このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

朝菊短編集



キモチイイことが好きで何が悪いんでしょうか。
私は自分で言うのもアレだがいわゆるビッチだ。誰彼構わず男に股を開く。だって、気持ちがイイんですから。自己の欲求と快楽を追随しているだけで誰にも迷惑はかけていないし危ないアソビもしていないしクスリをやっているわけでもない。それに、セックスなんて些細なことですよ。私はどうやら他人には清楚系で綺麗で純粋な印象を与えるらしい。昔から私を高嶺の花とでも言うように遠巻きに見るだけのやつらが多かった。だから、決めたんです。高校生になったらフランクに行こう、って。まあ、その結果がこのザマなんですけどね。あ、別に高校デビューでビッチになったことを後悔はしていませんから。
先生、上級生、下級生、同級生。それに知らないオニーサンからオジサンまで。男だから値段は低くしているし学校の生徒とスるときは最初は特別にタダにしている。そのお陰で私はお小遣い稼ぎも快楽も手にすることが出来る。ああ、ビッチ性活最高。
今日はリピーターの理科の先生と放課後に人気のない使われていない教室で一回。その帰りにフラフラと夜の街を歩く。硬すぎず、軽薄な印象を与えないような服装に着替えて男漁りをするのだ。私にはリピーターの客がいる。一回シタら癖になる、というのが私の売りだし、テクニックだ。さあ、今夜はリピーターに呼び出されるのが先か新たな客が先か。
「おい」
声をかけられて、そちらの方を向く。するとそこには高そうなスーツを来たイケメン外国人がいた。これはでかい獲物が釣れた。
「はい?」
そう思ってることはおくびに出さずににこやかに返事をした。すると彼は伺うように見てきたのでニヤリと妖しげに微笑む。彼は察してくれたのか私の手首をつかみ、そのまま歩き出す。察しが良くて強引なイケメン外国人はポイント高いですよ、なんて思う。大層彼はモテるのだろうな。連れてこられたのはいつもの安いやつではないラブホ。羽振りが良さそうだ、いくら稼げるかな、テクのほうは良いといいなといろいろなことを考えているうちに部屋に連れ込まれた。
「っ、ん…」
部屋の扉を開いた途端キスをされた。それも最初っからディープなやつ。角度を変えて何度も何度も口内を味わわれる。キスに夢中になるなんて久しぶりだった。舌を這わせ歯列をなぞり擦られくすぐられて舌と舌を絡め合う。肉厚な彼の舌はまるで意思を持っているかのように私の口内を蹂躙した。気持ちがイイ。キスだけでこんなになるなんて。彼の唇が離れていった時にはもう私は蕩けた顔でマトモに立てなくなっていた。
「……キスだけでこんなになるなんてお前、処女か?」
「……ち、がいます…っは、あなた、の、がヨすぎたん、ですっ……」
「へえ」
彼は腰が抜けた私を抱き上げてベッドに放り投げた。そして覆いかぶさってくる。ああ、最高の夜になるかもしれない。期待で胸が高鳴る。

▷▷

結果から言おう。彼との夜は最高すぎた。
キスも上手ければセックスも上手い。その上ルックスも良くて性格は少し意地悪だがまあ良い。私が彼に溺れるのは時間の問題だった。
彼はアーサーと名乗った。有名なイギリスの王様の名前だった。偽名なのかわからないけど彼に似合った名前だと思った。
私は、彼が欲しくなった。彼の左薬指にハマるシルバーリングを壊したくなった。最初はアソビだったのに、いつの間にか本気になっていた。ガチ恋はしないつもりだったのになぁ、とぬるくなったカフェオレを嚥下する。
白くて細くて長い意地悪な指が、力強いのに細い腰が。見た目よりがっちりしてる体が、スラリと伸びて長い脚が、ニヤリとニヒルな笑みを浮かべる表情が、森の色を凝縮したような深くて綺麗なグリーンアイが。その全てが、私を翻弄する全てが、好きだ。
なんて、言ったら彼は私から離れていってしまうので言わないけれど。セックスしてる時は彼は私のモノでとても嬉しくて切なくなる。こんな気持ち初めてだ。私はどうすれば貴方を手に入れられますか。ねえ、アーサーさん、全てを捨てて貴方を私にください。セックスしか取り柄がない私には、到底勝てる試合じゃないことはわかっている。同じ土俵にすら立てないことも、わかっている。
彼のシルバーリングを睨みつけて、私は今日も快楽に溺れる。
10/44ページ
スキ