このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

フェリ菊短編集



「フェリシアーノくん」
「……せめて先生はつけようね、菊」
「だって」
口を尖らせてふくれっ面になった教え子を見る。寒そうに震えている彼は一体どのくらいの時間をこの正門前で過ごしていたのだろう。完全下校時刻はとうに過ぎ去り、校内には教員しかいない。その教員もまばらで、帰るのがフェリシアーノは遅かった方だ。だのに、彼はここでフェリシアーノをずっと待っていた。
「マフラー。貸してあげるよ」
「…………それは、子供扱いですか」
「ふてくされてないで、ほら」
寒そうに震える彼の首元に一周。これで大丈夫だろう。
「フェリシアーノくん、私、絶対に貴方を落としますからね。子供扱いできるのも今のうちだけですから」
「そうやって何度も失敗してるでしょ菊は」
「失敗は成功のもとですよ!」
ふいと目をそらした菊の横顔が目に入る。寒さからか耳と頬が真っ赤になっていてその長い睫毛は上を向いている。整った顔立ちの彼は女子生徒にモテているらしい。なのになんで、なんで俺なんだろう。いくら幼なじみだからと言って恋愛関係に発展させるのはふざけて出来ることではない。つまり、彼は本気の恋を俺に捧げてる。……俺も、菊のことが好きだ。でも手を出すなんてことはしてはいけない。わかっている。わかっているから、辛いのだ。
2/40ページ
スキ