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フェリ菊短編集

日本と帰りが同じになったのは、運命か偶然か。その日は、いつもなら遅くても夕方には終わる会議が長引いてもうすっかり夜になっていた。会議場から出る時に日本と鉢合わせ、そのまま何故か同じタクシーに乗ることになった。まあ、ホテルが同じだから仕方ないと言えば仕方ないか。それでも、夜に見る好きな人というのは目に毒で。人工的な光に照らされるその横顔はとても綺麗で憂いを帯びていて、変な気分にさせられる。だから。
「………」
シートの上に置いてある日本の手に自らの手を重ね合わせる。優しく包み込むように握る、そして、指の腹で手の甲を優しく擦る。やわやわと指を撫で上げていって、指の股の愛撫も忘れずに。そんなことをしていると日本が静寂を破った。
「イタリア、くん」
「ん?なぁに」
「誘って、いるんですか」
「………さぁね」
ジト、大きい黒曜石に睨まれる。暗に、これ以上やったら戻れなくなる、そう言われている。…俺は別に、戻る気なんてさらさらないのにね。
「ねえ、日本…」
「だめ、です…それ以上は、だめ」
「…なんで?」
掌を愛撫する手を止める。そして持ち上げ、口元へ持っていく。音を立てて口付けを落とした。それを見た日本は、真っ赤になって震える。
「っあ、いた、りあ…くん」
「日本…いいでしょ、ね?」
彼はこくん、と頷いた。
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