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プリ春雑多

今日はトキヤくんの提案でお忍びデートです。それはいいのですが、ワクワクしすぎて待ち合わせ時間より40分近く早く来てしまいました。駅前の犬の像の前が集合場所だったのですが、やはりトキヤくんはそこにはいませんでした。なので近くのコンビニでカフェラテを買ってぼうっと次の新曲について考えようと像の周りのベンチに座ったのです。
「ねえねえ、君1人?」
「……」
「おーい、そこの可愛い君、聞いてる?」
「ふぁ!?え、えっと…え?なんでしょう」
「今1人?」
「え、あ、はい」
「じゃあさ、俺らと遊ばねぇ?」
声をかけてきたのは3人組の男性でした。私はトキヤくんを待っているので彼らについて行くことは出来ません。断ろうとしましたが気づけば私はその人たちに囲まれていました。圧がすごいです。
「ほらほら、いい場所知ってるからお茶でもしようよ」
「でも…」
「なに?俺達とは遊べないって?」
声のトーンが低くなって恐怖を覚えてしまいます。強引に手を掴まれてしまい周りに助けを求めようとしましたが皆さん目をそらされてしまいます。
「名前はなんていうの?可愛いねキミ」
「いい加減にしなさい」
その時、声がしたのです。私の待ち人の、怒っていつもより格段低い声が。
「彼女は私の恋人です。勝手にナンパなど、やめてください」
「あっ…」
トキヤくんは男達の中から私の手を引きそのまま抱きしめてくれました。しばらくトキヤくんが何かを男達に話しかけて彼らは行ってしまいましたが私は恐怖でトキヤくんと彼らが何を話していたのかわかりません。
「春歌、大丈夫ですか」
「…」
カタカタと震えて声も出ない私をトキヤくんは悔しそうな辛そうな顔をして優しく背中を撫でてくれます。何も出来なかった自分が情けなくてボロボロと気づけば涙が溢れます。
「春歌、すみません。私がもっと早く着いていれば…」
「トキヤくんは、悪くないです…」
「春歌」
ぐいっと手を引かれ私は早足なトキヤくんの後をなんとかもつれそうな足でついていきます。
ついた先はトキヤくんの部屋でした。中に入るとトキヤくんは私をきつく抱きしめて小さな、苦しそうな声で謝り続けます。謝らなくてもいいですよ、とトキヤくんに伝えたかったのですが声が出ません。今まで男性にあんなことをされた経験はなかったので私は情けなくもトキヤくんをなだめることすら出来ないなんて。
しばらく2人で抱き合ってようやく私の震えが止まった頃、トキヤくんは私に改めて謝罪の言葉を告げました。
「トキヤくん、謝らないでください」
「しかし…」
「トキヤくんは悪くありません」
「春歌…」
「そんなことより、今日はお家デートにしましょう!」
私が無理に笑って明るく言っていることを聡いトキヤくんなら気づいていたのでしょう。それでも、トキヤくんは笑ってそうですね、と私の額にキスをしてくれました。

後日からデートの時は待ち合わせではなくトキヤくんに迎えに来てもらうことになったのは少し恥ずかしいです。
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