プリ春雑多
仕事中の凛とした向上心とパワーの塊のようなかっこいい春歌が好きだ。彼女はひたすら前を見つめていて、私のために、私が最高の歌を歌えるように、愛を込めて曲を作る。その真剣な横顔はパートナーとして惚れ惚れしてしまうほどだ。
「春歌」
「あ、トキヤくん…どうされました?」
リビングにあるパソコンに音を打ち込んでいる彼女に声をかけた。すると彼女は先程までの真剣で凛々しい、芯の通った表情から一転、ふにゃりと柔らかい笑みを浮かべた。
「少し休憩を入れてはどうです?」
「…そうですね、今何時ですか?」
「夜の10時ですが」
「ええ!?あ、そんなに私長く…」
春歌の座っている前のテーブルにマグカップに入ったホットミルクを置いた。すると彼女は嬉しそうに「ありがとうございます」と微笑んでホットミルクを1口飲んだ。
「今日はもう休みなさい」
「…でも、この曲は完成させないと」
「……言い方を変えます。私は、あなたと寝たい。あなたをこの手の中に抱いて、そのぬくもりを感じながら眠りたい」
「トキヤくん……」
かあっと頬を染める春歌。トキヤはそのリンゴのような頬にキスをした。
「で?どうしますか?」
「……寝ます」
「いい子ですね」
トキヤはヒョイ、といともたやすく春歌を抱き上げると寝室へと歩いていく。密着する肌から彼女の心臓は早鐘をうっていることがわかる。今日は疲れただろうから何もしない、と思っていたのだがこの分では彼女を愛することを止められないかもしれない。
「春歌」
「トキヤくん…」
「すみません、今夜は、寝かせられそうにありません」
「っ……」
「あなたが嫌ならば強要は致しません。しかし、それを赦してくれるのならば、私はあなたを愛します」
「…………いい、ですよ」
トキヤの寝室についてベッドの上に春歌を横たわせる。トキヤは上半身のシャツを脱ぐと春歌にキスをした。長いキスの間にトキヤは器用に春歌の服を脱がせていく。春歌が一糸まとわぬ姿になり、トキヤは彼女の体にあちらこちらにキスをする。キスだけではなく強く吸ってキスマークもつけることも忘れずに。
彼女を抱く度に思うのは、作曲家として働いている時はあれほど頼もしいのにこうしてこの手で彼女を暴けば彼女は細くて華奢で小さな守るべき女性なのだと痛感する。頼りにしすぎていないか、彼女のサポートは出来ているのか。それが心配になってしまう。これ程小さな体の中にあれほど熱い激情を秘めていて、それをトキヤのためにだけ注いでくれることの多幸感に自然と頬が緩む。下で涙を零しながら快楽に溺れるのが怖いのだろう、トキヤの背中をきつく抱きしめている春歌に安心させるように何度もその唇に甘いキスをする。早く私に堕ちればいい、とトキヤは暗い劣情をいだく。あれほど清楚で可憐な、汚れを知らないと言ったふうな春歌が己の前では乱れに乱れてトキヤをもっともっととねだってくる。
そんな恋人に興奮しない男がいるだろうか。トキヤは春歌を丁寧に優しく愛撫する。以前苛めて泣かせてあげましょうか、なんて言ったが、彼女の泣き顔など見たくない。トロトロに蕩けて涙目で喘ぐ春歌を見たら嗜虐心よりも愛情が勝つのだ。まあ、近いうちに満たされきっていない嗜虐心を満たすため春歌を苛めてみようとは思っているのだが。
作曲家(パートナー)と恋人。
そのどちらもが愛おしい。春歌が自分の事だけを考えているのだと歌からも、普段の行動からもわかる。
可愛くて、かっこいい公私共に自慢のパートナー。そんな春歌にトキヤは溺れていく。もう抜け出せない深みへとハマり込んで行く。
だから、春歌。あなたもはやくこちらへ堕ちてきなさい。
ほの暗い感情はひた隠しにしてどう春歌を自分色に染めようかとトキヤは計画を立てていた。