春、それは出会いの季節。

私立雷門中学校では、沢山の生徒がそれぞれ期待や不安を胸に校舎へと歩みを進めていた。大きな正門から目線を上げると、生徒たちの門出を祝うかのように立派な桜の木々から花びらが舞っている。

その中を長い黒髪を靡かせながら一人の少女が元気よく歩いていた。少女もまた、他の生徒と同様に期待や不安を胸に抱き校庭を進む。

髪に絡みつく桜の花びらを払いのけ、少女はサッカー部の部室へと足を運ぶ。そして、目的の人物を見つけ駆け出した。

「おはよう！」

そう笑顔で挨拶する少女の笑顔は花が咲き乱れているような輝きに溢れていた。

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（見ててね。お父さん、お母さん。）



少女はそんな思いを人知れず抱き、空を見上げ、その場で佇む。その姿はまるで儚く散っていく桜のようである。

「おーい！教室行こうぜ！」

オレンジ色のバンダナを身につけた幼馴染の少年に呼ばれ、少女はハッとし少年の元へとまた駆け出した。