2022年に書いたもの

頭をふわふわと撫でられている。大きな手のひらはじんわりとあたたかい。珍しいことをされているな、と夏目はまどろみのなか、思った。
手のひらは髪を梳いて、 片側だけのばしている毛束をもてあそんでいる。
「……ん、ぅ……」
決して厭らしくないさわり方だ。なんの色もまぜこまれていない、ただの慈愛。
それになんとなく不満に思ってしまう。
なんとなく、なんとなく不満なだけ。
そこに寂しいだとか、久しぶりのふたりきりなんだから少しは思うところがないのか、とか思っていない。断じて一ミリも思ってないのだから。
そんなことがふわふわと頭に浮かんでは消える。かすかに身じろいだら、やわらかな声が降ってきた。
「起きましたか?」
「ん……アァ……わざわざ起こしてくれてどうモ」
「いえ。夏目ちゃんの寝顔なんて久しぶりに見かけました……可愛かったですよ〜」
「起き抜けに不機嫌になるような事、言わないでくれるかナァ、センパイ」
ぱしっと手を叩き落とし、睨みつければつむぎはくすくすと笑っている。この男の厄介なところだ。伝わっているのがいないのか、分からない時がある。

「かわいいなぁ、夏目くんは」
「……可愛くなイ」
まだぼんやりとする頭がゆっくり動き出す。そこで気づいた。つむぎの肩を借りて寝てしまっていたらしい。
ブランケットがかけられ、顔を少し動かせばゆるみきった恋人の顔。

「夏目くんは俺にかわいいって思われたくないんですか?」
「当たり前だヨ。思われたくもなイ」
「素直じゃないですね〜、ほんとうに」

なにがそんなに楽しいのか。つむぎは機嫌がやけにいいようで。起き上がろうとした夏目の腕がひっぱられ、つむぎの腕のなかにとさりと落とちる。
腕に囲われぎゅ、と抱きしめられた。いかにも、という感じの恋人同士の時間。こそばゆくて、居心地が悪い。けれど、うれしくないと言えばウソになってしまう。
かわいいですよ、優しい声が降ってくる。膝に座らされて、つむぎの顔を少しうえの位置から見おろした。

「……可愛いだけだって思われるのが癪だネ。ボクだっテ、センパイに噛み付けるシ、センパイにボクを刻み込むことも出来ル、センパイをボクのものにするのだって簡単ダ……立派なひとりの男だっテ、わかってないとは言わせないけド?」

つむぎの鼻先にかふりと噛み付いて挑発的に笑う。
彼は少しぽかんとして、ふ、と破顔した。

「わかってますよ、でも、そういうことを悔しそうに言っちゃう君が、かわいくて好きです」
背中を撫でられ、頬にキス。仕返しされた。

「つむぎにいさんのそういうところが大嫌い」

本音をさらけ出せば、少しもダメージがないような声色と顔で返される。
「俺は夏目くんが好きですよ〜愛してます♪」
「死ね」
肩口に顔を押し付け、赤く染まっているであろう顔を見せない、せめてもの抵抗。きっと、もう、敵わない。
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