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フェリ菊短編集

お前のそばにいれば俺も皆から愛される気がしていた。
「キク」
「フェリシアーノくん」
俺の声を耳にした途端キクの顔が明るくなる。他のみんなの輪の中にいた彼は話を切り上げて寄ってきてくれた。
「フェリシアーノくん、どこ行ってたんですか?」
寂しかった、とは決して言わないがしょぼんと大きな瞳を伏せて口を尖らす姿がかわいくて。ついついおでこにキスを落とした。
「ごめん、キク。ちょっと用事があって」
「用事…ですか」
懐にある血にまみれたナイフを隠しきれているつもりの俺は、キクの目が揺れたことに気付かない。花がほころんだように笑った彼を見て、思う。
彼は愛らしい。護ってやりたくなる。皆から愛されて、その小さな身体で皆に愛をふりまいて。そんな彼だからこそ、俺は好きになったんだ。お前のそばにいれば、俺も、綺麗になれる気がして。


フェリシアーノくんのそれは恋ではない。本人は恋だと思い込んで私に近寄る虫を(殺して)はらってくれているけど。対価なしに俺がそばに置くのはお前だけだと言ってくれているけど。その想いが憧れや羨望から生まれたものだとわからないほど伊達に歳を食ってはいない。

その気持ちを利用してあなたのそばにいようとする私は醜い。ごめんなさい、フェリシアーノくん。貴方は皆から愛されるべき人間だ。その赤い瞳のせいで恐れられているけど、本当は陽気で優しい人だってなんで皆わからないのだろう。いや、わからなくていいか。彼が皆から愛されるようになったら、彼は私の元を離れていってしまうから。
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