プリ春雑多
茹だるような暑さの中、セミがうっとおしく鳴いている。春歌の買い物に付き合うと言ったのはトキヤだが、こうも太陽がじりじりと肌を焼き、汗が流れる不快感に苛まれると帰りたい、という気持ちが大きくなる。
「トキヤくん?」
「……っ、あ、なんですか?」
「付き合わせてしまいもうしわけありません…やはり真夏日に外出なんて嫌でしたよね」
しゅんとして俯く大切な恋人にトキヤは慌てて弁解をする。
「ああいえ、付き合う、と言ったのは私ですし春歌が気にすることではありませんよ」
「でも……」
「…なら、こうしましょう」
トキヤは春歌の腕を引きコンビニの中へと入っていった。そしてアイスコーナーで1本のチューペットを購入した。
相も変わらず焦げたアスファルトに蜃気楼が立ち上る道を二人は歩く。トキヤは先ほど買ったチューペットを二つに折ると「公園に行きましょう」と春歌の手を引く。
木陰になっている公園のベンチでトキヤは春歌に二つに折ったチューペットの片割れを渡す。
「奢りです」
「ええ!?でも、私奢ってもらうようなことしてませんし…」
「では、言い方を変えます。暑い猛暑日の中貴女についてきたのは貴女と一緒に少しの時間だけでもデートがしたかったからです。下心、というやつですよ。私は春歌とのショッピングを楽しんだ。そのお礼です」
「……ええ!?これってデートだったんですか?」
「おや、不満でしたか?ウィンドウショッピングも十分なデート、でしょう?…それともこういったやりかたの方が好きですか?」
チュ、とトキヤが春歌の頬にキスをした。
「はい、これて満足ですか?春歌」
「……はっ、早くアイスを食べませんと溶けてしまいます!!」
話題を逸らしたことはトキヤはわかっているだろう。春歌はドキドキとうるさい程に高鳴る心臓を落ち着けるために少し氷が溶け、液体になったチューペットに口をつけた。
リンゴ味のそれは、春歌の赤くなった頬を体現しているかのようで、トキヤは笑みをこぼした。