女中物語
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今日は買い出し当番。いつものように買い出しに行き屯所まで帰ろうとしているとキョロキョロと周りを見渡している女の子が目に入った。もしかして道に迷ってるのかな、と声をかけてみればその子はとても不安そうな顔をしていた。聞けば思った通り道に迷ったらしい。目的地を聞いてみればよく知っている場所、真選組屯所へ向かいたいとのことだった。目的地が同じということもあり彼女を屯所まで案内することになった。道中、軽く世間話をしながら歩いた。彼女の名前は椿ちゃんといい年齢は17歳だという。若い、肌がピチピチなわけだ。そして椿ちゃんは今日初めて江戸に出て来たのだという。それにしてもこんな可愛らしい子が真選組に何の用なんだろう?もしかして新しい女中なのかな?でも近藤さんからはそんな話聞いてない。面接の子なのかな?私は松平さんのおかげで面接も何もなかったが本来真選組女中になるには面接や厳しい身元調査が行われるらしい。気にはなるが人には聞かれたくない事情があるかもしれないし考えるのをやめた。談笑しながら歩けば屯所の入り口に到着した。
「ここが真選組の屯所だよ。」
「ありがとうございます!とても助かりました。」
「気にしないで、どうせ帰る場所だったし丁度良かったよ。それより誰かに用事なら呼んできた方がいいかな?」
「あ、じゃあ、沖田総悟くん呼んできてもらってもいいですか。」
ほんのりと顔を赤く染めもじもじとしている椿ちゃん。え、何?沖田さん?てっきり近藤さんを呼んできて欲しいと頼まれると思っていたので思わず面を食らってしまった。
「えっと沖田さん?ちょっと待っててくれる?中見てくるね。」
頭の中にハテナが浮かんでいるがとりあえず沖田さんを呼びに行かないと。廊下に張り出されている勤務表を見れば1番隊は今の時間は稽古の時間らしい。でも沖田さんが真面目に稽古に取り組んでるとは思えないし、多分この昼食が終わった後の時間は昼寝しているはずだ。となると自室にいるかも知れないなと名探偵ばりに推理をし沖田さんの自室へ向かった。襖をトントンと叩けば中から昼寝中と言う声が聞こえた。やっぱり部屋に居たか私凄いじゃん。と沖田さんの場所が分かってしまう自分に少し引きつつ襖を開けた。
「昼寝中っつてんだろうが、開けんじゃねぇよ。」
「そんなこと言ってる場合じゃないんですよ、沖田さんに来客ですよ。」
「えー面倒くせぇからお前が適当に対応してくだせェ。」
「出来るわけないでしょ!起きてくださいよ!」
横になってる沖田さんを無理矢理起こす。
「凄い可愛い子でしたよ?花岡椿ちゃんて子なんですけど、ご存じですか?」
「、、まじか。」
椿ちゃんの名前を出せば先ほどまで眠そうだった目がパチリと開いた。やっぱり知り合いなんだ。
「そいつ今玄関にいるんですかィ?」
「そうですよ、お部屋にあげましょうか?」
「いや、近藤さんの部屋に案内しといてくだせェ。俺も行きやすんで。」
「近藤さんの部屋でいいんですね、分かりました。」
いつもの様子とは少し違う沖田さんに違和感を感じながらも言われた通りに椿ちゃんを近藤さんの部屋へと案内する。ノックをし近藤さんの部屋を開ければ笑顔の近藤さんと沖田さんが座っている。
「やぁ!椿ちゃん久しぶりだね。ナマエちゃんも案内ありがとうね、後でお茶だけ持ってきてもらえるかな?」
「はい、分かりました。」
椿ちゃんを中へと入れ頼まれたようにお茶を淹れに炊事場へと向かった。それにしても椿ちゃん何者?近藤さんに久しぶりと言われていることを見ると古い知り合いなんだろう。気になりながらも急いでお茶の準備を済ませ部屋へと戻る。襖を開ければ近藤さんと楽しそうに話す椿ちゃんの姿が見えた。お話の邪魔をしてはいけないと思い一番近くに座っていた沖田さんに小声で話しかける。
「これお茶置いとくので皆さんでどうぞ、私戻りますね。」
「おーありがとな」
珍しく沖田さんが素直だ。何もつっかかることなくやり取りが済んだことに若干の寂しさを覚えながら部屋を後にした。が気になるので部屋の声がギリギリ聞こえるところでしゃがみ込み部屋の会話を聞くことにした。だが声がこもっていてあまりよく聞こえない、楽しそうに話しているのは聞こえるのだが会話の内容まではハッキリと聞こえない。どうしようかと思っていると肩を叩かれた。ゆっくりと後ろを向けば困惑してる顔を山崎さんが居た。そりゃこんな怪しい動きしている女がいればそんなに顔にもなるだろう。
「ちょっとミョウジさん、どうしたの?こんなところで」
「あ、いや別に大したことじゃないんですけど、、」
ただの好奇心丸出しな理由を話すのは恥ずかしかったが山崎さんに事の経緯を話した。意外にも山崎さんはそんなことか、と笑ってくれたので安心した。
「そっか、椿ちゃんこっちに来てるんだね。」
「山崎さんもお知り合いなんですか?」
山崎さんが話してくれた。椿ちゃんは近藤さんたちが真選組として江戸に来る前に住んでいた武州というところで道場の近くに住んでいた子なのだそうだ。なので真選組の中にも武州から出て来た組は椿ちゃんのことを知っているらしい。そして皆が江戸に出てきてから椿ちゃんがここに来るのは初めてなのだそう。山崎さんは懐かしいなー俺も後で挨拶してこようと嬉しそうに話していた。
そうか、だから近藤さんも沖田さんも知り合いだったのね、謎が解けなんだか胸がすっとした私は仕事に戻ろうとしたとき中から近藤さんの大きい声が聞こえ思わず山崎さんと顔を見合わせた。
「総悟と結婚するー!!?」
そんな言葉が耳に飛び込んできて私も思わず、え!?と大きい声が出てしまった。しまった、と咄嗟に手で口を押えたが中にも聞こえたようで襖が勢い良く開いた。
「てめぇらそこで何してんだ」
私と山崎さんを睨むようにそう言った沖田さん。すいません山崎さんは完全に巻き込み事故です。
「えーと山崎さんと世間話してたら近藤さんの大きい声聞こえてきちゃってびっくりして。」
「だって聞いてよこいつら結婚するとか言ってんの!」
奥から近藤さんがずんずんと私に近づき両手で肩をガシと掴むとグラグラと揺らし始める。力強くて若干痛い。
「沖田さんと椿ちゃんが?結婚するんですか?」
「そうなんだってー、俺いきなりすぎて驚いちゃって。」
「ええー!沖田さん、そうなんですか!???」
山崎さんの動揺している声に無表情の沖田さんは大きくため息をついて、そんなわけねぇだろと冷たく放った。中にいる椿ちゃんは黙って下を向いているのが見えた。全く状況が飲み込めない。まだ動揺している近藤さんを部屋の中に押し込みどうにか座らせずっと下を向いてる椿ちゃんに優しく話しかける。
「さっき山崎さんに聞いたんだけど椿ちゃんも皆と同じ武州に居たんだってね。」
「はい、その時に約束したんです。」
「約束?何の?」
「16歳過ぎたら総悟くんが結婚してくれるって。」
今にも消え入りそうな声だった。そうかその約束を果たすために椿ちゃんはここへやって来たのか。とういうか大人になったら結婚しようなんて意外にも沖田さんロマンチックなことするんだな。ふと沖田さんの方を見れば目が合ってしまった。
「椿ちゃんこう言ってますけど、沖田さん?」
「そんな昔の約束なんざ覚えてねぇよ」
相変わらず女の子に対しても辛辣だなこの人。椿ちゃんはその言葉を聞き眉毛が下がり涙目になっている。何だか可哀想になって椿ちゃんの背中を擦れば何かの糸が彼女の中で切れたのか私に抱き着き泣き出してしまった。その状況を見てギョッとしている男性陣。私もどうすればいいのか分からずに抱きしめながら背中をさする。
「近藤さん、ちょっと2人にしてもらえませんか?」
「そ、そうだね椿ちゃんが落ち着くまでこの部屋使ってくれていいから。」
そう言って男性陣は出ていき部屋に残ったのは私たち二人だけ。
しばらくして椿ちゃんはだいぶ落ち着いたようで、すいませんと謝りながら体から離れた。
「私昔からいじめられることが多くて。その度に助けてくれたのが総悟くんで。私はずっと総悟くんが好きだから大きくなったら結婚してって言ってたんです。総悟くんも大きくなったらなって言っててくれてたから…」
「そうだったんだ、沖田さんも罪な人だねぇ」
「いえ!決してそんなことは…。」
「椿ちゃんは沖田さんのこと大好きなんだね。」
「、、はい。」
顔を真っ赤にさせながら返事をする彼女を見て思わず笑みがこぼれる。私もこんな可愛い恋心を抱いていた時期があったなと思い出に浸った。椿ちゃんは昔から今と変わらずに沖田さんが好きなんだ。
「よし!じゃあ私が協力してあげる!」
「え、?」
「だって椿ちゃんが16歳過ぎてるしもう結婚できる年でしょ。でもいきなり結婚は無理だと思うからとりあえず恋人から始めればいいんじゃない?」
「で、でも総悟くんは私のこと何とも思ってないかも……」
確かに、あのドSがそんな約束覚えているかと言われれば微妙なところだ。でもあんなに可愛い子に好かれているのに無下にするなんて。
「椿ちゃんは沖田さんのこと好きなんでしょ?なら大丈夫!私が協力するから!」
「ありがとうございます!」
こうして私は椿ちゃんの恋を応援することになった。
あれから椿ちゃんは近藤さんの計らいでしばらくの間、女中の手伝いをするという名目で真選組にいることになった。
そんな椿ちゃんだが私は彼女の恋の協力をするよ、などと勢いで言ってしまったのだが果たしてうまくいくのだろうか。相手はあの沖田さんだ。中々に手強そうだな。
次の日いつものように私は沖田さんを起こしを頼まれたので渋々沖田さんの部屋に向かった。部屋に着く直前後ろから椿ちゃんに声をかけられた。
「あれ、椿ちゃんどうしたの?」
「ナマエさんが総悟くんの起こす係って聞いたので後を追って来ちゃいました。すいません。」
「いや起こす係ではないんだけど仕方なくというか。」
溜息交じりに答える私をよそに羨ましいです。なんて信じられない言葉を発する椿ちゃん。。私の1番やりたくない仕事と言っても過言でないのにそれを羨ましいなんて。恋する乙女は恐ろしい。
「え、じゃあ沖田さん起こしてみる?かなり大変だけどいける?」
「いいんですか?私総悟くん起こしてみたいです。」
キラキラとした目で訴えられ断る理由もないので沖田さん起こしを譲ることにした。あんな寝起き悪い姿見て幻滅しないのかな、と不安になりながらも本人がやりたがっているので仕方がない。
でもさすがに幼気な少女を一人にするのは少し心が痛むので私も後ろから見守ることにした。
沖田さんの部屋に入ればいつものようにぐっすり天使の寝顔で寝ている沖田さん。椿ちゃんは早速沖田さんのことを優しく揺すり起きて、と言葉をかける。まぁそんなことじゃ起きないことは私が良く知ってるので後ろから小声でアドバイス。
「本当にこの人寝起き悪すぎるからそんなんじゃ起きないよ、もっと強気でいなかいと。」
「えっ、そうなんですか?」
椿ちゃんは先ほどよりも大きく体を揺すり、総悟くん起きて!と必死に声をかけるが沖田さんはうーんと言いながら横を向いてしまう。
「どうすればいいですかね、総悟くん本当に起きないんですね。」
困ったように私に助けを求めてくる椿ちゃん。まぁ仕方ないか。
「椿ちゃんちょっと私にやらせてくれる?」
椿ちゃんに場所を変わってもらい結局いつものように私が起こすことになった。まずは沖田さんの掛け布団を剥ぎ取る。そして耳元で大声で起きて下さい!と言うと不機嫌そうに私を睨んでくる沖田さん。
「毎朝うぜぇなまたお前かよ。」
「こっちのセリフなんですけど?」
「もう少し寝るんで邪魔しねぇでくだせェ。」
「沖田さん今日非番じゃないでしょ!起きてください!」
私の声がうるさい、と頭にチョップをしてくる沖田さん。そんなやり取りをしてる私たちを見て横で笑っている椿ちゃん。ようやく椿ちゃんがいることに気づいたのか、お前もいたのかよ。といつものポーカーフェイスに戻る沖田さん。
「2人のやり取りが面白くてつい笑っちゃった。」
「全然笑えるやり取りじゃないからね、パワハラだよこれ。」
「うるせー。つーか着替えるから2人とも出て行ってくだせェ。」
沖田さんにしてはすんなり起きてくれたな。椿ちゃんがいたからちょっといつもと違うのかな。
それから椿ちゃんは私と行動を共にすることになった。私も女中の仕事を手伝ってもらえてありがたいのだが恋の協力というものをイマイチ出来なくて申し訳なくなってくる。
「ごめんね、何か色々と手伝ってもらちゃって。」
「全然いいんです、総悟くんがどんな生活してるか知れて嬉しいです。」
「えーそんなに沖田さんのことが好きなんだね、何か可愛いー!」
「もう揶揄わないでくださいよ。」
照れてる椿ちゃんを見てふと思い出した。そういえば明後日秋祭りがある。そこに沖田さんと椿ちゃん2人で行けばいいんじゃないの?お祭りだったら自然と距離も近づくでしょ!これは我ながら名案なのではないか。早速そのことを椿ちゃんに伝えると「総悟くんと行ってみたいです!」と嬉しそうだったので思い立ったら吉日ということで2人で沖田さんを探しに行くことに。
そんな沖田さんは案外早くサボっているところを縁側で発見した。椿ちゃんの背中を押して沖田さんの元へ送り出した。私はギリギリ二人の声が聞こえるところに隠れ会話をこっそりと聞く。
「総悟くん明後日お祭りあるの知ってる?」
「あー確かそうだったな。」
「もし良かったら一緒に行かない?」
「んー多分仕事でさァ。」
「そっか。じゃあ仕方ないよね。」
多分困ったのであろう言葉に詰まってる椿ちゃん。こっそりと顔を出して2人を見てみると椿ちゃんがこっちを見ているので目が合った。どうしたもんかと思ったが私が提案してしまったことなので私も偶然を装い2人に近づいていく。
「あれ2人仲良くこんなところで何してるの?」
「えっと今総悟くんを夏祭りに誘ってて。」
「明後日ある祭りのこと?いいじゃないですか、2人で行ってきたら!」
「総悟くんその日仕事みたいで。」
「他の隊士の方に変わってもらいましょ沖田さん!」
私が自分でも気持ち悪いくらいの笑顔で沖田さんに声をかけたらジロりと睨まれた。
「何でそんな祭り行かせてぇんだ」
「いや別に、でも椿ちゃん田舎から出てきてくれたし折角じゃないですか。」
「じゃあお前も来いよ。」
「え!?なんで行かなきゃいけないんですか?2人でいいじゃないですか。」
「ミョウジが何か企んでそうなんで。」
バレている。どうしようかと思っていたら隣にいる椿ちゃんが答えた。
「じゃあナマエさんも一緒に行きましょう、3人で。」
まだ睨んでくる沖田さんと私の着物の裾を握り上目遣いで見てくる椿ちゃん。
「…そうだね、じゃあ3人で行こう。」
場の雰囲気に飲まれてしまいつい、行くと言ってしまった。何で3人で祭りに行くことになるんだ。
「ここが真選組の屯所だよ。」
「ありがとうございます!とても助かりました。」
「気にしないで、どうせ帰る場所だったし丁度良かったよ。それより誰かに用事なら呼んできた方がいいかな?」
「あ、じゃあ、沖田総悟くん呼んできてもらってもいいですか。」
ほんのりと顔を赤く染めもじもじとしている椿ちゃん。え、何?沖田さん?てっきり近藤さんを呼んできて欲しいと頼まれると思っていたので思わず面を食らってしまった。
「えっと沖田さん?ちょっと待っててくれる?中見てくるね。」
頭の中にハテナが浮かんでいるがとりあえず沖田さんを呼びに行かないと。廊下に張り出されている勤務表を見れば1番隊は今の時間は稽古の時間らしい。でも沖田さんが真面目に稽古に取り組んでるとは思えないし、多分この昼食が終わった後の時間は昼寝しているはずだ。となると自室にいるかも知れないなと名探偵ばりに推理をし沖田さんの自室へ向かった。襖をトントンと叩けば中から昼寝中と言う声が聞こえた。やっぱり部屋に居たか私凄いじゃん。と沖田さんの場所が分かってしまう自分に少し引きつつ襖を開けた。
「昼寝中っつてんだろうが、開けんじゃねぇよ。」
「そんなこと言ってる場合じゃないんですよ、沖田さんに来客ですよ。」
「えー面倒くせぇからお前が適当に対応してくだせェ。」
「出来るわけないでしょ!起きてくださいよ!」
横になってる沖田さんを無理矢理起こす。
「凄い可愛い子でしたよ?花岡椿ちゃんて子なんですけど、ご存じですか?」
「、、まじか。」
椿ちゃんの名前を出せば先ほどまで眠そうだった目がパチリと開いた。やっぱり知り合いなんだ。
「そいつ今玄関にいるんですかィ?」
「そうですよ、お部屋にあげましょうか?」
「いや、近藤さんの部屋に案内しといてくだせェ。俺も行きやすんで。」
「近藤さんの部屋でいいんですね、分かりました。」
いつもの様子とは少し違う沖田さんに違和感を感じながらも言われた通りに椿ちゃんを近藤さんの部屋へと案内する。ノックをし近藤さんの部屋を開ければ笑顔の近藤さんと沖田さんが座っている。
「やぁ!椿ちゃん久しぶりだね。ナマエちゃんも案内ありがとうね、後でお茶だけ持ってきてもらえるかな?」
「はい、分かりました。」
椿ちゃんを中へと入れ頼まれたようにお茶を淹れに炊事場へと向かった。それにしても椿ちゃん何者?近藤さんに久しぶりと言われていることを見ると古い知り合いなんだろう。気になりながらも急いでお茶の準備を済ませ部屋へと戻る。襖を開ければ近藤さんと楽しそうに話す椿ちゃんの姿が見えた。お話の邪魔をしてはいけないと思い一番近くに座っていた沖田さんに小声で話しかける。
「これお茶置いとくので皆さんでどうぞ、私戻りますね。」
「おーありがとな」
珍しく沖田さんが素直だ。何もつっかかることなくやり取りが済んだことに若干の寂しさを覚えながら部屋を後にした。が気になるので部屋の声がギリギリ聞こえるところでしゃがみ込み部屋の会話を聞くことにした。だが声がこもっていてあまりよく聞こえない、楽しそうに話しているのは聞こえるのだが会話の内容まではハッキリと聞こえない。どうしようかと思っていると肩を叩かれた。ゆっくりと後ろを向けば困惑してる顔を山崎さんが居た。そりゃこんな怪しい動きしている女がいればそんなに顔にもなるだろう。
「ちょっとミョウジさん、どうしたの?こんなところで」
「あ、いや別に大したことじゃないんですけど、、」
ただの好奇心丸出しな理由を話すのは恥ずかしかったが山崎さんに事の経緯を話した。意外にも山崎さんはそんなことか、と笑ってくれたので安心した。
「そっか、椿ちゃんこっちに来てるんだね。」
「山崎さんもお知り合いなんですか?」
山崎さんが話してくれた。椿ちゃんは近藤さんたちが真選組として江戸に来る前に住んでいた武州というところで道場の近くに住んでいた子なのだそうだ。なので真選組の中にも武州から出て来た組は椿ちゃんのことを知っているらしい。そして皆が江戸に出てきてから椿ちゃんがここに来るのは初めてなのだそう。山崎さんは懐かしいなー俺も後で挨拶してこようと嬉しそうに話していた。
そうか、だから近藤さんも沖田さんも知り合いだったのね、謎が解けなんだか胸がすっとした私は仕事に戻ろうとしたとき中から近藤さんの大きい声が聞こえ思わず山崎さんと顔を見合わせた。
「総悟と結婚するー!!?」
そんな言葉が耳に飛び込んできて私も思わず、え!?と大きい声が出てしまった。しまった、と咄嗟に手で口を押えたが中にも聞こえたようで襖が勢い良く開いた。
「てめぇらそこで何してんだ」
私と山崎さんを睨むようにそう言った沖田さん。すいません山崎さんは完全に巻き込み事故です。
「えーと山崎さんと世間話してたら近藤さんの大きい声聞こえてきちゃってびっくりして。」
「だって聞いてよこいつら結婚するとか言ってんの!」
奥から近藤さんがずんずんと私に近づき両手で肩をガシと掴むとグラグラと揺らし始める。力強くて若干痛い。
「沖田さんと椿ちゃんが?結婚するんですか?」
「そうなんだってー、俺いきなりすぎて驚いちゃって。」
「ええー!沖田さん、そうなんですか!???」
山崎さんの動揺している声に無表情の沖田さんは大きくため息をついて、そんなわけねぇだろと冷たく放った。中にいる椿ちゃんは黙って下を向いているのが見えた。全く状況が飲み込めない。まだ動揺している近藤さんを部屋の中に押し込みどうにか座らせずっと下を向いてる椿ちゃんに優しく話しかける。
「さっき山崎さんに聞いたんだけど椿ちゃんも皆と同じ武州に居たんだってね。」
「はい、その時に約束したんです。」
「約束?何の?」
「16歳過ぎたら総悟くんが結婚してくれるって。」
今にも消え入りそうな声だった。そうかその約束を果たすために椿ちゃんはここへやって来たのか。とういうか大人になったら結婚しようなんて意外にも沖田さんロマンチックなことするんだな。ふと沖田さんの方を見れば目が合ってしまった。
「椿ちゃんこう言ってますけど、沖田さん?」
「そんな昔の約束なんざ覚えてねぇよ」
相変わらず女の子に対しても辛辣だなこの人。椿ちゃんはその言葉を聞き眉毛が下がり涙目になっている。何だか可哀想になって椿ちゃんの背中を擦れば何かの糸が彼女の中で切れたのか私に抱き着き泣き出してしまった。その状況を見てギョッとしている男性陣。私もどうすればいいのか分からずに抱きしめながら背中をさする。
「近藤さん、ちょっと2人にしてもらえませんか?」
「そ、そうだね椿ちゃんが落ち着くまでこの部屋使ってくれていいから。」
そう言って男性陣は出ていき部屋に残ったのは私たち二人だけ。
しばらくして椿ちゃんはだいぶ落ち着いたようで、すいませんと謝りながら体から離れた。
「私昔からいじめられることが多くて。その度に助けてくれたのが総悟くんで。私はずっと総悟くんが好きだから大きくなったら結婚してって言ってたんです。総悟くんも大きくなったらなって言っててくれてたから…」
「そうだったんだ、沖田さんも罪な人だねぇ」
「いえ!決してそんなことは…。」
「椿ちゃんは沖田さんのこと大好きなんだね。」
「、、はい。」
顔を真っ赤にさせながら返事をする彼女を見て思わず笑みがこぼれる。私もこんな可愛い恋心を抱いていた時期があったなと思い出に浸った。椿ちゃんは昔から今と変わらずに沖田さんが好きなんだ。
「よし!じゃあ私が協力してあげる!」
「え、?」
「だって椿ちゃんが16歳過ぎてるしもう結婚できる年でしょ。でもいきなり結婚は無理だと思うからとりあえず恋人から始めればいいんじゃない?」
「で、でも総悟くんは私のこと何とも思ってないかも……」
確かに、あのドSがそんな約束覚えているかと言われれば微妙なところだ。でもあんなに可愛い子に好かれているのに無下にするなんて。
「椿ちゃんは沖田さんのこと好きなんでしょ?なら大丈夫!私が協力するから!」
「ありがとうございます!」
こうして私は椿ちゃんの恋を応援することになった。
あれから椿ちゃんは近藤さんの計らいでしばらくの間、女中の手伝いをするという名目で真選組にいることになった。
そんな椿ちゃんだが私は彼女の恋の協力をするよ、などと勢いで言ってしまったのだが果たしてうまくいくのだろうか。相手はあの沖田さんだ。中々に手強そうだな。
次の日いつものように私は沖田さんを起こしを頼まれたので渋々沖田さんの部屋に向かった。部屋に着く直前後ろから椿ちゃんに声をかけられた。
「あれ、椿ちゃんどうしたの?」
「ナマエさんが総悟くんの起こす係って聞いたので後を追って来ちゃいました。すいません。」
「いや起こす係ではないんだけど仕方なくというか。」
溜息交じりに答える私をよそに羨ましいです。なんて信じられない言葉を発する椿ちゃん。。私の1番やりたくない仕事と言っても過言でないのにそれを羨ましいなんて。恋する乙女は恐ろしい。
「え、じゃあ沖田さん起こしてみる?かなり大変だけどいける?」
「いいんですか?私総悟くん起こしてみたいです。」
キラキラとした目で訴えられ断る理由もないので沖田さん起こしを譲ることにした。あんな寝起き悪い姿見て幻滅しないのかな、と不安になりながらも本人がやりたがっているので仕方がない。
でもさすがに幼気な少女を一人にするのは少し心が痛むので私も後ろから見守ることにした。
沖田さんの部屋に入ればいつものようにぐっすり天使の寝顔で寝ている沖田さん。椿ちゃんは早速沖田さんのことを優しく揺すり起きて、と言葉をかける。まぁそんなことじゃ起きないことは私が良く知ってるので後ろから小声でアドバイス。
「本当にこの人寝起き悪すぎるからそんなんじゃ起きないよ、もっと強気でいなかいと。」
「えっ、そうなんですか?」
椿ちゃんは先ほどよりも大きく体を揺すり、総悟くん起きて!と必死に声をかけるが沖田さんはうーんと言いながら横を向いてしまう。
「どうすればいいですかね、総悟くん本当に起きないんですね。」
困ったように私に助けを求めてくる椿ちゃん。まぁ仕方ないか。
「椿ちゃんちょっと私にやらせてくれる?」
椿ちゃんに場所を変わってもらい結局いつものように私が起こすことになった。まずは沖田さんの掛け布団を剥ぎ取る。そして耳元で大声で起きて下さい!と言うと不機嫌そうに私を睨んでくる沖田さん。
「毎朝うぜぇなまたお前かよ。」
「こっちのセリフなんですけど?」
「もう少し寝るんで邪魔しねぇでくだせェ。」
「沖田さん今日非番じゃないでしょ!起きてください!」
私の声がうるさい、と頭にチョップをしてくる沖田さん。そんなやり取りをしてる私たちを見て横で笑っている椿ちゃん。ようやく椿ちゃんがいることに気づいたのか、お前もいたのかよ。といつものポーカーフェイスに戻る沖田さん。
「2人のやり取りが面白くてつい笑っちゃった。」
「全然笑えるやり取りじゃないからね、パワハラだよこれ。」
「うるせー。つーか着替えるから2人とも出て行ってくだせェ。」
沖田さんにしてはすんなり起きてくれたな。椿ちゃんがいたからちょっといつもと違うのかな。
それから椿ちゃんは私と行動を共にすることになった。私も女中の仕事を手伝ってもらえてありがたいのだが恋の協力というものをイマイチ出来なくて申し訳なくなってくる。
「ごめんね、何か色々と手伝ってもらちゃって。」
「全然いいんです、総悟くんがどんな生活してるか知れて嬉しいです。」
「えーそんなに沖田さんのことが好きなんだね、何か可愛いー!」
「もう揶揄わないでくださいよ。」
照れてる椿ちゃんを見てふと思い出した。そういえば明後日秋祭りがある。そこに沖田さんと椿ちゃん2人で行けばいいんじゃないの?お祭りだったら自然と距離も近づくでしょ!これは我ながら名案なのではないか。早速そのことを椿ちゃんに伝えると「総悟くんと行ってみたいです!」と嬉しそうだったので思い立ったら吉日ということで2人で沖田さんを探しに行くことに。
そんな沖田さんは案外早くサボっているところを縁側で発見した。椿ちゃんの背中を押して沖田さんの元へ送り出した。私はギリギリ二人の声が聞こえるところに隠れ会話をこっそりと聞く。
「総悟くん明後日お祭りあるの知ってる?」
「あー確かそうだったな。」
「もし良かったら一緒に行かない?」
「んー多分仕事でさァ。」
「そっか。じゃあ仕方ないよね。」
多分困ったのであろう言葉に詰まってる椿ちゃん。こっそりと顔を出して2人を見てみると椿ちゃんがこっちを見ているので目が合った。どうしたもんかと思ったが私が提案してしまったことなので私も偶然を装い2人に近づいていく。
「あれ2人仲良くこんなところで何してるの?」
「えっと今総悟くんを夏祭りに誘ってて。」
「明後日ある祭りのこと?いいじゃないですか、2人で行ってきたら!」
「総悟くんその日仕事みたいで。」
「他の隊士の方に変わってもらいましょ沖田さん!」
私が自分でも気持ち悪いくらいの笑顔で沖田さんに声をかけたらジロりと睨まれた。
「何でそんな祭り行かせてぇんだ」
「いや別に、でも椿ちゃん田舎から出てきてくれたし折角じゃないですか。」
「じゃあお前も来いよ。」
「え!?なんで行かなきゃいけないんですか?2人でいいじゃないですか。」
「ミョウジが何か企んでそうなんで。」
バレている。どうしようかと思っていたら隣にいる椿ちゃんが答えた。
「じゃあナマエさんも一緒に行きましょう、3人で。」
まだ睨んでくる沖田さんと私の着物の裾を握り上目遣いで見てくる椿ちゃん。
「…そうだね、じゃあ3人で行こう。」
場の雰囲気に飲まれてしまいつい、行くと言ってしまった。何で3人で祭りに行くことになるんだ。
