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朝菊短編集

さんさんと陽光が差し込む部屋にて、アーサーと菊はそう大きくないソファーに隣同士で座っていた。菊のこめかみにキスをするアーサーをたしなめるように菊は口を開いた。
「ねえアーティ」
「なんだ?カップケーキちゃん」
「別れましょう」
「おう……………っ?!は!?」
「もうこのまま惰性の関係を続けるのはお互いのためになりません。貴方と居るのは居心地は良いですが、断ち切らねばなりません」
「えっ???は?何言って…」
「アーサーさん、さようなら。ありがとうございました」
「きく!?」
菊はソファーから立ち上がって部屋を出ていく。アーサーはその後ろ姿に手を伸ばすことしか出来ない。なんで、なんで、なんで!!体に何かがまとわりついているように重い。

「きく、きく、きく!!」
「アーサーさん!!」
伸ばしていた手が掴まれた。段々と目が覚醒していく。嫌な汗がベトベトしていて気持ち悪い。………あれは、夢だったのかと最悪な気分になる。
「夢です、アーサーさん。どうされたのですか?」
「きく、……ぎぐぅ……うぅ、ぐすっ…きく、きく、きくきくきくきく」
「私はここにいますよ、大丈夫ですから」
アーサーを優しく抱きしめて菊は笑いかける。しばらく嗚咽を漏らしていたアーサーも落ち着いてきて菊にごめん、と一言恥ずかしそうに謝った。
「大丈夫ですよ。貴方は悪くない。これは仕方がありませんから」

そう、アーサーが菊を失う夢を見るのは仕方ないことなのだ。

だって、菊は。







死んでしまっているのだから。
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