたち亀!!でも話せるし歩けるし、戦える亀なんだよ〜すごいでしょ?」
「ね?」と自分を指差しにっこり笑う。
頭に巻かれた橙色の鉢巻が、やけに似合っていて、正直、キュートだと思った。
いや、そんな方は置いといて。
ニコニコと自分を見つめる橙亀から目を離さないまま、お尻だけで後ずさったときだった。
「おお、目が覚めたか。お嬢さん」
頭上にハテナマークをあふれさせ、顔に恐怖を貼り付けているだろう私に、また新たな声がふってきた。
「よかったな」
「ご対面だね〜」
「……大丈夫か……?」
次々に聞こえる声。
そして現れた面々に思考回路が完全にショートしてしまった。
奥から現れたのは、二足歩行の鼠に、橙亀とおそろいで色違いの鉢巻を巻いた赤亀、紫亀、そして青亀。
もう、頭がどうにかなってしまいそう。
口をパクパクさせている私をよそに、
「マイキーったら。挨拶がまだじゃなーい」
紫亀が、橙亀をたしなめる。
「わしはスプリンター。この息子たちの父であり、また武道の師でもある」
鼠がつと一歩前へ出て、非常に丁寧なお辞儀をしてくれた。
つられてこちらもぎくしゃくと居ずまいを正す。
「驚かせてすまなんだ。わしたちはそなたに危害を加えるものでもないし、何も求めるものでもない。少しだけ、話を聞いてくれるかな?」
その見た目に驚きすぎてわからなかったが、彼らの表情、声音はみな穏やかだ。
淡々と、ゆっくりと語るその口調にも、こちらへの気遣いを感じ取ることができた。
「わ、わか、わかりました」
鼠をはじめとする穏やかな表情に負けて、守るように体に巻きつけていた毛布を剥がし背筋をぴん、と伸ばした。
「は、話を、聞かせて、いただきます」
どもりながらやっとこで、それだけを口にした。
「ありがとう、お嬢さん」
鼠……いや、スプリンターさん、が、にっこりと笑う。
「実はだね……」
「オーイラはミケランジェロ!怪我しなくてよかったねえ!」
早速話をしようと口を開いたスプリンターさんを出し抜き、先ほどの橙亀が、スプリンターさんと赤亀の間からにゅっと顔を突き出し、私の目の前で「ニイ〜」と笑って見せた。
「あ、オイラのことはマイキーって呼んでね。よろしくぅ!」
「こらマイキー!先生に失礼だろう!お客さんだって驚くじゃないか!」
「ほんとにマイキーはいつでもどこでも、マイキーだねえ……」
「ったく、もうちょっと落ち着けねぇのかお前は」
だってだって、お話ししたかったんだもん、とぶうたれてる橙亀、もといミケランジェロ……さんをよそに、残りの3亀はあーだこーだと言い合っている。
「……」
言い合いを続ける彼らをみていると、次第に肩の力が抜けていくのがわかった。
彼らは明らかに人間ではないようだけれど、悪い人(亀?)ではないよう……だ。
それに、私は男たちに襲われていたはず。
けど今無事にこうしていられるということは、彼らが助けてくれたのではないだろうか…?
自分の手や足をそれとなく動かしてみると、どこも怪我はしていない様子だし。
意識を手放す前に目に焼きついた映像を思い返してみる。確か、そう、青い鉢巻が……
「どうした、お嬢さん」
急に唇に手を当て下を向いてしまった自分を心配してか、スプリンターさんが怪訝な声を出す。
4亀たちも言い合っていた口を閉じて、心配そうに私を見つめていた。
「いえ……あ、あの、もしかして、私を、助けてくださった……んでしょうか」
おそるおそる、5人を見渡す。青亀に視線を止め、
「たぶん、あなたが……?」
私と周りの4人に見つめられて青亀はちょっと居心地が悪そうにしていたが、やがてぴしっと背筋を伸ばして答えた。
「ああ、そうだ。……俺はレオナルド 。……無事でよかった」
そうはにかんだレオナルド……さんに、私も微笑を返す。
じんわりと、心が温かくなる。
こほん、と軽く咳払いをして、続けた。
「……私はヤエコと言います。半年前に日本からNYに来て仕事をしています。……助けてくれて、本当にありがとうございました。えっ……と、お話を、聞かせていただけますか?」
素直な気持ちを口にした。
なのに、一様に5人は黙りこくってしまって……次の瞬間、レオナルドさんを除く3人の亀たちが弾かれたように笑い出した。
「あははっ、君って喋り方レオそっくり……っ!」
「兄弟みたいだ……なんつー固ぇ挨拶……レオそのものじゃねえか」
「なかなかなシンクロ具合だよねえ?」
3人はどつきあいながら仲良くひーひーともんどりうっている。
ーえ、私、変なこと言ったかな……?
「あの……」
「あー、君は変なことは言ってないから安心していいよ。……コホン。で、このソファにもたれて笑ってる紫色がドナテロ。涙流してもだえてる赤いのがラファエロ」
ちょっぴり顔を赤くし、恥ずかしそうに咳払いしてレオナルドさんが指し示すと、
「よろしくね」
「頼むぜ」
紫のドナテロさん、赤のラファエロさんがひーひー言いながら片手を挙げて挨拶してくれた。
「こんな息子たちじゃがの、これも何かの縁じゃろう。どうぞよろしく、ヤエコどの」
3人の笑いが収まったあと、スプリンターさんが、自分たちはミュータンジェンという物質をかぶったせいで人間同様の知能を得、同様の暮らしができていること、普段は忍術の修行に励み人目を忍んでNYにはびこる悪を退治しているのだが、今日たまたま外に出ていたレオナルドさんが暴漢に襲われかけた私を助けてくれたこと……諸々を説明してくれた。
「そう、なんだ……」
「そうなんだよう!でもほんっとよかったよねえ、無事で!」
いつの間にかソファの上で私の右隣に陣取ったミケランジェロさんが、にっこりと笑う。
「本当。レオナルドさんに感謝しなくちゃ。……本当にありがとうございました」
ソファの左端に座ったレオナルドさんを見やると、彼は少し赤くなっている。
「いや、俺は当たり前のことをしただけだから。無事で何よりだ」
「あ、レオ赤くなってるー。ひょっとして一目惚れしたとかー?いやだ、えっちぃ」
「あーレオってむっつりだよね。むっつりは良くないと思うなあ、僕」
「おお、コイツって確かにむっつりだよな。タチが悪りぃ」
再び始まった彼らの言い合いに、目が点になる。
「……お前に言われたくはないな」
「ああ?何だって?この野郎」
「また始まったよう。ドニー、何とかしてよー」
瞬間湯沸かし器のように、一瞬にしてヒートアップしたレオナルドさんとラファエロさんを交互に見て、ミケランジェロさんが情けない声を出す。
「いつものことでしょ、ほっときなよ」
が、私のすぐ左に陣取っているドナテロさんは、至ってクールだ。足を組んで、実に楽しそうに2人を見つめている。
ーほっといていいのかなあ、これ……
ソファの右端にいたラファエロさんはいつの間にか立ち上がってレオナルドさんに掴み掛からんばかりの勢いだ。
今にも取っ組み合いしかねない2人を見つめて心の中で心配する自分をよそに、さらにクールにドナテロさんが続けた。
「僕としては2人のお決まりの喧嘩よりも、今の彼女の格好をどうにかしてあげる方が先決だと思うんだけど」
ドナテロさんの言葉にみんな動きが止まり、スプリンターさん含めた10個の目が自分に集中した。
そこに見えるのは、切り裂かれたシャツの隙間からのぞく、お気に入りの空色の3/4カップブラ(胸元リボン付きで結構可愛い)。
つ、と背中を嫌な汗が流れた。
ーさっき、スプリンターさんの話を聞くのに毛布を外したんだった……そのまま、ずっと……
「……き、」
「きゃあああーーーーー!!!」
胸元を両手で抱きしめ、思いっきり悲鳴をあげてしまった。
顔を真っ赤にしたレオナルドさんが、すかさず近くに放ったままであった毛布を取り自分にかぶせてくれる。
ミケランジェロさんは両頬に手を添え、
「いやー!ドナちゃんのえっちー」
とかなんとか、実に楽しそうに叫んでいる。
「ってめえ、ずっと前から気づいてやがったな!お前が一番のエロ亀じゃねえか!」
ものすごい勢いでドナテロさんを追いかけるラファエロさんも、顔が赤い。
「えー、僕もさっき気づいたばっかりなんだよー?やだなあみんなして」
対するドナテロさんは、いつの間にやらソファを立ったのか、怖いくらいの笑顔を張り付けてラファエロさんの追撃をひょいひょいと避けている。
そんな彼らを、実にニコニコと見つめるスプリンターさん。
……NYに来て半年。まだまだ私の生活は落ち着きそうにない。
ーなんだか、昔おばあちゃんに眠る前昔話してもらってた時みたい……すごく、穏やかで、緩やかで……優しい……。
ーおばあちゃん、元気かな……今年で、何歳になるんだっけ……ねえ、おばあちゃん……
「おばあちゃん……」
目を開けると、目の前に見慣れない天井が広がっている。
レンガ造りのそれは少しすすけていて、やや黒ずんでいる。
はて。
うちはクリーム色の壁紙だった気がするのだが。
ーいつ、こんなに汚しちゃったのかな……
「おばあちゃん?寝ぼけてるのかな……っと、あーーーっ!目が覚めたー!!」
天井をぼんやりと見つめていた私の顔を覗き込むように、ぬっと現れたのは緑色。
橙色の鉢巻をしていて、そこから覗く、くりくりした瞳がじっと自分を見つめている。
「元気ー?大丈夫〜?よかったよう、レオが君を連れてきたときは死んじゃってるのかと思ったし、心配したんだよ〜!あーっでも目が覚めてよかった!」
「ね?」とにっこり笑うそれは、どうみても、何回見ても、亀で。
「カメ……」
そっと呟くと、気を失う前の映像が急にフラッシュバックした。全身真緑で、青い鉢巻をした……
「ああああーーーーーーっ!!」
私のあまりの大声に、目の前の橙亀がソファの背から転げ落ちた。
どうやら、自分はソファに横になっているらしい。
しかし、今はそんな現状把握をしている場合ではない。
「緑の人が!いやっ!!」
えもしれぬ恐怖に襲われ、ソファから背を起こした。
防衛本能からか、かけられていた薄手の毛布を咄嗟に体に巻き付ける。
ソファの背を隔てて、目の前には橙亀。
「カメ!?亀!!」
ー亀が立っている!は、鉢巻までしている!!
あまりの驚きで正常思考ができない。
ここは夢?幻?
もう、なんなの!!
「誰なの!!」
恐怖で声が震える。
しかし、目の前の橙亀はあっけらかんと、
「ねね、落ち着いてね、もう大丈夫だからさ!そう、オイラたち亀!!でも話せるし歩けるし、戦える亀なんだよ〜すごいでしょ?」
「ね?」と自分を指差しにっこり笑う。
頭に巻かれた橙色の鉢巻が、やけに似合っていて、正直、キュートだと思った。
いや、そんな方は置いといて。
ニコニコと自分を見つめる橙亀から目を離さないまま、お尻だけで後ずさったときだった。
「おお、目が覚めたか。お嬢さん」
頭上にハテナマークをあふれさせ、顔に恐怖を貼り付けているだろう私に、また新たな声がふってきた。
「よかったな」
「ご対面だね〜」
「……大丈夫か……?」
次々に聞こえる声。
そして現れた面々に思考回路が完全にショートしてしまった。
奥から現れたのは、二足歩行の鼠に、橙亀とおそろいで色違いの鉢巻を巻いた赤亀、紫亀、そして青亀。
もう、頭がどうにかなってしまいそう。
口をパクパクさせている私をよそに、
「マイキーったら。挨拶がまだじゃなーい」
紫亀が、橙亀をたしなめる。
「わしはスプリンター。この息子たちの父であり、また武道の師でもある」
鼠がつと一歩前へ出て、非常に丁寧なお辞儀をしてくれた。
つられてこちらもぎくしゃくと居ずまいを正す。
「驚かせてすまなんだ。わしたちはそなたに危害を加えるものでもないし、何も求めるものでもない。少しだけ、話を聞いてくれるかな?」
その見た目に驚きすぎてわからなかったが、彼らの表情、声音はみな穏やかだ。
淡々と、ゆっくりと語るその口調にも、こちらへの気遣いを感じ取ることができた。
「わ、わか、わかりました」
鼠をはじめとする穏やかな表情に負けて、守るように体に巻きつけていた毛布を剥がし背筋をぴん、と伸ばした。
「は、話を、聞かせて、いただきます」
どもりながらやっとこで、それだけを口にした。
「ありがとう、お嬢さん」
鼠……いや、スプリンターさん、が、にっこりと笑う。
「実はだね……」
「オーイラはミケランジェロ!怪我しなくてよかったねえ!」
早速話をしようと口を開いたスプリンターさんを出し抜き、先ほどの橙亀が、スプリンターさんと赤亀の間からにゅっと顔を突き出し、私の目の前で「ニイ〜」と笑って見せた。
「あ、オイラのことはマイキーって呼んでね。よろしくぅ!」
「こらマイキー!先生に失礼だろう!お客さんだって驚くじゃないか!」
「ほんとにマイキーはいつでもどこでも、マイキーだねえ……」
「ったく、もうちょっと落ち着けねぇのかお前は」
だってだって、お話ししたかったんだもん、とぶうたれてる橙亀、もといミケランジェロ……さんをよそに、残りの3亀はあーだこーだと言い合っている。
「……」
言い合いを続ける彼らをみていると、次第に肩の力が抜けていくのがわかった。
彼らは明らかに人間ではないようだけれど、悪い人(亀?)ではないよう……だ。
それに、私は男たちに襲われていたはず。
けど今無事にこうしていられるということは、彼らが助けてくれたのではないだろうか…?
自分の手や足をそれとなく動かしてみると、どこも怪我はしていない様子だし。
意識を手放す前に目に焼きついた映像を思い返してみる。確か、そう、青い鉢巻が……
「どうした、お嬢さん」
急に唇に手を当て下を向いてしまった自分を心配してか、スプリンターさんが怪訝な声を出す。
4亀たちも言い合っていた口を閉じて、心配そうに私を見つめていた。
「いえ……あ、あの、もしかして、私を、助けてくださった……んでしょうか」
おそるおそる、5人を見渡す。青亀に視線を止め、
「たぶん、あなたが……?」
私と周りの4人に見つめられて青亀はちょっと居心地が悪そうにしていたが、やがてぴしっと背筋を伸ばして答えた。
「ああ、そうだ。……俺はレオナルド 。……無事でよかった」
そうはにかんだレオナルド……さんに、私も微笑を返す。
じんわりと、心が温かくなる。
こほん、と軽く咳払いをして、続けた。
「……私はヤエコと言います。半年前に日本からNYに来て仕事をしています。……助けてくれて、本当にありがとうございました。えっ……と、お話を、聞かせていただけますか?」
素直な気持ちを口にした。
なのに、一様に5人は黙りこくってしまって……次の瞬間、レオナルドさんを除く3人の亀たちが弾かれたように笑い出した。
「あははっ、君って喋り方レオそっくり……っ!」
「兄弟みたいだ……なんつー固ぇ挨拶……レオそのものじゃねえか」
「なかなかなシンクロ具合だよねえ?」
3人はどつきあいながら仲良くひーひーともんどりうっている。
ーえ、私、変なこと言ったかな……?
「あの……」
「あー、君は変なことは言ってないから安心していいよ。……コホン。で、このソファにもたれて笑ってる紫色がドナテロ。涙流してもだえてる赤いのがラファエロ」
ちょっぴり顔を赤くし、恥ずかしそうに咳払いしてレオナルドさんが指し示すと、
「よろしくね」
「頼むぜ」
紫のドナテロさん、赤のラファエロさんがひーひー言いながら片手を挙げて挨拶してくれた。
「こんな息子たちじゃがの、これも何かの縁じゃろう。どうぞよろしく、ヤエコどの」
3人の笑いが収まったあと、スプリンターさんが、自分たちはミュータンジェンという物質をかぶったせいで人間同様の知能を得、同様の暮らしができていること、普段は忍術の修行に励み人目を忍んでNYにはびこる悪を退治しているのだが、今日たまたま外に出ていたレオナルドさんが暴漢に襲われかけた私を助けてくれたこと……諸々を説明してくれた。
「そう、なんだ……」
「そうなんだよう!でもほんっとよかったよねえ、無事で!」
いつの間にかソファの上で私の右隣に陣取ったミケランジェロさんが、にっこりと笑う。
「本当。レオナルドさんに感謝しなくちゃ。……本当にありがとうございました」
ソファの左端に座ったレオナルドさんを見やると、彼は少し赤くなっている。
「いや、俺は当たり前のことをしただけだから。無事で何よりだ」
「あ、レオ赤くなってるー。ひょっとして一目惚れしたとかー?いやだ、えっちぃ」
「あーレオってむっつりだよね。むっつりは良くないと思うなあ、僕」
「おお、コイツって確かにむっつりだよな。タチが悪りぃ」
再び始まった彼らの言い合いに、目が点になる。
「……お前に言われたくはないな」
「ああ?何だって?この野郎」
「また始まったよう。ドニー、何とかしてよー」
瞬間湯沸かし器のように、一瞬にしてヒートアップしたレオナルドさんとラファエロさんを交互に見て、ミケランジェロさんが情けない声を出す。
「いつものことでしょ、ほっときなよ」
が、私のすぐ左に陣取っているドナテロさんは、至ってクールだ。足を組んで、実に楽しそうに2人を見つめている。
ーほっといていいのかなあ、これ……
ソファの右端にいたラファエロさんはいつの間にか立ち上がってレオナルドさんに掴み掛からんばかりの勢いだ。
今にも取っ組み合いしかねない2人を見つめて心の中で心配する自分をよそに、さらにクールにドナテロさんが続けた。
「僕としては2人のお決まりの喧嘩よりも、今の彼女の格好をどうにかしてあげる方が先決だと思うんだけど」
ドナテロさんの言葉にみんな動きが止まり、スプリンターさん含めた10個の目が自分に集中した。
そこに見えるのは、切り裂かれたシャツの隙間からのぞく、お気に入りの空色の3/4カップブラ(胸元リボン付きで結構可愛い)。
つ、と背中を嫌な汗が流れた。
ーさっき、スプリンターさんの話を聞くのに毛布を外したんだった……そのまま、ずっと……
「……き、」
「きゃあああーーーーー!!!」
胸元を両手で抱きしめ、思いっきり悲鳴をあげてしまった。
顔を真っ赤にしたレオナルドさんが、すかさず近くに放ったままであった毛布を取り自分にかぶせてくれる。
ミケランジェロさんは両頬に手を添え、
「いやー!ドナちゃんのえっちー」
とかなんとか、実に楽しそうに叫んでいる。
「ってめえ、ずっと前から気づいてやがったな!お前が一番のエロ亀じゃねえか!」
ものすごい勢いでドナテロさんを追いかけるラファエロさんも、顔が赤い。
「えー、僕もさっき気づいたばっかりなんだよー?やだなあみんなして」
対するドナテロさんは、いつの間にやらソファを立ったのか、怖いくらいの笑顔を張り付けてラファエロさんの追撃をひょいひょいと避けている。
そんな彼らを、実にニコニコと見つめるスプリンターさん。
……NYに来て半年。まだまだ私の生活は落ち着きそうにない。
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