プリ春雑多
真斗くんの次の新曲はアップテンポなラブソング。
打ち合わせで大体の方向性を決めてそこから歌詞とリズムを打ち込んでいく。曲を作る時は歌い手への愛をこめて、歌い手のことだけを考えて生活する。あの人ならこんなときどんな言葉で、どんな動きをするのか。その情報がとても役に立つ。
真斗くんにしては珍しい曲を作ってくれと言われた時心配にならなかったと言えば嘘になる。方向性のチェンジは相当完成度が高くなければファンに受け入れてもらえないのだ。その責任が重くのしかかる。真斗くんは私に無理をするな、と言ってくれたけど私は彼の新たな顔を引き出したいという一心で曲作りに熱中した。
ようやく出来上がった曲を真斗くんに渡すと真斗くんは嬉しそうに微笑んでくれた。そして、レコーディングを見学してくれないか、と頼まれた。二つ返事で了承すると真斗くんは私の手を引いてそのままレコーディングルームへと向かった。
レコーディングが始まる。
私の作り出した音が、歌詞が、真斗くんが表現できる熱情にカチッとハマる。その快感。熱く鋭い男の眼差しで、真斗くんは私の方を見ていた。まるで、この歌は私へ捧ぐ激情を歌ったものだと言うかのように。