銀時
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ここは賑やかな町【かぶき町】。
あたしは20歳になってすぐ、親元を離れこの町に移り住んだ。
来て間もない時には、右も左もわからない田舎者で
困ったあたしは【万事屋】の看板を見つけると、すぐに駆け込んだんだっけ。
その時に色々とお世話してくれたのが、万事屋の店主である銀ちゃんこと坂田銀時さん。
初めての一人暮らしで
テレビの配線やらベッドの組み立てなど
自分が出来ない事をすべて依頼したのだ。
何よりも助かったのは、仕事。
かぶき町内に顔が利く銀ちゃんは
あたしのために出来る仕事をいくつか紹介してくれた。
高収入な事もあって、あたしは【すまいる】という夜の店で働く事になった。
そこには万事屋で働く新八くんの姉の妙が居て
銀ちゃんは働く前に面倒を見てあげてとあたしを彼女に紹介までしてくれた。
何から何までお世話になってしまって…
あの時は本当に助かったなぁとつくづく思う。
そんなあたしも今ではかぶき町で過ごしてもう1年が経つ。
この生活にも慣れたし、知り合いも大勢出来た。
万事屋の銀ちゃんとは、あの時依頼したのをキッカケに仲良くなって
あたしが万事屋へ遊びに行ったり
銀ちゃんがすまいるに飲みに来てくれたり
万事屋の下にあるスナックお登勢で一緒に飲んだり
まるで昔からの気心知れた友人のような関係だ。
……でも、もうこの関係も限界かなぁ。
知り合って1年。
あたしはずっと銀ちゃんに恋をしている。
深く知り合ってみると、超が付くほどの甘党だとか
彼のいい加減な性格や、お金にだらしないとか、自堕落な生活などと
色々と悪目立ちはするのに
いざって時の男気や、頼まれたら断れない性格とか
大切な仲間を守る姿勢ばかりに気を取られちゃって…
気付いたら好きになっていて
……それがもう1年近くも片思い状態で。
今のこの関係を壊したくないから
あたしの気持ちは銀ちゃんに伝える事はできないけど…
本当は銀ちゃんの隣を独占出来るようになりたい。
ずっと近くに居たいなぁ…なんて思ったりする。
だけど、銀ちゃんの周りの女の人ってすごくスタイル抜群の綺麗な人ばかりだし
銀ちゃんに好意を抱いている人も少なくはないし。
だから今までこの気持ちを誰かに相談した事はないんだけど…
そろそろ誰かに話してスッキリしたい気分。
そんな気持ちのまま夜のお仕事の時間がきて、あたしは元気よく出勤した。
仕事は仕事で割り切らないとね。
『あ、真奈ちゃん指名のお客さん来てるからね』
店の黒服にそう言われて案内された席へと向かう。
その席に座っていたのは、最近足繁く通ってくれるお客さんだった。
最初はそれなりに楽しい人だったんだけど、最近は少し様子が違う。
目を合わせずボソボソと喋ったり、必要以上に体を触ろうとしてきたり。
なんならお店終わった後に待ち伏せまでしてくる始末。
ちょっと怖いし、…気持ちが悪い。
でも、仕事だし我慢しないとね…
『今日もきてくれたんですね、ありがとうございます。』
にこやかに挨拶をしてお客さんの隣に腰かける。
『当たり前だろぉボクは真奈ちゃんの彼氏なんだからァ』
目も合わせずククッと気味の悪い笑みを浮かべるお客さんに全身がゾクッとした。
『い…いやぁ、あたし誰とも付き合った記憶ないんだけどなぁ~』
愛想笑いを浮かべながらやんわりと否定してみせる。
すると突然お客さんが立ち上がり、
『キミはボクの彼女なんだよぉぉォォ!!!!』
と大声で叫ぶと、あたしは思いっきり平手打ちされた。
店内が一瞬ザワッとする。
『痛っ…』
え?なんで?怖いんだけどこの人…。
全身ガクガクと震えながら、お客さんを見上げた。
『お客さん、何してるんですかァ!?』
一部始終を見ていた黒服が、そう言いながらあたしの席に近づく。
その瞬間、ぐいっと手首をつかまれ、頬に冷たい感触が当たった。
至近距離でお客さんのフゥフゥと荒い息遣いが聞こえる。
そこで頬に当たっていた物が鋭利な刃物だと気づき、恐怖で全身が強ばった。
『お前らボクに近づくなよ!真奈ちゃんがどうなってもいいのかァ?』
もう正常ではないお客さんは店内にいる人達に向かって罵声を浴びせたりする。
怖い。怖い。怖い。
……助けて、銀ちゃん…。
あたしがいる席を囲むように従業員が手を出せずにいる。
その時、聞きなれた声が店内に響き渡った。
『ギャーギャーとやかましいんだよ、発情期ですかコノヤロー』
そう言ってあたしの前に現れたのは、大好きな銀ちゃんだった。
『だ、誰だオマエ!ボクと真奈ちゃんの邪魔するなぁぁ!』
スタスタと余裕そうな顔で近づいてくる銀ちゃんに男は刃物を向ける。
『ぎ、銀ちゃん!』
銀ちゃんはサッと木刀で男の手首を弾くと、カシャンと音をたてて男の手から刃物が落ちた。
痛みで絶叫した男は、痕になるほど掴んでいたあたしの手首を離すと
弾かれた右腕を左手で支え、年甲斐もなく大きな声で泣いていた。
男はそのまま数名の黒服に取り押さえられている。
その隙に銀ちゃんがあたしの元へ駆け寄ると
叩かれた頬を優しく触れて『大丈夫だったか?』と声をかけてくれる。
『う、うん…ありがと…銀ちゃん』
恐怖から解放されて安堵したあたしは、コクコクと頷き
涙を流しながら銀ちゃんにしがみつくように思いっきり抱きついた。
銀ちゃんは何も言わず、あたしの頭を撫でてくれる。
『…落ち着いたか?』
『うん…でも、今日はもう仕事はできない…かな』
あたしがポツリと呟くと
『だな、うん。真奈ちょっと待ってろ』
銀ちゃんはそう言って店長の元へと行き、しばらく話をしてから戻ってきた。
『店長に話つけたから、今日は帰ろうぜ』
『え…?』
『俺が送ってやるから、荷物取ってきな』
銀ちゃんは優しく微笑むとクルリと向きを変え、入り口までスタスタと歩いて行った。
言われた通りに荷物を取りに行き、すぐに銀ちゃんの元へと向かう。
向かう途中に何度も従業員やお客さんから心配されたり
助けられなくてごめんねって謝罪の言葉を受け取る。
あたしのほうこそ皆に迷惑かけちゃったのになぁ…
心配かけてごめんねって言いながら、足早に銀ちゃんの元へと駆け寄る。
そこには店長の姿もあって申し訳なさそうにあたしに頭を下げた。
『真奈ちゃんごめんね。あのお客さんは真選組に引き渡しするからさ』
『いえ、こちらこそお店に迷惑かけてしまってすみません』
あたしも店長に向かって深々と頭を下げる。
『真奈ちゃんは頭下げなくていいから、ね、今日は銀さんに送りをお願いしたから
帰ってゆっくり休むんだよ!』
『はい、お言葉に甘えさせてもらいますね』
そのまま店長に見送られ、銀ちゃんとあたしはすまいるを後にした。
銀ちゃんと二人並んで歩くとか…幸せすぎてどうしよう。
家につくまでまだ距離あるから、少しこの幸せを噛みしめなきゃ。
『なーにニヤニヤしてんだ?』
銀ちゃんはチラリと横目で見つめてくる。
『や、なんでもない…よ』
『ふーん…なぁ、まだ少し腫れてんじゃねーのか?』
銀ちゃんは叩かれたあたしの頬にまた優しく触れる。
大きい手だなぁ…
『…うん、まだズキズキしてる』
銀ちゃんが近すぎて目を合わせることが出来ない。
自惚れだとしても、このままキスされちゃうんじゃないかって思うぐらいの距離感に
あたしの心臓はドキドキとスピードを加速させる。
だけど『早く治るといいな』なんて言いながら銀ちゃんはパッと頬から手を離してしまう。
そのままあたしの家の方に向かって歩き出してしまった。
噛みしめていたはずの幸せな時間は無情にも終りを迎え
着いたぞと言う銀ちゃんの声にハッとする。
『じゃあ、俺は帰るから…そこ、ちゃんと冷やせよ』
銀ちゃんはあたしの頬を指さすとそう言いながら踵を返してしまう。
『ま、待って』
急に呼び止められて銀ちゃんが足を止める。
『た、助けてもらったお礼に、うちでお茶でも飲んでいかない?』
銀ちゃんはうーんと少し考える素振りをしてから『じゃあ頂くかな』と言った。
家の中に銀ちゃんを招き入れ、手早くお茶を用意した。
ソファに腰かけている銀ちゃんの前に『どうぞ』と言ってソッと差し出す。
銀ちゃんの正面に自分も腰かけ、お茶をすすりながら銀ちゃんを見つめる。
しばらくの無言に耐えられず、自分から言葉を発信した。
『銀ちゃん…今日は助けてくれてありがとね。』
『…別に、俺ァ当たり前の事しただけだぜ』
『あの時ね、銀ちゃん助けてって思った瞬間に銀ちゃんが現れたから…ヒーローみたいだったなぁ』
そうあたしが言うと、銀ちゃんはお茶を吹き出し
『ヒーローとか恥ずかしいだろっ』と顔を赤くしながら言った。
『まぁ、真奈が無事でよかった…』
銀ちゃんは腕を大きく伸ばし、あたしの頭をくしゃりと撫でながらそのまま目をそらす。
『…もぉ、お前を危ない目に合わせたくねぇ…』
ポツリと言った銀ちゃんの言葉にあたしの顔も赤くなる。
『ぎ、銀ちゃんどういう意味…?』
あたしがそう言うと、銀ちゃんは頭を掻きながらソファから立ち上がり
座り込むあたしの体をフワッと抱きしめてきた。
『真奈さぁ…まだ気づかねェの?』
『き、気づくって…何に…』
突然の状況に思考回路がついていかない。
あ、あたし銀ちゃんに抱きしめられてるん…だよね?
『俺の気持ち…いい加減気づいてくんない?』
銀ちゃんの低い声が耳元に響く。
あたし…自惚れていいのかな…
銀ちゃんももしかしてあたしと同じ気持ちでいてくれてたの?
あたしは銀ちゃんの顔をじっと見つめる。
『銀ちゃん…顔真っ赤だよ。』
『真奈もすげー赤いぞ』
『…銀ちゃんこそさぁ…あたしの気持ちに気付いてないの?』
勇気を振り絞り、少し挑戦的な表情をしてみせた。
あたしの顔を見ながら銀ちゃんは少し口角を上げる。
『…悪ぃ…今気づいたわ』
銀ちゃんはそう言いながら頬に手を当て引き寄せるようにしてから
優しく唇を重ねてくる。
『ねぇ…あたし、銀ちゃんの事…大好きだよ』
『お前さァ…そんなの俺から言わせろよな』
『…ごめん』
銀ちゃんはあたしの口をムニッと掴みながら
『真奈、好きだぞ』と言ってもう一度チュッとキスをする。
銀ちゃんの顔が真っ赤で
あたしは思わずギュッと抱きしめた。
銀ちゃん、これからは恋人として末永く宜しくね。
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